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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第349話】

 
前書き
五巻に戻ります 

 
 次の日の朝、場所は体育館。

 ホームルームの前に俺と一夏の部活動争奪戦の結果発表があるということで集まっている。

 ……正直忘れていたのは内緒だ。

 壇上に楯無さんの姿が現れ、マイクに電源が入るとスピーカーに不快な音が入るが一瞬で終わる――この辺りは何処の学校でもよくある光景だろう。


「皆さん、先日の学園祭ではお疲れ様でした。 不測な事態が起き、後夜祭は中止せざる逐えなかったのが残念ではありますが……気を取り直して、それではこれより、投票結果の発表を始めます」


 結果発表――この結果によっては俺の地獄の様な日々が追加されるのだろう……主にコキ使われるという意味で。

 体育館に集まった全校生徒の視線が壇上の上のモニターに集中し始める。

 そして、楯無さんが口を開くと出てきた言葉が――。


「一位は、生徒会主催の観客参加型劇『シンデレラ』!」

「「「……え?」」」


 全員が耳を疑い、ポカンと口を開けた数秒後、我に返った女子からブーイングが起きた。

 鼓膜が破れそうな程の煩い声にうんざりしながら俺は眺めていると一部女子の声が聞こえてくる。


「卑怯! ズルい! イカサマ!」

「何で生徒会なのよ! おかしいわよ!」

「私達頑張ったのに!」


 鳴り響くブーイングと苦情に、楯無さんは眉根を寄せ、手で制しながら言葉を続けた。


「劇の参加条件は『生徒会に投票する事』よ。 でも、私達は別に参加を強制したわけではないのだから、立派に民意と言えるわね」


 ――狡猾な気がしなくも無いのだが、予めそう言った説明を事前に行った上で納得して劇に参加したのならば女子のブーイングは不当な物だろう。

 だが女子一同は納得してないらしく、まだまだブーイングは収まらない……一部女子は説明受けてた事を思い出してか、ブーイングは止めて諦めたのだが――と。


「はい、落ち着いてね皆。 生徒会メンバーになった有坂緋琉人くん及び、織斑一夏くんは、適宜各部活動に派遣します。 両名共に男子なので大会参加は無理ですが、マネージャー及び庶務等をやらせてあげてください。 それらの申請書は、生徒会に提出するようにお願いします」


 その言葉にぴたりとブーイングや苦情が止まった。

 静寂に包まれた体育館、さっきまでの喧騒が嘘の様に思える。

 ……ついでに派遣も嘘であってほしいと切に願うが……そんなことはなかった。

 少しずつざわつき始める体育館内――。


「ま、まぁ、それなら……」

「し、仕方ないわね。 納得してあげましょうか。 織斑くんのついでに労働力も得られるんだし」

「うちの部活勝ち目無かったし、これはタナボタね!」


 ……一部から聞こえてくる俺の対応に正直げんなりしている。

 労働力って言ってた部活動は体育系の部活動――重い機材の出し入れを俺一人にやらせようという魂胆なのだろう。

 そんな俺の考えを他所に、各部活動の一夏に対してのアピール合戦が始まったのだった。


「じゃあまずは織斑くんにはサッカー部に来てもらわないと!」

「何言ってんのよ、織斑くんはラクロス部に来るのが先なんだからね!?」

「料理部もいますよ~。 織斑先生を唸らせた料理の腕、披露してね~」

「はい! はいはい! 茶道部ここです! 今なら織斑くんに和菓子をプレゼント!」

「剣道部は、まあ二番に来てくれればいいですよ?」

「柔道部! 寝技、あるよ! 来てくれれば寝技かけてあげる!」


 そんな感じで一夏へのアピールが凄まじく、正直鼓膜が破れるのではと思った。

 因みに一夏は「何で俺ばかりなんだよ!」って言ってるが喧騒のせいで聞こえたのは俺ぐらいだろう――と。


「それでは、特に問題も無いようなので、有坂緋琉人くん及び織斑一夏くん両名は生徒会へ所属、以後は私の指示に従ってもらいます。 ――ただし、各部活動の皆さんに一つだけ注意を――有坂緋琉人くんに関して、不当な扱いをした部活動への派遣は今後一切無いので気をつけてくださいね♪」


 まさに釘を刺すとはこの事だろう――労働力として考えていた部活動の面々も流石に派遣は無しと言われればそうそう俺をぞんざいな扱いにしないはず――多分。

 ホッと一息つくと、楯無さんと目が合い、彼女が軽くウインクすると自然と頬に熱が帯びるのを感じた。


「……っていうか楯無さんの指示に従うとか、俺の意思は!?」


 そんな一夏の声も虚しく喧騒に消えていく。

 ……残念ながら一夏、君の意思とは関係無く事が進んでいくのだよ。

 どちらにせよ、一夏が不当な扱いを受けることは無いだろうし……俺は一応楯無さんが釘を刺したとはいえ、完全には油断は出来ないだろうと改めて思う――それだけ、俺と一夏の格差があるのだ。

 まあ美冬的に「顔面格差で言えばお兄ちゃんの方がイケメンだからね」とのこと、身内の贔屓は相変わらず……。

 ……今朝の美冬はいつもと変わらずに俺と接してくれた。

 キスをしたというのに特に恥ずかしがる事も無いのは肝が座ってるのかはたまた別の思惑があるのか……心中はわからないため何とも言えないが……。

 とはいえ、色々また波乱が起きそうなのは明白だろう……軽く息を吐くと、俺は体育館の天井を仰いだ……。 
 

 
後書き
次回は転入話、多分短い 
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