IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第424話】
前書き
模擬戦二試合目です
二戦目、既に親父と一夏の二人は規定位置にて待機し、模擬戦開始の合図を待っていた。
ディスプレイに映し出されていた一夏は、血気盛んな若者の様に、唇の端を吊り上げ、左手を開いたり閉じたりといつか見せた仕草を見せていた。
一方の篠ノ之は、取り巻き連中に慰められている――耳を傾けてもいいが、訊いても篠ノ之の傷を慰める言葉しか言ってなさそうだから放置でいいかもしれない。
ディスプレイにシグナルが表示され、一つ目に灯りが点る。
それに呼応し、一夏の表情は険しくなり、親父の方もナイフの柄を握ると刃が形成された。
さっきの篠ノ之との模擬戦、ナイフ二本のみで勝ったが、一夏相手にどう戦うのだろうか――先日の襲撃事件のフラッシュバックは、ラウラや美冬のお陰で思い出す事は無くなったが、まだ俺は模擬戦を行っていないため、ちゃんと身体が動くかどうかが少し不安になる。
……八月の喫茶店襲撃の時は、やはりISがあったからこそ出来た芸当なのかもしれない……。
そう思うと、俺自身……あの場でやった行為はただのヒーローごっこの様に思えて滑稽にしか思えなくなる。
――と、気付くとシグナルが緑色に変わり、模擬戦が開始されて俺はハッとした表情に。
雪片とナイフの交差、金属音が鳴り響き、親父のナイフは粒子片を散らす。
「零落白夜で一気に決める……ッ!」
呼応するように雪片の展開装甲が開くと、白亜の光刃が雄々しく輝きを放つ。
光刃が触れ、粒子形成されたナイフの刃が四散――直ぐ様親父は距離を取る。
一夏も距離を直ぐ詰めると同時に、逆袈裟斬りによる一撃――光刃の残光が空に軌跡を描くが、親父はその太刀筋を容易く見切ると、切っ先が触れるギリギリで避ける。
逆袈裟斬りによる隙を逃さず、親父は強烈な左ボディーブローによる一撃。
身体がくの字に折れ曲がり、一夏の口から空気が漏れ出る。
軽く喘ぐ一夏に、更なる一撃――くの字に折れ、脇腹が空いた所を横から薙ぎ払うかの様な鋭い蹴りの一撃に、きりもみしながら一夏は墜ちていく――が、途中で体勢を整えると、左手で一夏は口元を拭った。
「……つ、強い……少しは粘れるかと思ったんだが……。 ……だからといって、ここで負けを直ぐ認めるのは、男として、織斑一夏として俺自身が許せないからな……! 少なくとも、一矢報いらせてもらうぜ! 黒夜叉先生!!」
言ってから左腕の武装から光刃が形成される。
零落白夜の光刃による二刀流は、一夏の基本戦闘術に加えられた様だが、やはり当たらなければただの無駄なエネルギーの消費にしかならない。
もちろん一夏自身は短期決着を望んでの事だろうが、その狙いもバレているとやはり意味を成さない――だからこそ、一夏には継戦能力も求められるのだが、白式自体が仕様としてエネルギー消費が激しい為、色々な意味で無理かもしれない。
技能に関しても、瞬時加速の多用が目立つ、奇襲にはもってこいだが一夏の場合は多用し過ぎが原因で奇襲の意味を成さないのが……。
そんな俺の考えを他所に、空中では接近戦が繰り広げられる。
だが、これは一夏のラッシュ攻撃を鮮やかに避ける親父の技量が際立つ。
見切りと言って良いだろう、無駄に大きな動きで避けるのではなく、最小の動きで零落白夜の光刃二刀流を避ける。
二刀流の光刃による軌跡が空に何度も描かれる、全く当たらない一撃一撃に、一夏も苦虫を潰した表情になる。
「うぉぉおおおおッ!!」
「…………」
吠える一夏に対して終始無口な親父――まあ声を出せば正体がバレるため、仕方無いが……。
大振りによる雪片の一撃を避けると、雪片を持つ手を蹴りあげる。
その衝撃に、雪片を手放す一夏、しまったという表情をしても時は既に遅く、展開装甲も閉じ、光刃も四散して物理刀になった雪片を空で蹴り飛ばし、縦回転しながらグラウンドへと落ちていった。
「っ……雪片が……! でも、まだ武装腕があ――」
言ってる最中に左腕から形成されていた零落白夜の光刃が四散し、粒子片を撒き散らせて消えていく。
やはり二刀流によるエネルギー消費と受けた一撃一撃が重く、エネルギーの枯渇を招いた様だった。
「……っ……なら!」
言ってからいつか見せた篠ノ之流裏奥義【零拍子】――相手の一拍子目よりも早く仕掛ける格闘戦を繰り出す。
だが、親父はその反応を上回る――というよりも予め予測していたのだろう。
攻めた一撃を易々と避けられ、一夏は信じられないといった表情を見せ、黒夜叉を見るも親父の鉄槌が顔面にめり込み、白式のシールドエネルギーがゼロになった。
絶対防御に守られたとはいえ、その衝撃は凄まじかったようで軽く頭を振る一夏――ブザーが鳴り、模擬戦が終了した。
「くっ……手も足も出なかった……!」
悔しそうな表情を浮かべる一夏を他所に、また地上へと降りてくる親父、グラウンドに突き刺さったままの雪片は既に粒子化されて消えていた。
「ご苦労様でした、黒夜叉先生。 まだお疲れでは無いですか?」
降りてきた親父に、山田先生が気づかって声を掛けると親父は画用紙とペンを粒子化、其処に書き連ねていく。
【ありがとうございます。 ですがまだまだ私は疲れてませんので大丈夫ですよ】
画用紙を見せると、山田先生は「あまり無理はなさらないで下さいね」と気遣う言葉を掛けた。
親父もそれに応え、頷くとまたそのまま立って俺や他の生徒を見つめる。
一方の一夏はというと――。
「お前は零落白夜の無駄遣いを控えろ、いい加減機体の特性を理解しろ、いいな?」
「で、でも織斑先生だって零落白夜を使って――」
「馬鹿者、誰があんな脳筋みたいに突撃をするものか。 零落白夜も、使い所を見極めて使用している。 お前ももう少し考えて扱え、いいな」
何だかんだで一夏へアドバイスする織斑先生、流石に見てられなかったのだろう、少しは改善すれば良いのだが……多分、一夏は忘れる気がする、何と無くそう思う。
一夏が負けた事により、ひそひそ話が聞こえてきた。
「……織斑くん、直ぐにやられちゃったね」
「……キャノンボールでも最下位争いだったし、やっぱり教えてる篠ノ之さんが悪いかも……」
「……だねぇ。 ……これを機会に、私たちで織斑くんに操縦教えよっか……?」
……何だかんだで一夏が悪いというより、教える側の篠ノ之が悪い形になってる。
まあ確かに否定は出来ない、擬音オンリーで教えてるのだから……確かに擬音も交えれば分かりやすいが、擬音オンリーになると何を言いたいのかわからなくなる。
それはさておき、織斑先生は一夏から離れると親父の元へと足を運んだ。
「さて、連戦になりますが黒夜叉先生はまだ大丈夫でしょうか?」
山田先生同様、気遣う織斑先生に対して力強く頷く親父、それを見た織斑先生は一組二組の生徒の方へと身体を向けると口を開いた。
「では、まだ時間もあることだ。 三戦目の相手、誰か志願するものは居るか?」
織斑先生の言葉に、応えるように手を上げる――ラウラだ、それを見た織斑先生は、頷くと――。
「ではボーデヴィッヒ、準備をしろ。 ――黒夜叉先生、またお願いします」
「………………」
親指を立て、サムズアップで応える親父、何気にエネルギーの補給無しで三戦連続で戦うのは凄いと思う。
空へと躍り出、規定位置に到達すると親父は腕組みしてラウラを待つ。
一方のラウラは、その身に粒子が収束――シュヴァルツェア・レーゲンを身に纏うや、直ぐ様親父同様に空へと躍り出て、規定位置へと到達した。
一旦ラウラは敬礼を行う――その仕草に、一組二組の生徒はざわめいた。
――というのも、これまでラウラが敬礼をしたのは主に織斑先生のみだった為だ、それが今日来たばかりの親父にも敬礼したんだ、ざわめくのも必然だ。
生徒のざわつきを、織斑先生は軽い咳払いで制する、ピタッとざわめきが止まる様は、まるで軍隊の様な錯覚を得る。
それが合図だったのか、シグナルに灯りが点る――ラウラも親父も、戦闘体勢をとり、模擬戦開始の合図を待っていた。
静寂に包まれるグラウンドに、鳥の鳴き声と航空機の飛行する音が聞こえる。
そして、シグナルが点灯するや、直ぐ様第三戦目の模擬戦が開始された。
後書き
三戦目はラウラ
一夏はいつも通りでしたな、てかこれが一夏クオリティ
原作見ても袈裟斬りか横薙ぎか突きぐらいしかしてない
格闘戦もしてるっぽいが少ないし
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