歳の差なんて
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第十一章
第十一章
「恋愛っていうのは一人でするものじゃないのよ」
「奈緒がいつも言ってることね」
「そうよ。二人でするものよ」
このことをまた美香に対して言う。
「二人でね。相手の気持ちを考えるのと一緒に」
「相手の状況も見ろっていうのね」
「そういうこと。だから」
「ええ」
「この場合は先生の立場を考えるのよ」
「わかってはいるわ」
このことには頷く美香だった。
「それでも。どうなのかしら」
「どうなのかしらって?」
「私、それでもね」
顔を俯けさせて呟くのだった。
「このままいったら」
「そこまで言うのなら私も止めないわ」
奈緒はここでは言葉を変えてきた。
「思い詰めるのも恋愛だからね」
「そうなの」
「これも前から言っていたわよね」
「そういえばそうだったわね」
「だからよ。止めはしないわ」
さっきとはまた逆のことを言う奈緒だった。
「どうしてもっていうんならね。ただし」
「ただし?」
「責任は自分持ちよ」
「責任は自分持ち」
「そう、そして幸せもね」
「幸せになれるかどうかは自分次第なのかしら」
奈緒の話をここまで聞いて呟く美香だった。
「恋愛は」
「だから。よく考えてそれから思い詰めてね」
相反する言葉を一つにしてきた。
「先生も見て」
「わかったわ。じゃあ」
「先生に関して言えばね」
奈緒はさらに先生についても話す。
「悪い人じゃないのは確かよ」
「それはわかっているけれど」
「子供さんもね。悪い子じゃないわ」
「そうなの」
「女の子だけれど。すれたところもなくて親切でね」
子供のことまで話すのだった。何だかんだ言っても親友のことを気遣う奈緒だった。しかしこれは直接は言葉には出さないのだった。
「本当にいい娘だから」
「そうなのね」
「そうよ。それでもなのよ」
「よく見ないと駄目なのね」
「よく見てよく考えて」
言葉を付け加えていく。
「そういうことよ。いいわね」
「わかってはいるけれど」
「わかっているから慎重によ」
また言う奈緒だった。
「慎重にね。好きになったとしてもね」
「ええ」
「私が言うのはそれだけよ。それだけっていうにはかなり話したけれど」
「御免なさい」
「謝ることはないのよ」
それはいいとするのだった。
「別にね。そういう話じゃないから」
「そうなのね」
「そうよ。それはそうとね」
「どうしたの?」
「クレープ。早く食べた方がいいわよ」
奈緒が今度言ったのはこのことだった。
「早いうちに。私と同じものを頼んだのよね」
「ええ、そうよ」
奈緒の言葉に答える。見れば美香の方にあるクレープも奈緒の方にあるクレープも全く同じものだった。どちらもアイスクリームとバナナが中にあり上からチョコレートをかけている。喫茶店にあるクレープとしてはよくある種類のクレープであった。二人の共通の好物でもある。
「そうだけど」
「だったら早く食べないと」
奈緒はまた美香に言う。
「さもないとアイスクリームが溶けるわよ」
「あっ、そうね」
「そうよ。ほら、もう」
「確かに。それじゃあ」
「食べてからは映画館行くんでしょ」
「ええ」
この言葉にも答える美香だった。今日は二人で映画館に行く予定なのだ。このことを奈緒の言葉で思い出すのであった。
「それじゃあ余計に早く食べないと」
「そうよね。御免なさい」
「だから。謝る必要はないのよ」
苦笑いになる美香だった。
「それじゃあね。行くわよ」
「ええ」
こうしてクレープに専念するようになった美香だった。クレープを食べ終えてから二人で映画館に行く。その映画は恋愛もので今の美香には考えさせられるものだった。その映画を観てからまた暫く経って。美香はまた奈緒と二人で話をしていた。今度は奈緒の家でであった。
「それで決めたのね」
「うん」
今度は二人でDVDを観ている。おばさんに勧められた韓流ドラマのAAだ。そのAAを同じソファーに並んで座りジーンズのラフな服を着てお菓子とコーラを口に入れつつそのドラマを観ている。その中で二人で話をしているのだ。お菓子はポテトチップスやカラメルコーンといったスナックばかりだ。やはりかなりリラックスしたものである。
「決めたわ、本当にね」
「それでどうするの?」
「怒るかしら」
ふと奈緒に言うのだった。お菓子を食べながら。今食べているお菓子はキットカットだ。
「それ言ったら」
「怒らないわ」
奈緒はサイダーを飲みつつ美香に答える。
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