IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第542話】
前書き
ちょいオリジナル
朝、一組教室、昨日姿を見せなかった一夏だったが、今日は居た――昨日休んだからか、一夏の周りには女子たちが――。
「ねえねえ織斑くん、何で昨日出席しなかったの?」
「あ、あぁ。 ちょっと、な」
「もしかして風邪とか?」
「いや、風邪とかじゃないんだ」
何か歯切れの悪い言葉でのらりくらりとかわす一夏だが――昨日織斑先生が昼から外出していたのに何か理由はあるのだろう。
というか、一昨日の事件、一夏の方にも一応連絡したとか山田先生が言っていたので、もしかするとIS無断使用と飛行禁止区域の飛行――で色々問題が大きくなったとかかなと思う。
ISの街中での使用は禁止されていて、無論学生の俺達にも適用される。
緊急事態の時や事態の収拾の時はいいらしいのだが、ある意味曖昧な所もある――日本の憲法が先守防衛を重んじてるのもそうだろう。
一夏にとってもいい薬になるだろう――僅かに訪れる眠気に誘われていると、学園内にチャイムが鳴り響き、それと同時に山田先生及び織斑先生両名が入ってきた。
「ではホームルームを始める。 ……だがその前に、この時期としては珍しいのだが転入生を紹介する」
織斑先生の言葉にクラス中がざわざわし、どよめきが拡がる。
「この時期に転入生って……相当優秀な子って事よね」
「うんうん。 ……あ、もしかしたら有坂君や織斑君みたいな男性操縦者の可能性も――」
「ないない! もしそうだったら世界中でニュースになってるじゃん!」
そんな話が聞こえる中、織斑先生は手を叩いて生徒一同を大人しくさせる。
「静かにしろ、今はホームルーム中だ。 ……山田先生」
「は、はい! では、入ってきてくださーい」
山田先生の言葉と同時に教室のスライドドアが開く――エメラルドグリーンのロングヘアーを靡かせ、姿勢正しく転入生が入ってきた――。
「え?」
思わず俺は反応する――目を見開く俺に、彼女は僅かに視線を俺に向けると小さく笑みを溢した。
彼女の後ろの投影ディスプレイには名前が表示される――『エレン・エメラルド』と。
「ではエメラルドさん、自己紹介お願いします」
「……エレン・エメラルド、です。 不馴れな土地で未だ慣れぬ事も多いですが、皆様、ご鞭撻の程よろしくお願いします」
固い言葉と共に一礼する彼女――大胆に開いた胸元から谷間が見えてしまい、思わず見てしまうと四方八方から俺を睨む視線を感じてしまう。
挨拶が終えると、織斑先生が喋り始めた。
「エメラルドは代表候補生ではないが諸事情により、専用機を有している」
その言葉にまたも教室内にざわめきが走る。
「ここに来ての専用機持ちですの……。 個人でコアを所有してるという話はあまり聞きませんが……」
「……事情があるのだろう。 とはいえ……あの転入生、私の嫁に色目を使っていた様にも見受けられる……」
「ま、まだラウラの嫁って私は認めてないんだからね。 お、お兄ちゃんは美冬のお兄ちゃんなんだし」
セシリア、ラウラ、美冬の三人の会話が聞こえてくる。
途中から全く別な話題になってるがそこは敢えて何も考えないようにした。
「静かにしろ、これ以上遅延させるのならば連帯責任でグラウンド百周させるぞ」
その言葉に、教室内に静寂が訪れた――まあグラウンド百周は俺もいらないからな。
「ではエメラルドさん、空いてる席にどうぞー」
「…………はい」
空いてる席にと言われて、何故か俺の方を見たエレン・エメラルド――だが俺の席周囲は既に埋まっている。
小さくため息をつく彼女は、廊下側の後ろの席へと移動し、着席するや、その隣にいた女子が早速自己紹介と共に挨拶していた。
「ではホームルームを再開する。 まず初めに――――」
あっという間にホームルームも終わり、一時間目も終わった休み時間――。
「ねえねえエメラルドさん、出身地はどこ?」
「趣味は? 休みの日とか何してるのー?」
「途中転入だから相当優秀なんだよね? 編入試験? どうだった?」
――等と質問攻めを受けるエレン・エメラルド、それを遠巻きに俺は眺めていると。
「よぉヒルト、転入生が気になるのか?」
「……ん、まぁな」
そんな一夏の言葉に答える俺、それよりも彼女が同い年だという事実に驚きだった。
「なあヒルト」
「……なんだ?」
「……襲撃事件、楯無さんが怪我したって聞いたけど、本当なのか」
「……あぁ、腹部に一発銃弾を……な」
それ事態は事実だ、簡素に俺は伝えると一夏は握りこぶしを作り――。
「……っ、せめて俺が学園にいたら楯無さんだって傷付かずにすんだかもしれないのに……」
そう呟く一夏だが、居ても事態は変わらなかったかもしれない。
腹部に一発もらったのも後から本人に聞いたが楯無さんの不注意によるものだ。
とはいえ、誘拐される寸前で助けられたのは不幸中の幸いと言えるかもしれない。
……もし、彼女――エレン・エメラルドが居なかったらと思うと今も背筋が寒くなる思いだ。
――ふと視線に気付き、振り向くと今なお質問攻めにあってるエレンがふわりと笑みを溢した。
「こほん。 ……有坂、転入生が気になるのは私もわからなくは無いのだが――それよりもだ、基礎的なものなのだが此処が少々分かりにくいのだが……。 こう、ドーンッ!と行ってビューンッ!としてシュパッ!って感じでは無いのか?」
そんな風に訊いてきたのは篠ノ之だった、覗き込む様な篠ノ之の姿にたわわに実った果実が小さく弾けるのが見え、僅かに視線を逸らしつつ答えようとすると一夏が。
「箒、それじゃあヒルトも分かりにくいんじゃ無いのか?」
「う、五月蝿いぞ一夏。 上手く表現できないだけだ!」
自覚はあるのか一夏にそう告げた篠ノ之――。
「……まあ言ってる内容は急発進、加速、緊急着陸だから言ってる意味がわからなくはないが――篠ノ之、基礎の部分だがわからないのか?」
「し、少々分かりにくいだけだ。 ……こ、これを気に基礎のお復習をと思ったのだが……ゴニョゴニョ」
成る程と思いつつ、やはり前の篠ノ之から変化を感じ取れる。
それが少し嬉しく思い、口を開こうとしたのだが一夏が――。
「今更基礎のお復習よりもさ、実践的な訓練の方が良くないか?」
――等と空気の読めない発言で僅かに篠ノ之のこめかみに怒りマークが見えた辺りで休憩時間が終わりを告げ、二時間目が始まった。
再度視線を感じ、振り向くとエレン・エメラルドが小さく手を振っていた――一度彼女とちゃんと話さないと……そう思いつつ、二時間目の授業の準備を始めるのだった。
後書き
もうちょい続くかも
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