IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第144話】
前書き
遅れました
やる気がなくなった訳ではなく、忙しいだけです
毎朝4時起きで家の事をしてるもんで
――旅館花月荘前――
親父に遅れること凡そ三十秒。
旅館花月荘前には織斑先生方教師陣及び、専用機持ちのセシリア、シャル、ラウラが先に戻った親父を取り囲むように包囲していた。
教師陣も織斑先生と山田先生――後榊原先生以外は皆ISを纏い、アサルトライフルや近接ブレード等を展開していた。
セシリア、シャル、ラウラの三人も警戒してか、いつでもISを展開できるように待機していた。
「お、おいおい。先生方も皆もどうしたってんだよ?」
花月荘前に着地と同時にISを解除――すると、俺に気づいたセシリア、シャル、ラウラは――。
「ヒルトさんっ!!」
「……ヒルト。良かったぁ……」
「……無事だったか。――全く、あまり夫に心配させるな」
各々が安堵した表情で俺を見ると、駆け寄ってきてセシリアは左腕に――シャルは俺の胸に顔を埋めるように――ラウラは俺の右手を自身の両手で包み込むように握った。
「……悪いな皆。心配させて」
「そ、そうですわよっ!……あまり、心配させないでくださいな…」
そう言い、左腕を抱くセシリアの瞳は潤んでいた。
「シャル、心配かけたな――何とか無事だよ、俺は」
「……ぅん。――よかった…ヒルトが無事で…」
か細く、弱々しい声だが、俺の無事を確認出来て安堵したのか、胸に顔を埋めたシャルの涙が俺の胸元を濡らす。
「ラウラ、心配したか?」
「……お、夫が嫁の心配しない方がおかしいだろ。――無事なら私も安心というものだ」
俺から顔を背けるラウラ――眼帯でわからないが、その瞳は潤んでいるのかもしれない。
そんな中、織斑先生は――。
「……何者だ?私の生徒の救援には感謝している。――だが、身元不明のアンノウンである以上、その身柄を拘束させていただく」
『……………』
告げる織斑先生に黙る親父――と、親父が。
『……身元不明じゃないさ。――とりあえず、お前ら自身の目で俺を確認しな。ワッハッハッ!』
言うや、パワードスーツの上部ハッチが開く。
そして、今の声の正体に感づいた織斑先生は、素早く他の先生に武器を下ろすように指示を下す――。
「よ……っと――ちょい待ってくれよ、もう出るから」
「…お父様ッ!?」
「お父さんッ!?」
「きょ、教官っ!?」
ハッチから顔を出すと、腕だけで上半身を出し、そこからスムーズに下半身を出すと共にパワードスーツから出た親父。
その姿は、ISスーツに似た特殊なスーツ姿だった。
そして、そのパワードスーツから親父が出てきたという事で辺りは騒然とする。
……無理もないか、誰だってこんなのから見知った顔が出てきたらびっくりするだろう。
いや、見知った顔というよりも多分【男】が【ISらしき物】から出てきた――。
この事実が、未だに信じられないといったところかもしれない――。
果たしてこのパワードスーツが【IS】か【似て非なる物】なのかがわからないが。
地面に着地する音と共に、向こう側から母さんのふわふわとした声が聞こえてきた。
「あなた、お疲れ様ぁ~。――うふふ、皆さんも聞きたい事が山ほどあるとは思いますが……。――先ずは中に戻りましょうかぁ~」
そう促す母さん――だが、やはり正面のパワードスーツが気になるのか一向に動こうともせず……。
「……あなた?」
「ん……。おぅ」
小さく頷き、返事をすると腕の時計に触れる。
すると――そのパワードスーツは光に包まれると粒子化し、虚空へと消えていく……。
その光景を呆然と眺めつつも、粒子が消えると教師陣も旅館へ戻っていった…。
「有坂博士。……あのパワードスーツの説明、今出来ますか?」
「……うふふ、織斑先生はせっかちですねぇ~」
口元を手で覆い、笑顔で織斑先生を見ると母さんは――。
「……そうね。先にあなた達には説明しましょうかぁ」
手を後ろに組み、すっと瞳を閉じると――。
「あのパワードスーツは【ISとは似て非なる物】。――でも、ISで培われた技術をフィードバックした【誰もが扱える】パワードスーツよ?――例えるなら、ISとは腹違いの弟って所かしら…」
「「「…………!?」」」
さも普通の事の様に話す母さんを他所に、【誰もが扱えるパワードスーツ】と訊いた周り居た人たちは一様に信じられないといった表情を浮かべていた。
――【誰もが扱えるパワードスーツ】――
もしかしなくても、今俺達は――歴史の目撃者かもしれない。
それも、ISが発表された当時よりも確実に、世界に混乱をもたらすであろう【新型のパワードスーツ】。
「……有坂博士。貴女はそれをどうするおつもりです?」
「ふふっ。『どうするつもり』……というのは?」
織斑先生の目付きが変わる。
眼光鋭く、睨み付ける様に母さんを見ると母さんはそんなことはお構い無しに笑顔のまま――。
「……ふふっ。私はこのパワードスーツを、【世界に発表】するつもりは無いわよ?」
「……何?」
「うふふ。考えてもみなさいな……。只でさえ、ISはスポーツと言いながらもやっていることは兵器運用――【モンド・グロッソ】もスポーツ大会とは名ばかりの【国家代理戦争】……でしょ?」
「…………」
腕を組み、瞳を閉じて軽く息を吐く織斑先生。
「世界のパワーバランスは現在、結構危ういのよねぇ~。――何がきっかけで戦争になるかがわからない……。そんな中、新たなパワードスーツ――私は今の所【PPS(パーソナル・パワードスーツ)】と呼んでいますが。これを発表すれば各国がこれからやろうとする事は火を見るよりも明らか……でしょ?」
「…………」
何も答えず、ただ腕を組んで訊くだけの織斑先生を他所に、更に言葉を続けていく母さん。
「……でも、今これを発表しなくても近いうちに【大きな戦い】はあるかもしれません。――その時は、【世界の抑止力】としてお父さんが出るかもねぇ~」
「ワッハッハッ!……真理亜、流石の俺も【ワンマンアーミー】は無理があるぞ?」
「うふふ、あくまでも仮定の話ですよ、あなた?――現状、私は【PPS】を世界に発表致しません。仮にこれが世界にバレたとしても、学園側からの試作のISとでも会見で言ってくださいな」
「…………」
「うふふ。返事が無い……という事は肯定と受け取ります」
笑顔で応えると、母さんはそのまま旅館花月荘へと入っていく。
親父もその後を追うように、中へと入っていった。
「……お前たちも旅館に戻れ」
静かに告げる織斑先生は、そのまま旅館へ入ろうとするが――。
「……織斑先生、作戦は――」
「作戦は失敗だ。以降、状況に変化があれば招集する。それまで現状待機しろ」
遮るように告げると、そのまま旅館へ入っていった織斑先生。
「…………」
静かに振り返り、福音のいた空域へと視線を移すと――。
「……ヒルトさん?」
「どうしたの?向こうは福音のいる空域……だよね?」
「……ヒルト、まさか変な事は考えていないだろうな?」
「……変な事?何も考えてないさ」
それだけ告げると、俺も旅館の中へと入っていく。
一つの決意を胸に秘めながら――。
後書き
ちょいまた更新遅れます
出来るだけ早く書くようにはしますので
今回は早い時間にアップです
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