雲は遠くて
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29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (3)
29章 清原美咲 と 新井幸平 の デート (3)
「そうなんだ。ぼくには、美咲さんのような、
ネガティブ(否定的 ・ 消極的)な気持ちって、
ほとんどないなあ。それが勇み足となって、
失敗したりするんだろうけど。ははは」
「あなたは、何事にも、ポジティブ(積極的)なんだし、
オプティミズム(楽天的)なんだから、
どんな失敗をしても、それを教訓にできるし、
きっと、なんでも乗り越えてゆけるわよ」
「美咲さんに、そういわれると、すごくうれしいです。
元気が出ます」
「そうなんだ。わたしって、そんな、存在感あるのかな?
幸平くんには、わたしなんかよりも、
元気にしてくれる女の子が、いっぱいいても、
おかしくないのにね!」
「ははは。そうかもしれないですけどね。
ぼくには、自分でもよくわかりませんけど、
美咲さんに対する特別な思いがあるんですよ。
そんなわけで、ほかのどんな女の子でも、
ぼくの心の中にいる、美咲さんの代役というか、
美咲さんの代わりを、務めることが
できないんですよ。
いまのところ、どんなに仲良くなっている
女の子でもね。あっはは」
「そうなんだ。幸くんも、はやく、そんな
叶わない恋なんかからは、
目が覚めることを、私は願っているわ。
このままじゃ、まるで、哀しい恋の、
歌の世界みたいじゃないの!」
「それもそうですよね。そういえば、
美咲さんが おつきあいしているって
いっていた、清原法律事務所の、
岩田圭吾さんにお会いしましたよ。
とても思いやりのある、やさしい、すてきな方でした。
今回のモリカワさんとのM&A(買収、合併)では、
モリカワの顧問弁護士の清原法律事務所にも、
ご協力いただいて、交渉を進めてきたのですが、
何度も、岩田圭吾さんには
お世話いただいたんです。
岩田さん、ぼくよりもちょっと背も高いんですね」
「そうね、幸平くんより、2センチくらい高かったかしら」
美咲は、店の自家製の、しっとりとした チーズケーキを
おいしそうに味わいながら、
そういって、微笑む。
「コーヒーも おいしいけど。チーズケーキの、
やわらかさとか、甘味って、絶品よね」
「うん、すげー、うまいよね。そうか、2センチかあ・・・。
あと、ぼくも2センチ、欲しかったな!
あと2センチあったら、美咲さんと、うまくいっていたかも!」
そのあと、ちょっと 会話に 間があいて、なぜか、
それが、とても おかしくなって、ふたりは声を出してわらった。
美咲と交際している、岩田圭吾は、
1984年2月5日生まれ。29歳。
美咲の父の、清原法律事務所に所属している
弁護士であった。
店のカウンター内では、ちょっと 硬派で タフな感じのマスターが
丁寧に コーヒーを 一杯ずつ、淹れている。
店内には、ゆたかな風味の コーヒーの 香りが 漂う。
壁には、いくつもの、ランタンと呼ばれる手提げの
ランプの、電気の明かりが 灯っている。
「美咲さん、おれ、クルマを買ったんです。フォルクスワーゲン
(VW)の新型車のゴルフなんですけどね」
「すごいじゃない。サザンの桑田さんが、CMしているのでしょ。
色は何色なの?」
「ブルーです。・・・美咲さん、ちょっと、いっしょに
ドライブしてくれませんか?ちょっとだけでいいんですけど。
クルマは、近くの駐車場にあるんですけど・・・」
「いいわよ」
清原美咲 と 新井幸平は、誰が見ても 羨む
カップルのような雰囲気で 店を出た。
≪つづく≫--- 29章 終わりです ---
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