明日はきっと
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チャプター1
前書き
人間には欲望がある。種類は様々だが明日をより良くしたいという思いは変わらず中にこもる。もちろん―ポケモンでも…
明日は必ずやってくる。明日を生きることは避けては通れない。人間は明日をより良いものにしようと努力する。それはポケモンも同じであった。
そしてまた、ブイゼルも明日へ希望を抱いた一人の少年であった。
そのブイゼルは人間で言えば中学生くらいの歳でありその時期特有の切実な願いを持っていた。ブイゼルには彼女がいない。そう、ブイゼルの願いとは彼女を作るということである。しかし、彼はまだ気づけていなかった。自らの近くに幸せがあることを…
ある日の放課後、ブイゼルは自席で本を読んでいた。ブイゼルは人間で言えば13歳くらい、性にも目覚めてくる年頃である。顔立ち、運動神経、身長もいたって普通。決して良いとは言えない。しかし、勉強はできる方だった。前期中間テスト返却、彼がポケモン中等教育学校に入学して初のテスト返却であった。彼の点数は特に飛び出た訳でもなく、平均点と最高点のちょうど真ん中くらいだった。
「こんなもんか…」
もっと自分ができると思っていたブイゼルは失望した。と共に何か熱いものが胸にこみ上げてくるのを感じた。
「もっと…勉強しなきゃ」
その日からブイゼルはふっ切れた。授業中はもちろん、授業間休憩は次の授業の予習、放課後は最終下校時刻まで学校に残りその日の復習をする。そんな日々を過ごした。
おかげで成績は上がったが、女子からは陰口を叩かれまくった。しかし、テスト返却の時だけは彼は人気者になれる。ブイゼルのテストが返却されると彼の周りにポケだまりができる。男女問わず、だ。彼のテストを覗き込んでは
「スゲーッ」
と騒ぐ。それがブイゼルの快感だった。
学年末テストのことだった。ブイゼルはいつもの通りにこなした。そして数日たち遂にテスト返しの時が来た。クラス内、いや、学校全体が静まり返る。テスト返しの前に担任から連絡がある。
「ハイ、皆さんよく聞いてください。今回は皆さんよく頑張りましたね。先生は点数表を見てビックリしました」
教室がザワつく。
「だけどこのクラスに特によく頑張った人がいます。」
「誰だ?」
「誰だろう?」
教室は再びザワつく。
「その人は…ブイゼルくんです。」
―――え!?
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