IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第112話】
前書き
またもや遅れました
暑さにだれたり、涼しくなって体調悪くなったりと
――レゾナンス二階水着売り場――
水着売り場に入るや、見知った顔がそこに居た――一夏だ。
――てかたっくんも信二も一夏の顔を知らなかったのか?
同じ水着売り場に居たのに――。
等とさっきの話を思い出してる中、俺とシャルに気づいた一夏が声をかけてきた。
「あれ?ヒルトとシャルじゃん、二人揃ってこんな所で何してんだ?」
「……水着買いに来たに決まってるだろ、一夏?てか何でお前がシャルって呼んでるんだよ」
「え?ヒルトがそう呼んでたから俺もそう呼ぼうかなって」
そう言った一夏――シャルを見ると。
「……もう諦めたよ、一夏にいくら言っても僕の事はシャルって呼ぶし…あはは…」
表情からして、多分俺の知らないところで『シャルじゃなくてシャルロットだよ』といったやり取りがかなりあったのだろう――シャル自身、このあだ名を呼んで良い人が俺と美冬、後は未来だけって言ってたからなぁ……結構何度も言い続けたのかもしれないな、一夏は。
…注意しても難聴だから意味が無いし、これはもうつっこんでも仕方がないのだろう…。
よくよく考えれば、美冬や未来の事も呼び捨てにしてるからなぁ…でもその割には鷹月さんとか相川さんとかは名字で『さん』付けだし……基準がわからん、こいつの。
等と思っていると一夏が口を開いて喋りかけてくる。
「水着買いに来たならさ、ヒルトの水着、俺が選んでやろうか?」
「は?いきなり何を言うんだお前は?」
突然の水着を選んでやるぜ宣言、ありがた迷惑もいいところだ――てか男が男の海パン選ぶとはこれいかに?
「いい、水着ぐらい一人で選べるし――てか男が男の海パン選ぶとかマジで勘弁してくれ」
「つれないなぁヒルト、男同士何だし別にいいじゃん」
「よく無い――てか言い争っても仕方ないし、一夏が俺のを選ぶ必要も無いだろ?――これでいいや」
そう言って選んだ水着は黒にファイアーペイントがされた若干派手な水着――黒赤って色が好きだから俺としてはこの辺りが一番だ。
他だと赤の派手なのとかも好きだったりする。
手早くそれをレジに持っていき、会計を済ませるとシャルの元へと戻る――のだが、何故か一夏も着いてくる。
「……なぁ一夏、何で着いてくるんだ?」
「ん?せっかくだし俺もヒルトとシャルに合流しようかなって」
そう屈託のない笑顔で応える一夏――こう見ると爽やかイケメンだが、やってることがこの上無く鬱陶しいのは仕様なのだろうか?
「……着いてきても暇だと思うぞ?てかお前、誰かと来てないのか?」
「ん?――あぁ、鈴と一緒に来たけどあいつ何か用事があるからって別行動中なんだよ。んで水着を選んで買ってたら二人と出会ったって訳」
「んじゃさ、鈴を待ってる方が良いんじゃ――」
と言ってる途中で一夏が割り込むように――。
「まあまあ良いじゃん、鈴も合流するときは連絡くれるだろうし、それまでは良いだろ?」
またもや屈託のない笑顔で言う一夏に対して俺とシャルは互いに顔を見合わす――。
「……わかったよ、その代わり問題は起こすなよ?」
「……ちょ、ちょっとヒルト……!」
そう小さい声で俺に訴えるシャル――。
「……多分断っても無駄だと思うからな…シャル、悪いが我慢してくれないか?」
そう言うと仕方ないなぁといった表情で見上げてくるシャル、そして――。
「……わかった、パフェとケーキ奢ってね?」
「……紅茶じゃダメか?ダメだと@クルーズじゃないといけないし…」
「……いいよ?ヒルトのオススメの店で」
まだ少し納得してないのか、シャルは少し膨れていた。
思わず頬をツンツンしようかとも思ったがここは人前だからな、自重しなければ……。
「それじゃあ行くか、女性用水着売り場に」
「おぅ」
「そ、そうだね――……はぁ……」
そんな感じでため息をつくシャル――気持ちはわかるが、ため息をつくと幸せが逃げるって言うぞ……。
そんな風に思いながらも俺たち三人は女性用水着売り場へと向かった――。
女性用水着売り場へと到着すると俺はシャルに声をかける。
「シャル、俺はここで待ってるよ」
「え?……ヒルトに選んでほしいなぁって思ってたんだけど…ダメかなぁ?」
そう若干甘えた様な声でお願いするシャルを見て――。
「女性用水着売り場だろ?俺や一夏が入るとまずい気がしてな…」
「それもそうか。なら俺もヒルトと待ってるか」
――と、俺に同意する一夏、だがシャルも一緒に来てほしいのか――。
「ほ、ほらせっかく何だし、どんな水着があるのかとかヒルトも参考になるかもしれないよっ!?」
……何の参考になるんだよ。
でもこれ以上断るのもシャルには悪いし、少し我慢して女尊男卑まっしぐらな女子がいないことを願うか…。
「…わかった、なら一緒に入るからそれでいいだろ?」
「うんっ!じゃあいこっ?」
「一夏はここで待ってろよ?」
「いや、ヒルトが入るなら俺も行くぜ?一蓮托生ってやつだ」
何の一蓮托生だよ――若干お邪魔虫なんだがなぁ……シャルも笑顔何だが明らかにひきつってる笑顔だし――。
そんなシャルは再度俺の左手を掴み、シャルと一緒に水着売り場へと足を踏み入れた――後ろから一夏が追従してくる形で。
中に入るや、色とりどりの女性用水着が店内で待ち構えるかの様にディスプレイされていた――手招きしてるかのような女性用マネキンも派手な水着を着用していた。
店内を見ると流石に女性しか居なく(店員も含めて)、その視線が俺と一夏に集中した――。
多少俺は居心地の悪さを感じるがそれを我慢していると、シャルが――。
「じゃあ僕、選んでくるね?」
「あ、あぁ」
「シャル、俺も選んでやろうか?」
――と言ったのは一夏だ、人のを選ぶのが好きなのか、こいつ?
そう思っていると、シャルがにっこり笑顔で――。
「一夏はいいよ、僕は『ヒルト』に選んで欲しいから」
――と、バッサリ切り捨てるシャル――そのまま奥へと消えていった。
そんなバッサリ切り捨てられた一夏は――。
「なんだ?俺、何かシャルの気に触るような事したか?」
「……まあ『人の恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて死んじまえ』って事だろうな、シャルにとっては」
そう俺が言うと、一夏は腕組みしながら頷き――。
「ああそうだな、そんな奴は死んでしまえばいい」
――と、どの口が言うのか、お前の事だよと総ツッコミを受けるであろう言葉を言った。
「……気づかないってのが幸せなのか、ただのバカなのかはわからないが凄く滑稽に見えるな」
「ん?なんだって?」
……隣で普通に喋ってるのにこの突発性難聴はどうにかならないのか?
そんな一夏を呆れて見つつも、何気なく女子の水着を見ていく――。
色とりどりのビキニタイプばかりがメインのコーナーなのか、はたまたビキニオンリーなのかはわからないがずらりと並んでいた。
――男子のも似た感じだが、内容によっては規模が小さい所もあるのに女の子の水着は種類も色もあり得ないぐらい存在している。
――まあこれもおしゃれの為だと言うことだろうな。
そんな風に水着を見ていると、突然声をかけられた――。
「そこのあなた方」
そんな女性の声――明らかに年上の女の人の声が聞こえてきた。
「ん?」
「……遂に来たか…」
一夏は辺りをキョロキョロと見渡すが、明らかに俺と一夏に言っているのは俺にはわかっていた――。
「男のあなた方に言ってるのよ。あなたはそこの水着を、もう一人のあなたはそっちの水着、片付けておいて」
そんな感じに指示を出す女性は、明らかに一般人の女性であり、自らが見た後であろうぐちゃぐちゃにした水着が棚から散乱しているように見えた。
――昔ならあり得ないが、今だとこれが普通の光景だ――自分で見たのを片付けず、場に居る男の人に片付けさせる。
勿論断るととても面倒で、俺の年代だと最悪鑑別所送り後、少年院という結末に陥る事もあるのでここは大人しく従うのが一番の最善策だ。
そう思い、口を開こうとしたが先に一夏が口を開いた――。
「何でだよ。自分でやれよ。人にあれこれやらせる癖がつくと人間バカになるぞ」
そう言い切った一夏を見て、女性の表情が一変する――まさか逆らうとは思っていなかっただろうからだ……だがこの状況は俺にとっては最悪の結末にしかならないと思い慌てて――。
「一夏、やめろって――すみません、自分が代わりに全部やりますので事を荒立てないでいただけますか?」
そう言いながら頭を下げ、女性の方へと視線を向けると満足そうな表情をしていた――だが、一夏の言葉でまた急変する。
「ヒルト…あんな奴の言うこと聞くこと何か――」
その言葉を聞き、遮るように女性は口を開く――。
表情が明らかにイライラしていて、言うことを聞かない一夏とついでに俺も懲らしめようという様に見えた。
「ふぅん、あなたはそういう事言うの?…お友達も可哀想ね、こんなのが居ると――あなた達の立場、わからせてあげようかしら」
そう俺を一瞥しながら言い、女性は店内に居る女性警備員を呼ぼうとし始める。
――俺の頭の中に駆け巡るのは、最悪の事態だ。
多少の脚色つけて『暴力を振るわれた』だの『セクハラを受けた』だのと言われれば有罪が確定し、俺は暫く少年院かもしれない――下手したら少年院には行かず、人体実験されるかもしれない。
一夏に関しては『織斑先生の弟』という事で免罪されるだろうが――。
――と、この事態に気付いたのかシャルが慌ててやって来た。
「あの、このくらいでもう良いでしょう?彼等は僕――私の連れですから」
そう言うや、シャルは頭を下げた――。
そして俺も――。
「自分が綺麗に片付けておきますので、これ以上事を荒立てないでください。お願いします」
そう深々と頭を下げると、気を削がれたのか女性は――。
「……わかったわ。あなた、此方の男の躾くらいしっかりしなさいよね。そっちの男の躾は良く出来てる様だけど」
――ここまで横柄な女性は一部だけだ、だがその一部の女性に逆らうと人生が狂う。
だから立場が弱い俺達男は基本的に断らない、断っていい結果にならない。
――一夏は多分、これまで問題になりかけても『織斑』という名字で事が大きくならなかっただろうから強気に言えたのだろう。
「まったく、これだから男は……あなた、そこを片付けておくのよ」
「わかりました」
そう返事をすると、ぶつぶつ言いながら女性は水着売り場を立ち去っていった――。
と、一夏が俺に言う。
「ヒルト、何であんな奴の言うこと聞くんだよ、頭も下げて、かっこわるいぞ?」
「……悪いな、俺は格好の良し悪しで生きてる訳じゃないんだ」
そう返すと、俺はさっきの女性が片付けずに放置した棚の水着を片付け始める――。
「――シャル、悪かったな…俺達のせいで下げたくない頭を下げさせて」
「ううん、僕は大丈夫だよ?――ごめんねヒルト。やな思いをさせちゃって……僕も手伝うよ」
そう言い、隣へやって来たシャルが水着を片付けて始めた――嫌な表情もせずに手伝ってくれるのに、俺は結局彼女に迷惑しかかけてないことに改めて気づかされる。
――と、一夏がまた口を開く。
「ヒルトもシャルも、二人とも片付けなくていいだろ?あいつ、もう居ないんだし」
「かもな…、でもやらないと後で面倒な事になってもお前と違って俺は助けてくれる『力を持った大人』は居ないんだよ」
そう言い、水着の片付けを終えるとシャルが口を開く。
「……多分、一夏にはわからないと思うよ?……一夏は、さっきのヒルトの行動、カッコ悪いって思ってるでしょ?」
「おぅ、あんな奴の言うこと聞いてペコペコ頭を下げてるヒルトを見ると俺はかっこわるいとしか思えねぇ。俺には出来ねぇ」
そう言い切る一夏、それを見たシャルは呆れたように呟く。
「……一夏にはわからないよ、ヒルトや他の男の人達の立場が…」
「…?なんだって?」
シャルの呟きは店内のBGMにかき消された為、向こう側の一夏にまでは聞こえなかったようだ。
「シャル、もう良いさ――さて、水着も片付けたし気分切り替えるか。……ありがとうな、庇ってくれて」
「え?――うん!」
そうお礼を言うと、シャルは満面の笑顔で頷いてくれた。
俺は、この笑顔を見てさっきの出来事を早く忘れることにした――。
後書き
女尊男卑の煽りを受けるヒルト。
一夏は世界から愛されてるから問題にならない――多分なっても織斑千冬が姉に居ると、訴えた女性側が立場が悪くなると色々思ってしまいます
一夏の言う正論は、女尊男卑じゃなければ他の男の人も従うかもですが実際は嫌々でもヒルトみたいな対応するのが一般的かも
……つくづく、467機しか無いISで女尊男卑な世界になるのって色々おかしい気もしますが……。
そういえば話は変わりますが九巻発売日延期だとか
これはまた弓弦氏の信用が落ちるかと思われます。
――まあ落ちようがない最下層かもしれませんが。
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