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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第444話】

 
前書き
ちょっと今回は読みにくいかも、コロコロ変わってますから 

 
 地下スタジオと併設された二つの更衣室は、男女別々に別れていて、現在五人は各々に着替えていた。


「はぁ……」


 ため息がこぼれ落ちるのが聞こえ、その本人へと視線を向けた美冬と未来。

 開いたらロッカーに用意されていた衣装には目もくれず、自身の胸の上で両手を重ねる彼女を不思議そうに眺めた。


「……篠ノ之さん、どうしたんだろう?」

「……多分、さっきの織斑くんが言ってた【仲間は俺が守る!】を都合よく自分の名前に置き換えてるんじゃないかな? ため息がまるで恋する乙女だし……」


 二人してそう言いながらさっきの織斑一夏の言葉を思い出す、だが実力がわかっているため、漏れでたのは失笑だったが、篠ノ之箒に聞かれたら不味いと思い、慌てて両手で口を塞いだ。

 だが、未だに篠ノ之箒はピンク色の妄想から抜け出ていないようでホッと息を吐く二人――と、突如壁を乱打する篠ノ之箒に、ビクッと反応した。

 乱打四発目の衝撃で、地下スタジオ更衣室の壁が僅かにへこむ、表情を見るとにへらっとだらしない表情のままで、普段の不機嫌そうな篠ノ之箒とは違った表情に驚く二人だった。

 だが、それよりも問題がある――。


「……あの壁、どうしよう?」

「……あ、後で近くのポスターを張り替えて隠そう……。 ……はぁ、器物破損とか、専用機持ちがやる事じゃないよ……」


 未来の深いため息が足元にこぼれ落ちた、当の本人はというと――。


「そうか……、そうかぁ……! うふふ、うふふふふ!」


 誰が見ても上機嫌な彼女、だが理由がわからない者から見れば頭がお花畑にでもなったのだろうか、掛かり付けの精神科医を紹介しないとという思いだけが順繰り順繰り、脳内を駆け巡るだろう。

 とりあえずへこんだ壁は後でポスターの張り替えで誤魔化すとして、美冬と未来の両名はモデル衣装を手に取る。

 スポンサーから用意された衣装と訊いていたが、あった衣装は全員同じで、ただの色違いorサイズ違いってだけの代物だった、モデルといえば何着も服を着替えて撮影するものだと思っていたからだ、まさか一着しかなく、それも色違いでサイズ違いなだけとは夢にも思わなかった。

 目を白黒させる二人を他所に、篠ノ之箒はその服の大胆さに固まって言葉を漏らす。


「う……。 こ、これは……」


 美冬、未来も同様に大胆に胸元が開いたブラウスを眺めていた。

 美冬は、兄であるヒルトだけが見るならこの衣装も有りかなと思いつつ、フリルのついたミニのスカートも手に取り、眺めた。

 一方の未来、こんな大胆に胸元が開いてるとは思わなかった為、急な羞恥が彼女を襲った。

 勿論、ヒルトの気を引けるなら……そう思えば我慢できる、だけど……モデルという事もあり、その大胆な服が他の人にも見られると思うと仕事を断りたい気持ちに駆られた。

 ……でも、少しでもヒルトが私に意識をしてくれるならという想いが勝り、意を決して小さく頷く。

 最近、ラウラやシャルの二人がヒルトと急に仲良くなった事に、色々戸惑いと嫉妬が混ざりあっている、皆とは仲良くしたい、だけどヒルトは渡したくない……そんな負の感情に驚くも、この結果を招いたのは自分が勇気を持って告白しなかった結果だからだ。

 ヒルトが前に、未来の事が好きだと訊いた時は嬉しかった――想いは同じだと。

 でも、学園に来てから……彼に好意を寄せる女の子が居たことに、軽いショックもあった――セシリアとは以前、ブティックでそんな話をしていて知っていた。

 それ以外の子――理央ちゃんが最たる例だろう、後は鷹月さんとか。

 軽く頭を振り、負の感情を払拭させる未来に、美冬は不思議そうに彼女の顔を見る。


「みぃちゃん、大丈夫?」

「え? だ、大丈夫だよ? あはは……」

「……そっか。 とりあえず早く着替えよう? メイクさんも待たせてあるんだし」

「そ、そうだね」


 美冬の言葉に、小さく頷く未来は着ていた服に手をかける――と、静まり返った行為室内に響き渡る篠ノ之箒の声。


「よし! 着るぞ!」


 そんな事を高らかに宣言しつつ、握り締めた拳を天高く上げた篠ノ之箒。

 そんな事、いちいち宣言しなくても良いから大人しく着替えようよと思う美冬が、再度ため息を溢した。

 ブラウスのボタンに手をかける、窮屈に押し込められた乳房がブラジャーと共に露にされ、少し弾んだ。

 美冬の今日の下着の色は蒼、ブラジャーもパンツも一式のものだ――。

 何気無く選んだ下着だが、どうせなら兄であるヒルトが喜びそうな色にすれば良かったと思ってしまった。

 一方の未来、彼女はピンクと白の縞のブラジャーとパンツ、一見子供っぽく見えるのだが、未来のスタイルの良い身体つきのお陰で、世の男子がその姿を見れば誰もが彼女に欲情するだろう――勿論、手痛い反撃を受けるだろうが。

 色違いのブラウスに袖を通し、ボタンを閉めていく二人を他所に、着替え終えた篠ノ之は挨拶することなく更衣室を後にした。

 彼女にちゃんとした礼儀を教えなかった周りの大人、特に親に思う所はあるのだがその親とも離ればなれで暮らす羽目になった環境も、美冬には可哀想に思えた。

 だが、それはそれ、これはこれで、親が居なくても礼儀正しい子は無数に居るのを美冬は知っている、彼女の礼儀が無いのは多分周りの環境があったせいなのだろうと結論つけた、早計かもしれないが、話し掛けてもヒルトの妹という事で辛辣な態度をとられるのだ、美冬も未来も人の子である以上、ストレスは感じる。

 だが訊いてもまともに答えてくれないのでは仕方ないという気持ちしか出てこなかった。

 ミニスカートを穿き、着ていた着替えや貴重品をロッカーに仕舞うと、美冬は手頃なポスターが無いか、辺りを物色し始める。

 撮影スタジオの更衣室という事もあり、無造作に置かれた手頃なグラビアアイドルのポスターを見つけると、それを篠ノ之箒がへこませた壁へと張り付けた。

 当初は近くのポスターと思ったのだが、サイズの合うポスターが見当たらなかった為、少し探すのに時間を費やしてしまった。

 これで偽装は完了、ちゃんと黛さん達に謝らないといけないのだが、今は時間があまりない。

 ふとポスターに視線が行く、グラビアアイドルは胸を強調する様なポーズで、人懐っこそうな笑顔を向けていた。


「……美冬の方が大きいし、形も良いもん」


 言ってから自身の胸を持ち上げる美冬、それを着替えを終えた未来が不思議そうに見てから口を開いた――。


「美冬、どうしたの?」

「にょっ!? な、何でもないよ!? あはは……」

「……? そっか。 ――あ、上手くポスターで隠れたね? ごめんね、着替えるの遅くなって」

「ううん、みぃちゃん気にしないで? じゃあ、メイク室に行こう?」


 美冬は未来の手を取ると、そのまま一緒に更衣室を後にしてメイク室へと移動した。

 ノックをし、メイク室に入ると既にメイクアップアーティストの女性がその場でスタンバイしていて、時間が圧してる事もあってか直ぐ様二人のメイクに取り掛かった。

 ナチュラルメイクを施され、一部髪にエクステンションのつけ毛が施され、自分達がする化粧がまるで子供のおままごとの様に思えるぐらい見違えるほど変わっていた。


「さっきの篠ノ之箒さんも良かったけど、肌の決め細やかさでは貴女達二人の方が断然上ね? やっぱり恋してる女の子だからかな? うふふ♪」


 恋してる――その言葉に二人して赤くなる、二人とも思い描いた人物が一緒だからだ。

 美冬は兄であるヒルトに対して、禁断の想いを抱いていたが先日したキスや行為によって、既に歯止めが効かない状態だった。

 皆の想いは知っていて、自分だけが我慢なんて出来ない、抱く想いは開けてはならないパンドラの箱だったのかもしれない。

 でも、今は兄とそういう事を出来たという想いが勝っている、血が繋がっていても……。

 ぐるぐるそう思っている間にメイクが終わり、見違えるほど綺麗に変わった二人の姿が鏡に写し出されていた。

 ため息が溢れる、だが撮影の時間も迫ってる為、二人はスタッフに連れられ地下スタジオの撮影現場へと連れられていった。

 撮影現場には既にカメラマンがスタンバイされていて、篠ノ之箒は居心地が悪そうに椅子に腰掛けたまま辺りをチラッと見ていた。

 入ってきた美冬と未来の姿に、男性カメラマンが熱っぽいため息を吐くのが見えた。

 未来はそれが恥ずかしいのか、美冬の後ろに隠れる形でそわそわし、美冬も隠れたい気持ちに駆られたが未来が隠れてる以上は自分がさらし出すしかなかった。

 待ち時間はそれほど経っていないにも関わらず、美冬と未来の中では既に一時間以上待ったような錯覚に陥る、二人して時計を見るが、来てからまだ二分ぐらいしか経過してなく、時間は意地悪だという思いに駆られた。

 ――と、通路のメイク室からスタジオスタッフの声が聞こえてきた。


「すみませーん、遅れましたー。 有坂緋琉人くん及び織斑一夏くんの両名、スタジオに入りまーす」


 その言葉に、美冬も未来も心臓が高鳴る。

 篠ノ之箒も例外ではなく、落ち着きなく自身の前髪を左右に散らしては整えるを何度も何度も繰り返していた。

 美冬と未来も、二人して狼狽する、普段の彼女たちを知る人が見れば、そのテンパり具合に驚きを隠せないだろう――と、通路側から声が聞こえてきた。


「うーん、何かこれ変じゃないですか?」


 声の主は織斑一夏だ、内心ドキドキしていたが、想い人ではないという事実にあからさまに表情に陰りが落ちた。

 だが、その声に遅れて聞こえてきた声に、より一層心臓が高鳴る。



「あぁ、少なくとも俺なんかまさに馬子にも衣装って感じですよ、これが」


 一夏の後に続いて聞こえてきたのはヒルトの声だった、さっきとはうって変わって二人の心臓の鼓動が徐々に早鐘を打ち始める。


「ぜーんぜん! 二人とも超似合ってるわよ。 特に有坂くん何か、その姿を女性読者が見たら確実に評価は変わるわよ! それにしても、十代の子のスーツ姿っていうのも良いわねぇ」


 読者の評価が変わるというのは面白くない、散々ヒルトの事を悪く言っていたのに手のひらを返したみたいで二人にとっては印象が悪く感じられる。

 学園の子達は、ヒルトの活躍を目の当たりにしてから少しずつ評価が変わってるのを知ってるが、ヒルトの見た目が良くなった位で手のひらを返されては堪らない。

 まるで、見た目だけで評価をしてるみたいで……。

 だけど、見た目が第一印象を決めるのも知っている、例えば店の店員でも二人レジが居て、片方がイケメンでもう片方が特長の無い、影の薄そうな男子なら誰しもがイケメンのレジに、そちらに行きたがるのが十代女子特有の行動だ。

 美冬や未来は、早く清算終わらせたいからレジが誰であろうと気にしないが。

 それはそうと、通路の話し声からしてヒルトはスーツ姿だという事実に気付く、普段のヒルトは動きやすい服装をメインにしてる為スーツ何かは見たことがない。

 高鳴る心臓の音を抑えようと呼吸を整える美冬、その後ろから覗き込むように未来が見る中、まず最初に入ってきたのが黛さんで、次に織斑一夏――一夏に憧れを抱く女子が見れば卒倒するかもしれないが、美冬と未来の二人には彼がいくら着飾っても魅力的には映らない。

 織斑先生の話では微妙に女心を擽るらしいのだが、二人は全く擽られる部分がなく、逆に彼のビッグマウス等のマイナス面ばかりが見え、評価は上がらない。

 更に言えば馴れ馴れしすぎる、これまで女子の名前を下で呼んでもあまり拒否されなかったからか、普通に下の名前で呼んでくるのはやめてほしいと言ったこともある。

 だけど、彼は鳥頭だからか全く止めないため、私も美冬も諦めた。

 織斑一夏から遅れて入ってくる有坂ヒルトの姿を見て、一瞬時が止まった様な錯覚を覚えた二人。

 織斑一夏と同様のカジュアルスーツ、だが織斑一夏と比べると色が暗く、落ち着いた印象を与えるが白銀の髪が映えて映り、より一層魅力的に映った。

 恋する女子の贔屓目と言われればそれまでかもしれない、だが……確実に普段のヒルトとは違った一面を見れ、心臓が更に早鐘を打った。


「おっす、悪いな、二人とも待たせて。 篠ノ之にはさっき待たせたって言ったが、あいつの耳には届いてなかったらしくてな、とりあえず一夏に任せて来たよ、これが」


 ニッと白い歯を見せたヒルトに、全身の体温が上がる思いの二人。


「こういう事、初めてだから緊張するよな。 美冬、大丈夫か?」

「はぅっ。 だ、大丈夫……だよ?」


 狼狽する美冬だが、何とか声を絞り出して答えると、ヒルトは頷く。


「そっか。 二人とも似合ってるな、今日の私服も悪くなかったが、今の衣装も良い。 それに化粧してだいぶ印象が違うよな? ……可愛いよ、二人とも」

「ぁ……」


 可愛いよ――普段の時も言われてるとはいえ、場所が場所だけに二人して手で顔を扇ぎ始めた。

 そんな中、スタジオ内に黛さんの声が響き渡る。


「はーい、それじゃあ撮影始めるわよー。 時間押してるから、巻きでサクサクいっちゃいましょう!」


 二度手を叩く黛さんを合図に、撮影スタッフ全員仕事の顔へと変わった。

 取り仕切る黛さんに返事をした一同、五人は指示されるままに写真撮影が開始され、言われた通りのポーズをとり始めた。 
 

 
後書き
原作だと約四頁?を膨らませて膨らませてここまで( ´艸`)

てか壁破壊してる箒の後始末をする美冬と未来('A`) 
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