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『自分:第1章』

作者:零那
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『ユウの家族と』

遂にその日が来た。
ユウの家族とドライブ。
女相に戻る迄は...。


昨日、ユウが泊まりに来た。
ばぁちゃんの承諾を得て。
やましい事はせん約束。
手を繋いで寝た。
ただ、一緒に居れる環境が在るだけで幸せなんが解った。
それだけで充分。


朝、お母さんとお父さんが来た。
お母さんが部屋に来た。
『おらぁっ!起きぃっ!』
超目覚め良い!

『おはようございます!めっちゃ気持ちよく起きれました!』

『おはよ!そいつ起きんけん引き吊り出して御飯に降りておいで!』

なんぼ怒鳴っても殴っても起きやがらん。
これで寝とけるって逆に素晴らしいわ。

起こすの諦めて降りた。
お母さんと目が合った。
零那は首を横に振った。

お母さんが大声で怒鳴る。
フライパンをオタマでカンカンし出す。
思わず笑ってしもた。
コレ、リアルにする人居るんやなって衝撃を受けた。


渋々起きてきたユウは、用意された御飯を食べずに辺りをキョロキョロ。
蜂蜜の入った瓶を持ってくる。
皿に食パン乗せて持ってくる。
蜂蜜の瓶を開け、パンに直接ドバァーッ!っと流した...

それ食べるん?
信じれん...
恐ろしい。

こんな時に、そんな一面見たくなかった。


ユウが食べ終わって支度して出発。
お父さんの車に音楽は無い。
車内は重い空気。
ユウは、こんな空気や真面目な話がキライ。
ポケットからMDを出す。
片方のイヤホンを、無理矢理ねじ込まれた。

暫くしてユウは歌い出す。
普段いつでも歌ってるユウやから、零那は急に歌われてもビックリすることなく、慣れてた。

お父さんは眉間にシワが寄る。
お母さんは心無しか肩の力が抜けたように見えた。
息子なりの気遣いか?


お父さんの『ちょっとでも長く一緒に居たいやろうから』って計らいで下道。
ユウと離れるのは勿論淋しい。
でも、温かい家庭の一員に、一瞬でも受け入れて貰えたこと...それが何より幸せだった。


お母さんやお父さんの紡ぐ愛の言葉が、偽りの気持ちじゃないと確信があった。
こんな良い人、人間として素晴らしくできた人、もう出逢うことは無いだろうと思った。


離れてしまうのが哀しい。


昼時、本場の讃岐うどんを食べることに。
お母さんは若いだけあって少しミーハー。
既に美味しい処を調べて来てた。
凄い行列。
店が空くまで車で居ることに。

ユウがニコチン切れ。
歌うのヤメて車と壁の隙間で隠れて吸う。
そこまでするんか...
笑える。


高校生がニコチン中毒は厄介。
自分も吸ってたけど、施設出てからは、そんなに吸わんかった。
副流煙凄かったから吸いたい思わんかった。
タバコよりドライのが美味しい。


朝からずっと無口だったお父さんが口を開く。
寡黙な人やから緊張する。
怒ってるか普通か見極めるの難しい。

『着いたら、私達が職員の人達と話をするから、別室で待って貰う形になる。その間、何分か何時間か想像つかんけど。2人にとったら最後の時間になる。チャント話したいこと、話しとかないかんこと、後悔せん様にシッカリ話して、ね?』

『わかりました。迷惑かけてホントにすみません。ありがとうございます。』

『あなた自身が悪いワケじゃない。周りの大人に恵まれんかった。私達は最善の努力で支えたいと思ってる。安心して頑張って!いつか一緒に暮らせる日までの暫くのお別れって思えばいい。考え無しであなたを返すワケじゃない、ね?』


お父さんは凄く真面目で丁寧な気持ちで接してくれる。
お母さんも、お父さんの話を聞きながら頷いてる。

ほんっとに良い人達やなぁって改めて想った。
ユウがホンマに羨ましい。

 
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