春のざわめき

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永瀬久美は毎日同じような日々を過ごしていた。威張りちらす夫に愛情も感じてはいなかった。ある日久美は車でひかれそうになった自分の息子を助けられる。救ったのは藤田という弁護士の男だった。久美は孝之に一瞬で心惹かれる。二人はたまたま再会したのを機に、心を通わせる。互いに過去に同じような苦い恋をしていて本物の恋をした経験がなかった。会う度に惹かれ、距離を縮めていく二人。しかしひょんなことから孝之は弁護士として実力を発揮できていないことを久美から指摘され、二人は喧嘩してしまう。連絡をとりあえないまま、会えない時間は二人の心の距離を縮めた。夫に勘ぐられながらも二人は何とか再開を果たす。しかし二人が会っている時、子供の怪我の知らせが入り、久美は孝之を置いて家へと向かった。本当に大切なことが何かを久美は思い知らされた。帰りの電車で気を失うと、久美は病院のベッドの上にいた。久美は店の前で子供を助ける為に自分が轢かれていたのだ。全ては一ヶ月間昏睡状態だった自分の夢だった。夫は一ヶ月間に改心し、別人のようになっていた。全ては夢でよかったのだとおぼろげな夢での出来事を苦々しくも、懐かしむ久美であった。
 
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