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GS美神他小ネタ18菌

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ゾイドSS?

 
前書き
このSSはゾイドをご覧になった方だけお楽しみ?頂けます、あらかじめご了承下さい。
 

 
 
「……そして、この戦いで失われた、多くの命のために、哀悼の意を込めて黙祷したいと思います、それでは」
「黙祷っ!」
 共和国大統領の素晴らしい演説の後、鎮魂の鐘が鳴らされ、多くの観衆が黙祷を捧げた……
 ワー、ワー、ワー
 その後、数万の観衆の前で、惑星Ziを救った英雄達。 そして自らグラビティカノンの砲弾となり、この世を破滅させようとしたデスザウラーを倒した、バン・フライハイト「大佐」に勲章が授与されようとしていた。
「アーバイン小佐、ムンベイ大尉、前へっ!」
 デススティンガー討伐と、高高度からの撃墜など、諸々の戦果で叙勲、召集されたアーバイン。 そして様々な助力と、唯一人ウルトラザウルスを操縦できるムンベイに、相応しい階級が与えられた。
「(ボソッ)おい、いつから俺達までガーディアンフォースになったんだ?」
「いいじゃない、給料までくれるって言うんだから、貰っておきなよ」
「階級なんかいらねえっ、肩苦しい」
 しかし周りの状況を考え、仕方なく皇帝陛下の前に歩いて行くアーバイン。
「おめでとう、アーバイン」
 側近の者が勲章を付ける間に、ルドルフに話し掛けられる。
「めでたくねえっ」
「貴様っ、陛下に対し不敬だぞっ」
「いいんです、彼は僕の命の恩人で友達ですから」
「はっ!」
「よく頑張って下さいましたね、ムンベイさん」
「はいっ、大統領閣下」
 さすがの火の玉ムンベイ姐さんも、数万人の拍手と歓声と、両国首脳の前では緊張するらしい。 その後、ハーマン、トーマ、シュバルツ兄弟、ロッソ、ヴィオーラ達も勲章を受けていた…

「バン・フライハイト大佐、前へっ!」
 二階級特進し、一時的に階級が同じになった、クルーガー大佐に呼び出されるバン。 今回はフィーネと共に逃走を阻止され、この場に引き出されていた。
「立派なゾイド乗りになったな、父上もさぞ喜んでいるだろう」
「はいっ! 大佐」
 さすがに今日の呼び方は、オッサンではないらしい。
(バン…… 父さん、母さん、見てるっ?)
 招待されていた姉も、父母の遺影を抱いて、弟の立派な姿を見守っていた。
 そして皇帝陛下直々に叙勲されるバン。
「ありがとう… バンのおかげで世界が救われたんだ、こんな物じゃ足りないよ」
「俺だけじゃないさ、ルドルフ。 いえっ、皇帝陛下っ」
「やめてよっ、僕の事は今まで通りルドルフでいいよ」
「分かってるよ、ロイヤル仮面さん」
「もうっ(ポッ)」
 翼の男爵達と一緒に飛んでいたのもバレて、顔を赤らめるルドルフ。

「ありがとう、バン大佐、貴方の勇気と行動力は、後の世まで語り継がれ、ゾイド乗り達の鏡となるでしょう」
「はっ! ありがとうございますっ!」
 やがてバンに勲章を付け終わった大統領は、民衆に向かってこう言った。
「観衆の皆さん、我々共和国は、彼への感謝の印として、ウルトラザウルスのメモリーに彼の功績を永久に保存し、彼の名を冠した競技会を開催したいと思います。 これからは両国が戦いでなく、競技で競い合う、平和な世界になる事を願います」
 こうして後のゾイドバトルとなる競技会が開かれる運びとなった。 それは政治ショー的役割が強かったが、惑星全土の復興にも一役買ったらしい。

『それでは花束の贈呈です、皆さんっ、惜しみない拍手をお送り下さいっ』
 ウオオオォーーーーーーーー!!!
 場内のアナウンスも、すでに涙交じりの声になり、観客も興奮を隠せなかった。
「おい、フィーネはどうした? あいつだけ表彰無しかよっ」
 古代ゾイド人の少女だけが呼ばれていないので、不満の声を上げるアーバイン。
「フフッ、これからよ」
 何か知っているらしく、ニヤニヤ笑っているムンベイ。 そして英雄達の前に、真っ白なワンピースと、白い帽子を被った少女達が立ち、順に花束を渡して行った。
(ニヤリ)
 そして惨劇(笑)は起こった。
 ドスウッ!!
「「「バーンッ!」」」
「「何ぃっ!」」
「キャーーーッ!」


 その場にいた全員が凍り付いた… 花束を持っていた少女の一人がバンに飛び掛り、押し倒して「ディープキス」までしてしまったから……
『おっと、これは… 花束を渡す少女が、バン大佐に抱き付いてしまいました。 これも微笑ましいハプニングの一つなのでしょうか?』
「おいっ、いつまで引っ付いてやがる、バン、大丈夫か?」
 ちょっと羨ましい状況のバンを見て、少女を引き離そうとするアーバインだったが…
「て、てめえはリーゼッ!」
 帽子の下の青いショートカットを見てしまい、身構えるアーバイン。
「動くなぁっ!」
 トーマの前にいた少女?は、花束に隠したマシンガンを構えるレイブンだった。
「か… 可愛い(ポッ)」
 フィーネを諦めたトーマは、女装して化粧までしたレイブンに一目惚れしたらしい。
「どうやってこの警備網をっ」
「この爆薬が見えないかっ? 大統領も皇帝も吹き飛ぶぞっ!」
「くっ!」

 その時、二人は…
「ふふっ、バン・フライハイト、お前はなぜボクの命を何度も助けた?」
 周りのギャラリーは完全に無視して話すリーゼ。
「そ、そりは~、ふぃ~ねが言ったし~、おまへらって、さひしょから、わるいやつりゃなかったんらろ~」
 強烈なキスをかまされて、ロレロレになっているバン。
「そうだ、お前も聞いたはずだ… ボクにもお前のような少年、ニコルがいた… もし奴らがニコルを撃たなければ… グスッ、ここにいたのは… あいつだったかも知れないっ」
 何度も涙で詰まりながら、バンの顔に熱い雫を落とすリーゼ。
「…おい?」
 今まで冷血で、人の命さえ何とも思っていなかったような少女の、一番弱い部分を見せられて慌てるバン。
「それに… ボクは見た… ジェノザウラーの荷電粒子砲を防いだヘルキャットをっ、ヒック、だからニコルの魂はお前と共にいるんだっ、だから、 だからっ……」
「だから?」
 止まる事なく降り注ぐ涙と一緒に、呆然とリーゼの告白を聞いているバン。
「魂だけのニコルに体を作ってやればいいっ! それはあいつとゾイドイブを探す約束をしたボクと、ニコルの魂を持ったお前の子供で無ければならないっ!!」 
「へ……?」
 リーゼ理論は不明だったが、ニコルを再び現世に受肉させるには、バンとリーゼの子供でないといけないらしい。

「リーゼーーッ! 何してるのーーっ!!(怒)」
 そこで、会場の通路の奥から、ウェディングドレス(笑)に身を包んだフィーネさん(年齢不明)が登場した。
「おい、こう言う事だったのか…」
「そう、本当は式典のクライマックスだったんだけど、ぶち壊しね…」
 呆れて見守るアーバインとムンベイ。 二人の結婚式は、これからの再生と復興を象徴する儀式となるはずだった。
「フフフッ、お前だけを幸せにさせはしないっ、スペキュラーッ!」
「ウオオーーーン!」
 リーゼが呼ぶと、青いオーガノイドが光になって飛んで来た。
「よしっ、引くぞっ、シャドーッ!」
 レイブンもオーガノイドを呼び、脱出する。
「「あれはっ?」」
 ジェノブレイカーと合流し、守備隊のゾイドなど物ともせず、まるで無人の野を行くように飛び去るレイブン。
「くそっ、まだあいつが残ってたな」
 デスザウラー討伐に協力し、無罪放免とされていたのが仇となった、そして…

 ガリガリガリッ! ドオオオンッ!!
 式場の床をぶち抜き、巨大な爪が現れる。
「「「「「「「「「「まさかっ!」」」」」」」」」」
 多分、死ぬまで忘れられない前腕部… 下には巨大な荷電粒子砲があるのは間違いなかった。
「「「「「「「「「「デススティンガー……」」」」」」」」」」
「はははははっ! 古代ゾイド人のボクならゾイドイブも思いのままだっ! もうすぐデスザウラーだって復活させてやるっ!」
 今日はゾイドコアだけ抜けていた、デススティンガーを修理して乗ってきたリーゼちゃん。
「何てこった…」
「この世の終わりだ」
 そこでヘロヘロのバンを、スペキュラーに乗せてさらって行くリーゼ。
「だが安心しろ、ボクはヒルツのように世界など欲しくない、ボクの要求はバン・フライハイト、そしてこいつが持っているニコルの魂だけだっ!」
「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」
「ボク達の愛の生活と、出産(ポッ)を邪魔する奴は誰であっても容赦しないっ! 分かったなっ!(真っ赤)」

 ガリガリガリッ! ゴゴゴゴゴゴッ
 余りにも可愛い要求に、ちょっぴりほのぼのしてしまう一同。 しかし、絶対に要求を飲めない人物が一人。
「ジーーーーークッ!!」
「ウオオーーーン!!」
 自分の晴れ舞台と、新しい生活を砕かれ、女のプライドもズタズタにされたフィーネさんは、ウェディングドレスのままジークと合体し、展示されていたバンのブレードライガーに乗り込んだ。
「くっ、このままじゃ勝てない、帝国で修復されてるデスザウラーを乗っ取るわよっ、行けぇっ! ブレードライガーッ!」
 式典が行われている帝国首都。 そこでは通常タイプのデスザウラーが、バンに破壊された後、新たな戦力として修復、強化されていた。

「さあ、行こうバン、もうボクの命も体もお前の物だ(チュッ)、またボクとニコルを会わせてくれるかい?」
 デスステインガーのコクピットの中で、早速、「愛の行為」を始めるリーゼ。
「ま、待てっ、早まるなっ、リーゼ」
 しかし、リーゼはバンの目の前で白いワンピースを脱ぎ、腰周りを覆っていた最後の布切れを脱ぎ捨てた。
(って、もう全部脱いじゃったし…)
 心とは裏腹にギンギンのバン君。
「それにボク… 今日が一番安全だと思うんだ」
「な、ナニが安全なんだ…?」
 女にとっての安全日は、男にとっては一番危険な日。 もうリーゼ的には今日中に妊娠するつもりらしい。
「さあ、始めようか」
 バンの足の上に座って、べったりと張り付き、チャックやボタンを外して行くリーゼ。
「な、何を…」
「クスッ、分かってるくせに、うふふっ」
(うっ、笑ったら結構、可愛いっ)
 据え膳喰わぬは何とやら。 さらに女に恥をかかせたり、こんなにもニコルに会いたがっているリーゼの頼みを、無下に断れるバンではなかった。 そして…

「リーゼ、約束を忘れるなよ、奴を「倒す」のは俺だっ」
 きっと、バンがリーゼちゃんに乗っている間、後ろから「荷電粒子砲(笑)」で貫いて倒すのは、レイブンの役目らしい。

「リーゼ… お前、その… 経験あるのか?」
「いいや、無い。 お前は?」
「な、無い…(汗)」
 何回かフィーネと未遂に終わり、見かねた先輩達に連れて行かれ、筆降ろしはプロのお姉さんにお願いしたのは、口が裂けても言えなかった。
「じゃあ、練習しようか、フーー」
 甘い吐息をかけられ、リーゼの髪からは女の子特有の甘酸っぱい香りがして、次第にブレーキやロックが外れて行くバン。
(フライホイール接続、15テラボルト、ターゲットロックオン、グラビティブラストスタンバイ)
 発射管制室からの報告と、プラメタルサイト砲弾の暴発の危険性からも、次第に考えを変えるバン。
「わ、分かった… 聞こえるかっ、ニコルッ? これからリーゼがお前を産んでくれるそうだっ、だから俺の中にいるなら、リーゼの方に行くんだぞっ、分かったか?」
「!! …バンッ!」
 両手で口を押さえ、バンの言動に驚くリーゼ。
「いいんだね? ボクでいいんだねっ?」
「ああ、ニコルも分かってくれるさ」
 その時、二人には、あの幼い声で「わかったよ」と聞こえたような気がした。
「ニコルッ! うっ、あ、ありがとうっ、バン… グスッ、うううっ」
 泣き崩れたリーゼを支え、泣き止むまで背中と頭を撫でてやる。
(リーゼって、痩せてるのに柔らかいんだな?)
 最初は「少年」とまで呼ばれ、胸までペッタンコだったリーゼも、抱き寄せると体中柔らかく、いい匂いがしてバンの脳天を直撃していた。
(こう言う事情だ、フィーネだって分かってくれるよなジーク?)
 分かってくれません。

 その頃、帝国中心部にあった、撤去不可能だったデスザウラーの残骸に、被せるように新設された修復工場では。
「止まれっ! 何者だっ!」
『ガーディアンフォース、エルシーネ・リネ・フィーネですっ! 式典会場にデスステインガーが出現し、バン・フライハイト大佐が誘拐されましたっ!』
「「「「「おおっ!」」」」」
 救国の英雄の一人が現れ、先程の事件の速報と同じ内容を知らされ、驚く兵士達。
『修復中のデスザウラーを徴発します、作業を中止して下さいっ』
「無理だっ、まだ動かせるはずが無いっ」
「行くわよっ、ジーークッ!」
「ウオオーーーン!!」
 修復されていたデスザウラーに、ジークとフィーネが融合し、残りの部分も修復されて行く。
「凄い… 自己修復してるぞ」
「退避しろっ」
「荷電粒子ファンもコンバーターに交換されてる、シールドの出力は…? 行ける、これならデススティンガーの直撃にも耐えられるっ」
『工場内の方はすぐに退避して下さい、デスザウラーを発進させますっ』
「動くぞっ、逃げろーーっ!」
 わらわらと逃げて行く整備兵や作業員達。
『デスザウラー、発進っ!』
 後に、その名の通り、「終末の魔女」と呼ばれる、フィーネちゃんザウラーが起動した。 なぜ個体識別名があるかと言うと、敵が「リーゼちゃんザウラー」だからである。

 その頃、デススティンガーのコクピットでは。
「ありがとう、バン……」
 すっかり険しさが取れて穏やかな表情になり、それからもずっと、お腹を押さえて、涙を流し続けていたリーゼ。
(何か、聖母像か、そんな絵みたいだな…)
 初めて愛し合った相手に、目の前でこんな表情をされ、好きにならない方がどうかしていた。 しかし自分の役目は終わってしまったので、思わず声を掛けてしまう。
「なあ、リーゼ、もう俺って…」
 そこでバンの質問を遮るように一言。
「二人目は女の子の方がいい?」
「えっ? ああ、元気だったら俺はどっちでも…(ポッ)」
 聞くまでも無く、答えはオッケーらしい。
「ねえっ、欲しい物があったら何でも言って。 デススティンガーもあげる、帝国でも共和国でもバンの物だよ」
 けっこう尽くすタイプのリーゼちゃんだった。
(ここでフィーネって言ったら殺されるのかな?)
 はい。

「まず、安心してニコルを産める場所だな、ニコルのいた村は嫌だよな」
 コクリ
 言うまでもなく却下らしい。
「じゃあ、俺のウィンドコロニーなんかどうだ? 姉ちゃんもいるし、伸び伸び育てるにはいい所だぜ」
「うんっ」
 すっかりバンに体を預け、嬉しそうにしているリーゼ。 もちろんバンの方は、あの場で結婚させられる事など知らなかったので、ニコルが出来たリーゼちゃんの責任を取るつもりでいた。
 ついでにゾイド好きの息子に、子供の頃から操縦をしっかり仕込んでやるのが、楽しみで楽しみで仕方なかったらしい。

 その頃、帝国領の会議室では…
「デススティンガーの現在位置は?」
「地下をゆっくりと移動しています、何を壊すでも無く、来た道をそのまま戻っています」
 式典に乱入し、皇帝や大統領に危害を加えようとした罪はあったが、あの可愛い要求を飲まなければ、デススティンガーと戦わなければならない。 それにリーゼは、バンに好意を持っているようなので、命に危険は無いと思われていた。
 ブウンッ
 そこで会議室に、無理矢理割り込む映像があった。
「「「「「「リーゼッ!」」」」」」
「さっきは乱暴な方法でバンを連れ去ってすまなかった… あいつにも怒られてしまった」
「貴方は、リーゼさんなのですか?」
 女同士である大統領でさえ、ほんの1時間前とは全く別人になったリーゼを見て驚いていた。
「そうだ、これからバン・フライハイトの要求を伝える」
「何だとっ?」
 すでにバンがリーゼやレイブンの仲間になり、また世界を混乱に陥れるのではないかと怒るアーバイン。 もしそうなら、自分の手でバンを倒すしか無い。
「慌てるな、バンからの頼みだ。 惑星復興用のゾイドが欲しければ、いくらでも作ってやる。 これから惑星中のゾイドイブから、建設用ゾイドが溢れ出すだろう」
「「「「「ええっ?」」」」」
「それとこれはボクからの要求だ。 帝国と共和国はゾイドを「購入」と言う形で受け取り、その金銭は全て被災者に渡す事。 餓死者や凍死者を出す事は許さない、これもバンの希望の一つだ」
 これが復興の女神、りーゼちゃん誕生の瞬間だった。
「ええ、分かりました、ご協力感謝します。 彼の願いなら私達も異存はありません」
「他にも食料生産プラントも復旧させてみる、動けばまた連絡する」
「ありがとうございます」
 バンがどうやってリーゼを「説得」して「服従」させたか、すぐに分かった大統領。 そこで、子供のルドルフが、聞いてはいけない質問をしてしまった。
「あの… どうして泣いているんですか?」
 目の前の女神像のような女性が、ずっと涙を流しているのに気付き、聞かずにはいられなかったルドルフ。
「ああ、これかい、女は嬉しい時、こんな泣き方をするんだよ、坊や」
 ドクンッ
 ルドルフ君、すでに遅かりし初恋であった。

「あのっ、弟は無事なんですかっ? せめて声だけでも聞かせて下さいっ」
 バンの姉が声を出した所で、リーゼの顔色が変わった。
「あっ、お… お姉さんですかっ? 始めましてっ、彼は無事です、すぐに変わりますからっ」
 急に敬語に変わってモジモジするリーゼ、皇帝や大統領より上位の扱いらしい。 これで大人の何人かは、短い時間に何があったのか、すっかり分かってしまった。
「よう、姉ちゃん、俺は無事だぜ。 どこに向かってるのかは知らないけどな。でもリーゼって行く場所が無いんだ、俺の村に連れて行ってもいいかな?」
 カメラの向きが変わったが、二人の位置関係はどう見ても、「バンの膝の上にリーゼが座って、肩に手を回して抱き付いている」状態だった。
「それより、さっきフィーネちゃんがデスザウラーに乗って行ったらしいわ、貴方を取り戻すために…」
「え? デスザウラーって、帝国の残骸持ち出したのかっ? 俺は無事だって言ってくれよっ」
 フィーネちゃんが気にする、「バン君の貞操」は既に無事ではなかった。
「連絡がつかないのよっ」
 と言うか、フィーネちゃんザウラーは、徴発自体が無効なのがばれて、市街地を出た後、帝国の追撃部隊を撃破して、悠々と歩いている途中だったりする。
「フィーネには私から「説明」しておくよ」
 もちろんリーゼは、通信などではなく、「荷電粒子砲」で説明や弁解をするつもりでいた。
「ああ、あいつもゾイドに乗ったら性格変わる方だからな、頼むよ(チュッ)」
「もうっ、みんな見てるよっ(ポッ)」
 ガビーン!
 リーゼの頬にキスするバンと、嬉しそうに頬を赤らめるリーゼを見て、約1分で初恋が破れたルドルフ殿下。 その時、彼はこう思った。
(許さないよ… バン)
 ちょっと憧れていた、「お姉さんみたいなフィーネさん」に続き、ルドルフ君的女神様まで篭絡してしまった男を見て、嫉妬の炎を燃やす皇帝陛下。

「バンッ、何してるのっ? フィーネちゃんはどうするつもりっ?」
「え? あいつとは何か上手く行かなかったし、実はリーゼと仲良くなっちまったから、俺達… その、結婚しようと思ってるんだっ(ポッ)」
 振られたのではなく、結婚式を隠されていただけだが、誤解が誤解を生んで、リーゼと生まれてくるニコルのためにも、良い父親になろうと決心していたバン。
 ビキッ!
 そこでルドルフから変な音がして、血のような色をした目のまま、何か側近に耳打ちをする。
(ボソボソボソ…)
「よ、宜しいのですか?」
「命令だよ、すぐに手配して」
「はっ!」
 この直後、フィーネの行動は許可され、「リーゼ様」の奪還とバン・フライハイト抹殺の勅令が下された。

「この鈍感っ! フィーネはねっ! 奥でウェディングドレス着て、あんたを待ってたんだよっ! それをっ…」
 余りにも間抜けな男を見て、つい怒鳴ってしまうムンベイ。
「あれ? 聞こえないぞ、何言ってるんだ? もう1回言ってくれ」
「どうやら電波状況が悪いらしい、後でかけ直す、通信終了」
「待てっ、バンッ! まだっ」
 ブツンッ
 リーゼちゃんの意地悪…

「さあ、邪魔が入る前にもう1回どう?」
「どうって? まだ痛いだろ?」
「構わないよ、怪我は慣れてるし、さっきは暖かいって言うか、凄く嬉しかった。 また暖めて欲しい」
 通信するために羽織っていたシーツを脱ぎ、裸のまま抱き付くリーゼ。
「で、でも」
「ここはそう言ってないよ、またこんなに…」
 自分の足の下で発育する、「ニコルの素」をさすりながら、笑っているリーゼ。
(うっ、やっぱり笑うと可愛いっ!)
「リーゼッ!」
「ああんっ(ハ~ト)」
 今日は下半身の命令に忠実なバン君だった。

 それから数日後、一人の青年が、自分を目覚めさせた運命の少女を探していた。
 以前はレイブンと同じように負の感情を植え付けられ、ゾイドの操縦技術だけを叩き込まれて来たが、プロイセンやデスザウラー亡き今、その洗脳も解け、最初の約束を交わした少女を探し求めていた。
 コンコンッ!
 ようやく辿り着いた、思い出の小さな家のドアをノックする青年。
「はい。あ… 貴方はヒルツ、ヒルツなんでしょっ!」
 その家から出て来たのは、バンの姉だった。 ヒルツに縋り付くように問い掛けるバンの姉。
「ああ、ずっと君を探していた… せっかく君の父さんに守って貰ったのに、僕は捕まってしまって、君の父さんは……」
 ヒルツの方は頭髪が燃えた後、短く生え変わっていたので、ウィンドコロニーの傍の遺跡にあった、フィーネとは別の部屋で目覚めた少年の面影と重なった。
「いいのっ、貴方がっ、貴方だけでも生きていてくれたなんてっ、私はそれだけでっ」
 そこからは言葉が続かなくなり、ヒルツの胸で泣き続ける姉。 おてんばだった少女は、弟と同じく、遺跡に呼ばれるように中に入り、ヒルツとオーガノイドを目覚めさせ、帝国に奪われるまでは、ほのかな恋心を抱き合って一緒に暮らしていた。

 その後、強化されたデスザウラー同士が戦い、ウルトラザウルスとデスステインガーも参戦し、惑星全土を焦土と化す「バン・フライハイト争奪戦」が行われた。
 フィーネはバンを奪い返すため戦い、バンはリーゼとニコルを守り、レイブンもやっぱりバンを守り、トーマはレイブンを? ルドルフはリ-ゼを奪おうと画策し、もう大変な事になったらしい……
 
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