[ 原作 ] オリジナル小説
小説家になろう、エブリスタに投稿。
ギャアァアァァァァ……」
大谷君の腹の底から絞りだしたような甲高い絶叫が、周囲にとどろいた。その絶叫は、耳をつんざく悪魔の雄叫び以上に、周囲の空気を突き破る声だった。
全員が、彼の所に集まり目にしたものは……。
辺りに飛び散っている大谷君の手首と、手から飛びだした血飛沫≪ちしぶき≫だった。
彼は、出血多量のためだろう、早くも唇が異様に青白くなっており、しかも、赤い肉の中から骨さえ見えた。彼は、猛烈な痛さと恐怖であちこち走り回って暴れた末に、階段の反対側の海に転落した。泳ぎに自信を持っている船の所有者である吉岡君が、大谷君を助けようとして、約十メートル下の海に飛び込んだ。
我々も、中を空にして浮力をつけたクーラーボックスを、テグスに固く結んで二人の近くの海面へ次々と投げた。二人とも救命胴衣を着用しているので水面に浮いているから、階段のある方に移動させれば簡単に救助できる、と軽く考えていた。
ところが、クーラーボックスにつかまるどころか、真っ赤な血がブク、ブク、ブク、ブク……と二人の体から噴出していて、辺り一面、文字通り「血の池地獄」になったのだ。 この時は、池ではなく海だったが……。
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