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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第571話】

 学食カフェへと向かう道中――。


「ほう、あれが落ちこぼれの有坂ヒルトですかな?」

「その様ですな」


 先程見かけたおっさん連中が俺を見ながら小声で話をしていた。


「いやいや、織斑一夏君にはスター性、気迫、覇気等を感じましたが。 ……成る程、こうやって実物を見れば見るほど彼の引き立て役にしか見えませんな」


 値踏みするように俺を見る一同――生憎とおっさん連中に好かれても気持ち悪いとしか思えないのだが。

 無視して俺はセシリアの元に向かう――そのおっさん達の隣を通り抜ける際、礼儀として俺は挨拶をした。


「こんにちわー!」

「「「…………」」」


 挨拶をするも、返事すらない――感じが悪いおっさん連中だが、もう気にせず駆け足で俺は向かった。


「やれやれ、もう少し品よく挨拶してもらいたいものですな」

「織斑一夏君ならいざ知らず、やはり落ちこぼれの挨拶はあの程度ですかな?」

「彼を視察するまででも無いでしょう。 それに、代表候補に選出するまでもありませんな。 でもまあ? せっかくの運動会らしいし、若い女の子の瑞々しい肢体を見て潤いを取り戻そうではありませんか」

「ハッハッハッ。 女尊男卑とはいえ我々にはあまり関係ありませんからな」


 昼休みの時間はわりと長い――というのも午後からの競技の一部は大掛かりなものらしい。

 上級生が交互に休憩をとって設営してるとか。

 学食カフェへと近付く――俺に気付いたセシリアは大きく手を振った。


「ヒルトさん、此方ですわ♪」


 嬉しそうに俺を迎えたセシリア、見るとテーブルにはセシリアが持ち込んだシルクのテーブルクロスが掛けられていた。


「御待ちしていましたわ、ヒルトさん」

「悪い、遅れたか?」

「いえ。 ……仮に遅れてやって来たとしても、貴方を待つ楽しみもありますもの」


 胸の前で手を合わせ、微笑むセシリア――実った巨峰は見事な谷間を形成させていた。


「ではヒルトさん、此方の椅子へ……」


 促され、座るとセシリアは手際よく自身が作った料理の入ってる弁当箱を開いて見せる。


「まだあまり難しい料理は出来ませんの。 ですが……ヒルトさん、確かハンバーグが――」

「ああ、ハンバーグは好きだな」

「うふふ、良かったですわ♪ ……ですが、少し焦がしましたの」


 少ししょんぼりとした表情を見せるセシリア、確かにハンバーグの表面は焼きすぎたのか黒く焦げてはいるものの、形自体は整っている。

 添えられたパセリや切られた人参は不恰好だが……。

 後は白ご飯、これは夏にちゃんと教えたからかふっくら炊けていた。


「じゃあ、頂きます」

「えぇ。 ……お口に合いますでしょうか……」


 味見はしたとは思うが、セシリアの表情は不安の色が見えた。

 箸でハンバーグを切り分け、ソースを少しかける。

 それを一口頬張り、咀嚼すると口一杯に肉汁が広がる。

 表面は確かに焦げているのだが味に関しては美味しく、問題なかった。


「ど、どうでしょうか……?」


 祈るように胸の前で手を組むセシリア。


「美味しいぞ? 確かに焦げはあるが、一流料理人目指すとかじゃなければ、愛情さえあれば問題ないさこれがな」

「良かったですわ♪ ……愛情なら、いっぱい注いでいますもの。 誰にも負けませんわよ♪」


 眩しい笑顔を見せたセシリアは、俺の向かい側に座る。


「セシリアは食べないのか?」

「後で食べますわよ? 貴方が美味しそうに食べていただけてるのがわたくしにとっては一番嬉しいですもの♪」


 訊いてるとそれだけで顔が赤くなりそうだ。

 人参、白ご飯と食べる俺をニコニコ笑顔で見つめるセシリア。


「そういや、学食カフェなのに誰もいないな」

「えぇ。 カフェに居る職員さんはお休みですもの。 とはいえテーブル等は開放されてますので食事をするのに困ることはありませんわ」


 職員もそうだが生徒がいない――まあここは少しグラウンドから離れてるから可能な限りはリラクゼーション・エリアかグラウンド辺りなのだろう。


「まあセシリアと二人っきりってのも嫌いじゃないしな」

「あ……。 わたくしも、ですわよ?」


 ポッと頬を桜色に染めるセシリア。

 いつまでも初々しい反応は可愛く見える。

 二口、三口とハンバーグを食べていく――それを幸せそうに眺めるセシリア。

 だがここで携帯が震える、バイブレータ機能が作動した。

 着信ではなくメールだった。


「……そろそろ時間か」

「え? ……もう、時間ですの?」


 表情に陰りを見せるセシリア。

 俺は椅子から立ち上がり、セシリアの隣へ行くとそのまま立ち上がらせるとそのまま抱き締めた。


「ひ、ヒルト……さん?」

「ん、何だかセシリアが寂しそうに見えてな」

「……うふふ、少しだけですわよ。 ……今は、貴方が抱き締めてくれましたもの」


 背中に腕を回し、胸板に顔を埋めたセシリア。

 そして、上顎を上げて瞼を閉じる――俺はそっとセシリアに口付けを交わした。


「……やはり良いですわね、キスって……」


 指で唇をなぞるセシリア――最後にもう一度、セシリアから口付けされ、俺は次の相手の元に向かった。


「……うふふ」


 短い時間だったが、セシリアにとっては午後から頑張れる活力となった様だ。 
 

 
後書き
セシリアの次は~誰かな~ 
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