IS
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五反田家を出た私達は、次の目的地である織斑家へと向かった。
事前に響子さんが、織斑千冬にアポイントメントを取って措いてくれたお陰で、難なく織斑千冬と会う事が出た。
織斑千冬に案内されてリビングに入ると、スーツ姿の女性がソファーの前に立っていた。
「初めまして、私は織斑千冬さんの専属弁護士をしております松本順子と申します。今回、織斑千冬さんから依頼を頂き、織斑家の交渉役を担当させて頂きます」
そう言って名刺を差し出す弁護士の松本順子氏。
二十歳にも満たないとは言え、IS日本代表の織斑千冬にとって弁護士の1人や2人居ても可笑しくはなかった為、予想の想定内だった。
私は敢えて名刺を出さなかった。
理由は無論、私の素性が割れる可能性があるからだ。
軽く挨拶を交わし席に着くと、織斑千冬側の弁護士は1枚の書面を差し出し、書面の説明をしだした。
「此方の書面は、織斑千冬さんが織斑一夏さんに対するこれ迄掛かった養育費の金額と、養子縁組みする際に対しての手切れ金として要求の金額が提示してあります」
そう説明する織斑千冬側の弁護士。
その書面には、こう記載されていた。
▽
1、織斑一夏に対する養育期間:3年6ヶ月×養育費:月々100万円=総額4200万円
2、手切れ金2000万円
以上の二点を要求し、織斑一夏を司波家への養子縁組みを認める。
振り込み先:´〇〇〇〇銀行〇〇支店 ########
依頼人:織斑千冬
弁護人:松本順子
△
私達は、その書面を見て驚きを隠せなかった。
その金額は、余りにも法外過ぎる金額。
普通に考えて一般家庭の月の養育費の三倍以上の金額に相当する。
だがこれで私は織斑千冬と言う人物が、どう言う人物なのかを理解してしまった。
そもそも彼女は一夏に対して『感心が無い』と言える。
何故なら、彼女は私達と会ってからと言うものの、今まで一夏に対して心配する仕草や発言など1度も見せていないのだ。
彼女が発言したのは、自己紹介した時のみ。
その後は口を噤んだままで、全てを弁護士に任せているのだ。
逸れに、響子さん事前に司波家へ一夏を養子に迎え入れるとは一言も伝えていない。
只、司波家で一夏を保護しており、一夏の処遇をどうするかを検討したいと伝えてもらった。
逸れにも拘らず、一方的な金銭要求。
流石の私も、この行動には怒りを覚えたが、反論しようとする響子さんを手で制して私は彼女達に確認する。
「これはどう言う事ですか?」
しかし、この返答に応えたのは織斑千冬ではなく弁護士の松本順子だった。
「織斑千冬さんは、織斑家を出て行った一夏君を今一度、織斑家に迎え入れる事を拒否して……」
「私は貴女に聞いていない!私は織斑千冬に聞いている!!」
私は弁護士の言葉を遮り、殺気を放ちながら織斑千冬を睨み付けながら彼女の返答を待った。
そして、彼女は遂に重い口を開いた。
「この度、愚弟の一夏が貴方方に大変なご迷惑をお掛けしました。しかし、この家を出た奴の居場所など既に無いし、許しを乞いても私は迎え入れる積もり在りません。奴など織斑家の恥でしかない!それに………」
彼女の返答は、予想していた物より酷い内容だった。
ここぞと計りに一夏に対して悪態の言葉を述べ、終いには一夏の事を『出来損ないな奴』とか『恥晒しな奴』など言う始末。
彼女は本当に一夏の事を見ていなかった。
否、彼女は一夏の事を『不適な弟』としか見ていなかったのだ。
「血の繋がりの在る実の弟に、良くそんな悪態を付けますね?本当に姉で在るなら、彼の悩みや異変に気が付いて対処するべきではないですか?自身で対処出来なければ周りの大人達に相談するなど出来た筈ですよね?」
「ふん!織斑家には不出来な人間は不要です。ですので、奴を引き取る気が無いのなら孤児寺院なり何処かに捨てれば良い。まぁ、あんな出来損ないを引き取っても何の特も無いと思いますけどね?」
織斑千冬の最後の言葉を聞いて、私の堪忍袋が切れかけるが今は法律上、私達と一夏は垢の他人。
ならば、これ以上話し合いする必要性が無いと判断した私は、早急に終わらせる為に行動を移した。
ポケットからスマホを取り出し電話を掛けた。
「もしもし、深雪か。忙しい処済まないが、今から言う銀行口座に指定する金額を送金して欲しい。無論、私の個人口座から振り込んで欲しい」
私はそう言って、彼女達の目の前で妻の深雪に連絡を入れ、織斑千冬への振り込み先と金額を伝えた連絡を切った。
「た、達也君?もう少し慎重になった方が良いのでは?」
私の突然の行動に困惑する響子さんは、冷静になる様に促すも、私は否定する様に首を左右に振った。
「大丈夫ですよ、藤林先生。これ以上、彼女達と話し合いを行う必要性が無いと判断した為です。織斑さん、既に貴女の銀行口座に振り込まれていると思いますので確認して下さい」
自身の銀行口座を確認する様に促し、彼女はスマホから自身の銀行口座を確認する彼女は一瞬だが、口元を緩めて笑みを浮かべた。
「確認出来た様ですね?これで、今後は一夏君を私達の養子として迎え入れます…………」
書面にサインと捺印した後、響子さんも用意していた書面を彼女達に差し出し彼女達にサインと捺印をさせた。
五反田家と同じ様に、一夏に対する今後一切の接触や関与する事を禁止する内容の書面。
彼女のサインと捺印を確認した響子さんは、書面を終うと、私は最後にこう言った。
「もし今後、貴女達や『貴女の友人』が一夏に手出ししようとするなら、彼は私の全てを用いて貴女達を【報復】する!」
そう言い残して私達は、織斑家を後にした。
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