black lagoon 百合小説 ”I”
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1 夜明け
サイケデリックな色彩が光を帯びる
海岸沿いの船舶の光 潮の満ち引き
街のネオンとビルの灯り
場末ストリップクラブのミラーボール
そして流れる血の色・・
まどろみの中から目覚めたレヴィはひどい寝癖をかきむしりながらソファから起き上がった
オフィスのソファは無駄に固くて眠るには相当不便だが、朝から散々飲みあかしたレヴィにとってはそこでいい夢を見るのには何の支障もなかったのだけどシラフに戻ると腰が相当痛い事に気付いたのだ
気が付くといつもの短パン姿になぜか上半身は裸、馬鹿な事やって脱いだのか。それともロアナプラ特有の夏場の暑さに脱いだのかは分からない。彼女は重い身体を起こし錆だらけの冷蔵庫を開けて
薄明かりの付くそこから水を取り出し軽く飲むと窓の外から下の景色を眺めた。見ると大した値もつかなそうな車に数人の車上荒らしが必死にドアを開けようとしている最中だ
「おーい、おーーーーい!」
「あ?」
彼女は下に聞こえるぐらい声を張り上げて机のビール瓶を飲み干すと不思議な液体を瓶にいれなおしながら
下にいる車上荒らし達に話しかける
「おーい!聞いてんの?」
「ンダァこのアマあ!話しかけんじゃねえ!殺すぞ!?」
「あ?・・おお、威勢いいじゃねえか。夜中にケチな車盗もうとしてる馬鹿に言われてもぜーんぜん恐くねえんだけど!」
「だ、だから黙れっつってんだろ!周りにきこえるだろうが!」
「あっそーー?ごめんねー。気つかえなくて。アタシ空気読めない女ってここらじゃ有名なんだわ え・・え?知らなかった?嘘でしょ・・?」
「おい、アイツ頭いかれてんじゃねえのか?おい、まだおわんねえのかよお前ら!、おい、さっき言った事謝るからマジでわめくなって!」
「仕事ははかどってるー!?時給いくらか言ってみろよ!え?5セント!?たっかいねー!高すぎて涙がでてくるよ!」
「あああああもう!5セントじゃねえしそもそも給料制じゃねえんだよクソアマぁ!」
「マジで!?大変じゃん!よーしじゃあもっと仕事がはかどるようにアタシがとっておきの奴くれてやるからな。」
「あ?」
ああ、全く酔いが冷めてない・・。レヴィ、貴女ビール瓶にハンカチなんか入れて何やって・・
あ・・
ハンカチにライターをともし、レヴィはそれを物凄い意地悪な顔をしながら外に投げ捨てた
バリンと激しい音がして瓶が地面にうちつけられ割れるとまたたくまに炎がその場に広がる
「う、うわああああああああ!な、なにすんだテメェマジで頭大丈夫かよ!」
「だーから、とっておきの奴くれてやるって言ったじゃーん。よーし、相手も喜んでくれたし次はー、んー、硫酸なんかどう?」
ニコっと可愛らしくウインクをした
「ひ、ひええええええ!!キ、○○○○だあ!お前ら逃げっぞ!上の奴やべえ!上のやつがやばい!」
車上荒らしは一目散ににげていった。
「キャハハハハハハハハ!ビビッちゃってんのビビっちゃってんのー。バーカバーカ」
「ハハハ、あーあ、つまんな。」
さて、チンピラにも喧嘩売ったことだしもう一度のみ直して寝るか。・・なんて、本当自堕落というか・・とにかくレヴィはソファにすわりなおし、タバコに火をつけ満足げな顔で煙を部屋中にふきかけた
と・・、別の部屋のドアが一人でにあいて、中から人影のようなものが見える
「え?あら・・?」
「おはよう・・。いい夢は見れたかしら。」
「・・・は?」
人影だったものはあまりに意外すぎる人の形をともなって姿を変えた。”アノ”ラブレス家のメイド、ロベルタだったのだ。
・・というか、なんだか無駄に髪は乱れているし服も乱れている。と言うか下着姿から上着を着てる最中だ。いつかのボサボサのロングヘアに捲くったシャツ姿・・。レヴィは口をあんぐりとあけたまま。呆然としてしまった。
無表情で無駄に距離の近い隣に腰をかけると片足をあげてブーツを履き直し、今から帰りますといわんばかり彼女をちらりと見てくる。
「どうかなさったんですか。”アレ”じゃ不満?」
擦れた目をしながらロベルタは相変わらず無表情で彼女を見つめている
「えっ・・!?お、おお!全然全然!十分ぐらい良かったぜ!?何だよお前意外とヤるじゃん。見直したぜ?・・でいいんだよな?」
語尾を小声で言いながら言葉が先か、言った後からレヴィはロベルタの言葉の意味を考え始めた
「・・?そう。貴女って意外と素直だったのね・・。」
「え・・。お、おう・・まあ?な?」
これはもしかしてもしかすると・・、いやもしかしなくてもそう言う事か?
頭をカラフルに駆け巡らせレヴィは合っているかもわからない答えを導きだした
それにしても全く覚えていない・・昨日は飲み過ぎて記憶が混濁しており、更にロベルタに関してはどこで会ったかも覚えていないのだ。
まずい・・レヴィは思った。身体の関係はどうあれ一体この女とどれだけの仲になってしまったのか。
もし深い仲にでもなっていたらいつものぶっきらぼうな態度ではちぐはぐになってしまうのではないか、いやそもそも直接話した事がそこまでない上に昔の記憶と言えば殺し合い殴り合った事しか覚えていない。
これからどうやって接していいものかとか・・いやいや、普通に隣で寝てただけかもしれないいやで、ここで覚えてないなんて事がばれようものなら何をされるか分かった事じゃないとか、コイツとのアレはどんな感じだったのか覚えてないのが少し残念だとか・・と言うか最後は完全に邪念だけど
とにかくレヴィはロベルタに見つめられた数秒間にない頭を必死でふりしぼっていたのだ
「念を押すようで申しわけありませんけど、依頼の件、引き受けて下さるんですよね?」
「お、おうおう!まかしとけ!アタシに頼めば一発できめてやんよ。」
「?一発・・?」
まずい・・適当にいってはみたが依頼など全くおぼえていないのだ」
「・・とにかく宜しくお願いします。あの頼み事は私では出来ないし、貴女ぐらいにしか頼めない事なの・・。」
「ああ、凄くよくわかってるぜ・・多分。あ、あーと後そうだ。」
「まだ何か?」
「その・・あー、アタシとのアレって・・・・よかった?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ヒドかったわ」
バタン。
事務所のドアがしまり、レヴィは一人取り残された
「ええ・・」
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