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鎮守府にガンダム(擬き)が配備されました。

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第1部
  第6話 加賀、苦悩ス〜其ノ弍〜

 
前書き
加賀さんのお話後編です。
短いです。
なんでかって?
執筆中に停電でデータ飛んだのさ。
泣いて良いかい? 

 
8月21日 PM12:36
第1024鎮守府 第1工廠
護衛艦隊 旗艦加賀


鹿島第1024鎮守府の第1工廠。
昼間だと言うのに薄暗いその工廠内には、様々な怒声や罵声、大声で溢れかえっていた。

「バッカ野郎ッ‼︎ さっさと弾薬の積み込みを急げッ‼︎」
「MSの燃料と噴射剤、搬入作業を急がせろッ‼︎」
「整備班以外は最低限の奴だけ乗るんだッ‼︎
海兵隊の工作隊はロトと一緒にチトセに載せろッ‼︎」
「あっぶねぇだろヴィドフニルのホモ野郎ッ‼︎
MSで踏み潰すつもりかッ‼︎」

エインヘリアル艦隊の隊員達と鎮守府中から集まった妖精達でごった返している工廠内に鎮座する本体の飛行甲板上でその光景を見ていた私、正規空母加賀は呆気に取られていた。
それと言うのも、鎮守府の工廠にこれだけの人間と妖精が集まるのは初めての事態だからだ。

「失礼ッ‼︎ 正規空母、加賀殿でありますかッ‼︎」
「え、ええ…そうだけど……」
「エインヘリアル艦隊旗艦リンドヴルムの整備兵、楠本さやか軍曹でありますッ‼︎
貴艦へ搭載するMSの予備兵装を積載する為、物資搭載用クレーンの使用許可を求めますッ‼︎」
「…許可します、使い方は?」
「わかります、協力に感謝致しますッ‼︎
…さっさと上げるよッ‼︎ 急いでッ‼︎」

帽子を被った作業着姿の少女が、敬礼して去って行く。
その後ろ姿を見送り、再び視界を飛行甲板の下に向けた。

「落ち着かない? 余所の人間に艦内を歩かれるのは」

再び後ろから声をかけられ、振り向く。
其処には護衛対象の艦隊を率いる青年、一葉が居た。

「……そうね、不安ではないけれど……」

隣に立った彼が苦笑しながらポケットに手を入れ、煙草を取り出して口に咥えた。
私はそれを瞬時に奪う。

「工廠内は禁煙よ」
「わかってるよ、これでも兵隊なんだ。
爆薬の隣で火をつけたりしないよ。
……あ、ね、姉さんの事じゃないからね、口が寂しかっただけだから、ほ……本当だよ?」
「……そう」

工廠内の喧騒の中、2人の間に沈黙が流れた。
どう切り出せばいいか分からない。
何か話をしなければ、と一種の強迫観念に追い立てられるように思考を巡らせるが、なかなかいい妙案が浮かばない。

「……そ、そう言えば、1ヶ月くらい過ぎちゃったけど…これ」

彼が胸ポケットから小さな紙袋を取り出し、私に差し出す。
掌位の大きさで、白くそれ程厚みは無い。

「一昨日、扶桑姉さんと一緒に街に出た時に買って置いたんだけど、加賀姉さんすぐ何処か行っちゃうから渡す機会が無くて」

袋を開けて中身を取り出す。
其処にあったのは、青く細いチェーンに透明な赤いの光を発する宝石の付いたネックレスだった。

「本当は髪飾りとか髪留めが良いかなと思ったんだけど、姉さんあんまり目立つもの嫌いそうだし、付けてても目立たないネックレスが良いかなと思って……」
「これは…ルビー?」
「いや、ロードクロサイトって言って〝7月19日〟…姉さんの起工した日の誕生石」

薄暗い工廠の中にあって、尚淡く美しい光を放つロードクロサイト。
親指程もある宝石だ、決して安くはなかった筈だ。

「ロードクロサイトの石言葉は〝正義〟。
正義感の強い加賀姉さんにぴったりだと思って……」

この鎮守府では起工日に艦娘を祝う会があるのだが、まさかこんな形で彼に祝ってもらう事になろうとは予想だにせず、思わず嬉しさがこみ上げて来た。

「……良い品ね、流石に気分が高揚するわ」
「…あ、ありがとう」

素っ頓狂な顔で私を見つめる彼。
…私が本当に喜んでいるのか分からない、と言う顔だ。
〝親子揃って似た者同士〟と言うわけだ。

私は薄ら笑いを浮かべながら、工廠の喧騒に消されないよう、彼の耳元でそっと呟いた。

「ねぇ、私…これでも今、凄く幸せなのよ?」
「え、…え? 今なんて?」

聞こえなかったのか、戸惑う彼を見て笑いが込み上げてくる。
笑っているのがバレないように、私は呼び止める彼の言葉を無視して歩き出した。


◉◉◉


25分後 正規空母 加賀 艦橋

壁に掛けられた時計が午後1時丁度を指した。

「時間よ」
「うん、行こう。
…全艦隊に通達、これよりリンドヴルムと護衛艦隊は、横須賀鎮守府へ向かう。
全艦、機関始動ッ‼︎ 進路1-8-5、前進微速ッ‼︎
リンドヴルムを中心に輪形陣を取れッ‼︎」
『『『了解ッ‼︎』』』

工廠内から現れた護衛艦隊が、出港を待っているリンドヴルムを取り囲み、輪形陣へと陣形を組み替える。
更に前方には、深海棲艦への囮役となる、鎮守府の第1艦隊が先行している。

『気を付けて行くんだぞっ!』
『カズハーッ‼︎ 横須賀海軍カレー、期待してマースッ‼︎』
「長門姉さんも気を付けて。
金剛姉さんも大丈夫、期待しててよ」

第1艦隊と並列し、湾外へ出る。
湾外へ出たら、それぞれ別の方位へ進路を取った。

『一葉君、加賀さんや艦隊の皆さんに御迷惑を掛けないように。
あと夜遅くまで仕事で夜更かしは駄目よ?
食事もきちんと三食取るのよ?』
「わかってるよ餓鬼じゃないんだからっ‼︎」

最後に加賀の隣を並列して居た鳳翔が離れて行く。

「おいカズハ、お前も隅に置けないなぁ〜。
あんな別嬪さんとイチャイチャしやがって、まるで新婚だな」
「お兄ちゃん、あの人…じゃなくて、あの艦娘さんとどういった関係なのかしら」
「馬鹿言え。
あれ、〝俺の母親だぞ〟」


《………えっ?》
「だから、あれ俺のお袋。
実の母親だっての」

《《《エーーーーーーッ‼︎‼︎》》》




「あら、何かしら今の声は」
「あ、姫。 肉焼けましたよ」
「ル級、タマネギモラッテイイ?」

鹿島の海に、エインヘリアル艦隊の叫び声が響き渡り、その声は浜辺の松林でバーベキューをしていた深海棲艦ズにも届いていた。 
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