ロックマンX~朱の戦士~
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第六十四話 Irregular
前書き
ダイナモとの戦いを終えて…。
ダイナモとの戦いを終えたルインはうっすらと目を開くと辺りを見回す。
どうやらメンテナンスルームのようだ。
しばらくするとだんだんと頭が冴えてきてダイナモとの戦いの出来事が脳裏を過ぎる。
ウィルス吸収中に頭を吹き飛ばされて自分は…。
ルイン「(イレギュラー化してダイナモを痛め付けたんだっけ……)」
イレギュラー化しても意識は僅かに残っており、ダイナモを嘲笑いながら痛め付けたことを覚えていた。
ルイン「(皆は私をイレギュラーとして見るかな…?)」
自嘲の笑みを浮かべながらメンテナンスルームを出ると、司令室に向かう。
ルインが司令室に入ると、待っていたのは嫌悪や恐怖などの視線ではなく気遣わしげにルインを見遣るゼロ達。
シグナス「大丈夫か?ダイナモを追い払った直後に倒れるとは…」
ルイン「え?」
追い払った?
自分は意識を失うまでダイナモを痛め付けていたはずなのに…。
エイリア「流石はルインね、あのダイナモをアッサリと倒しちゃうんだから」
ダグラス「そうそう、開始早々、拳一発でKOだしな」
ルイン「な、何を…」
自分はイレギュラー化するまでは、ほぼ互角の勝負だったはずだ。
ゼロ「どうした?俺も見ていたが、見事な戦いだったぞ?」
ルイン「ゼ、ゼロまで…何言ってるの…?わ、私は…」
シグナス「謙遜することはない、お前のおかげでハンターベースは無事だった。もっと胸を張るといい」
ルインの動揺を謙遜と取ったシグナスは笑みを浮かべながら言う。
ルインは自身の記憶と周囲の言葉に少しずつ恐怖を抱き始める。
エイリア「ルイン?どうしたの?顔色が悪いわ」
ルイン「…何でもない。失礼します」
エイリアが気遣わしげに見遣るが、これ以上ここにいると頭がおかしくなりそうになったルインは司令室を出る。
ルイン「ルナ…エックス…何処?何処にいるの…?会いたい…会いたいよ…」
ルナはこの事件が終わるまでは雇われているし、エックスも戻ってきているはずだ。
友人と恋人に無性に会いたくなったルインはハンターベースを歩き回る。
格納庫のキャットウォークに探していたルナがいた。
ルナはルインに気づくと強張ったような表情を浮かべた。
ルインはそれを見てどこか安堵した。
ルナ「えっと…その、ルイン…凄かったな。ウィルス吸収したり、頭を吹っ飛ばされた時はどうなるかと思ったけど……」
ルイン「よかった…君だけは覚えていてくれたんだ……他のみんなはあの戦いの本当のことを覚えてなかった…………」
ルナ「何だよあれ…頭吹っ飛ばされて身体を再生した瞬間、メシアだとかなんとか言い出してさ…?」
ルイン「分かんない…」
ルナ「だ、だよな…ウィルスでパワーアップするとか分かってたら使わねえよな普通…」
ルイン「あの時一瞬だけ女の人の声が聞こえた…その人がみんなの記憶を弄ったんだと思う…」
ルナ「そいつ何者だろうな…レプリロイドの記憶を弄るなんて…でも俺は記憶が弄られてよかったと思う。あのままだとお前確実にイレギュラー認定されてたぜ?」
ルイン「…だろうね」
あの姿を見てイレギュラーと見ない奴などどこにいるというのか?
あの時のルインは正真正銘、イレギュラーと化していたのだから。
ルナ「まあ、とにかく気にすんなよ。メモリーから削除するなり忘れちまえ、もうあんなことにならないんだろ?」
ルイン「多分……」
ルナ「(にしても、他の連中が記憶弄られてんのに、何で俺だけが…?)」
不安そうに格納庫から出ていくルインを見遣りながらルナは何故自分だけ変化がないのかを考えていた。
マグマエリアから帰還したエックスはメンテナンスを終えるとルインを探した。
用があるわけではないのだが、何となくルインに会わなくてはならない気がした。
エックス「あ、ルイン」
ルイン「エックス…?」
偶然バッタリと会ってしまったエックスとルイン。
エックス「ルイン、ゼロ達から聞いたよ。ダイナモを退けたんだろう?」
ルイン「え?あ、まあ、一応ね」
エックス「?」
歯切れの悪い言葉にエックスは疑問符を浮かべる。
ルイン「と、とにかく部屋に行こう…ね?少し話があるんだ。」
エックス「あ、ああ…」
彼女に引っ張られるようにエックスは部屋に向かう。
エックスとルインが使っている部屋に2人が入ると、ルインは椅子に座る。
エックス「そういえばソニアは?」
ルイン「ライフセーバーの所でワクチンプログラムの作成を手伝ってる」
エックス「そうか、それで話と言うのは…?」
ルイン「エックス…皆が言ってることは真実と全然違うの」
エックス「え?」
ルイン「あのね…私はダイナモに圧勝なんかしてないし、追い払ってすらいないの」
エックス「馬鹿な…モニターの映像にも確かに君とダイナモの交戦記録が……」
ルイン「ああ…監視カメラも弄られたのか…納得…じゃああのことをまともに覚えてるのは私とルナだけなんだ…」
エックス「どういうことだ…?」
訳が分からないという顔をしているエックスにルインは自嘲の笑みを浮かべながら口を開いた。
ルイン「私ね…ダイナモとの戦いで頭を吹き飛ばされて死んだはずなんだ…多分ウィルスを取り込んだことで再生したんだと思う。ウィルスを取り込んだことで復活したんだと思う。多分、OXアーマーの作用だと思うの…パワーアップまでしてね」
エックス「ウィルスを取り込んで…?君は大丈夫なのか?」
ルイン「多分ね、検査されたんだと思うし、ライフセーバーも平然としているところを見ると問題ないみたい」
エックス「そうか…」
確かに彼女がイレギュラー認定をされたら堪らない。
記憶を改竄したことは気になるが、イレギュラー認定を回避してくれたその人物に感謝の言葉を言いたいくらいだ。
イレギュラーハンターとして言語道断の考えだろうが…。
ルイン「私ね…イレギュラーになっちゃった。今はこうして普通だけどね…いつまた再発しちゃうか分からないよ」
1度イレギュラー化して、元に戻ったとしてもイレギュラー化が再発しないとは限らない。
エックス「ルイン…」
ルイン「ねえ、エックス…もし私がイレギュラー化したら…エックスが処理してくれる?」
エックス「っ…!!」
それはかつてエックスがゼロに頼んだことだった。
ルイン「だって私がイレギュラー化したら止められるのはエックスかゼロくらいでしょ?私は…エックスに処理して欲しいな……」
エックスはレプリフォース大戦終結後…自身もイレギュラー化するかもしれないと言う不安から、その時はゼロに処分を乞うた事を思い出した。
そのゼロの立場となり、自分は、彼にどれ程甘ったれた願望を突き付けていた事を思い知った。
エックス「駄目だ。俺は君を処理などしたくない」
ルイン「でも…」
エックス「逃げるなルイン。君はそんなに弱くない。少なくとも今の君は紛れも無く君自身だ。今後はハンターとして目に見えるイレギュラーだけじゃなく自分の内なるイレギュラーとも君は戦っていかなくてはならない。それは想像を絶する過酷な戦いになるだろうけど、君なら確実に内なるイレギュラーを制する事が出来るはずだ。少なくとも俺はそう信じている…」
ルイン「でも、怖いよ…イレギュラー化して、もし皆を傷つけたらと思うと…自分が自分でなくなるようで怖いの…」
エックス「その時は俺が止める。誰1人死なせはしない…君を助けてみんなを守る…」
ルイン「本当…?」
エックス「ああ、約束する」
ルイン「うん、約束だよ…?エックス」
エックス「ああ、次はシグマだ。零空間に向かおう」
ルイン「うん!!ソニア、おいで」
ソニア[は~い]
サイバースペースを経由して戻ってきたソニアを傍らに、ルインは司令室に再び向かう。
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