IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【第562話】
唇に柔らかな感触がまだ残る中、俺は実況席へと戻っていく。
本来、運動会だと親御さんが見に来たりするのだが今回は急遽開かれたという事もあり、生徒の親は来ていない。
それは何だか寂しくも感じるが、急遽という事も事情の一つだろう。
一方、スタートラインに立つ四人。
「……スタートが肝心だな」
腕組みし、少し前方を見るラウラ。
隣のレーンの簪も小さく呟く。
「自然に……わざとらしくないように……」
そんな二人の様子を見るのは未来だった。
「……二人ともどうしたんだろ? ……うーん」
軽く首を傾げる未来、そして隣のレーンに居るエレン。
淡いエメラルドグリーンの髪が風に靡き、風を感じるように瞼を閉じたままだった。
「オンユアマーク……セット」
合図と共にクラウチングスタートの体勢を取る一同。
呼吸を整える未来とエレンを他所に、ラウラと簪は【目的】の事で頭がいっぱいになっていた。
「ゴー!!」
スタートの合図と共に響き渡るピストルの音、一斉に飛び出す四人。
だが、飛び出した未来とエレンはそのまま駆け抜けていくのだがラウラと簪に関しては誰から見てもわざととしか思えないような転け方をしていた。
「衛生兵、衛生兵は何処だ?」
「あいたたたぁ」
そんな見えすいた演技に騙される者は居なく、既にゴールテープを切った未来とエレンの二人も呆れた様に見ていた。
そして俺は――。
「……何考えてるんだか、あの二人は」
放っておく訳にもいかなく、わざと転けた二人の元へと近づく俺は、ラウラと簪の二人に対してデコピンをした。
「な、何をするヒルト!?」
「いたい……」
何故デコピンをされたのか理解してないのか抗議し、恨めしそうに俺を見る二人。
「ラウラ、簪。 何を考えてわざと転けたか知らないが、そんなことしても大半が呆れるだけだぞ。 それに、そんなことして本当に怪我をしたらどうするんだ?」
俺の言葉に、罰が悪そうな表情をする二人。
「む、むぅ……」
「……ごめん、なさい」
言われた意味がわかったのか、二人は反省したらしく頭を垂れた。
誰から見てもしょんぼりしてる二人に俺は更にデコピンを繰り出す。
「ぅっ……っ」
「ぁぅっ……」
二人揃っておでこを押さえる、そんな二人に俺は両手を差し伸べた。
「ほら、立ったらゴール目指しな。 んで次の競技、遣りきればいいさ」
「う、うむ!」
「が、がんばるっ」
差し出された両手を掴む二人を勢いよく起こすと、二人は其処から走り始めた。
暫くすると二人もゴール――結果にしては散々故に、ここから挽回するしかないだろう。
百メートル走は続き、魅力溢れる女子一同の汗を流し、疾走する姿は綺麗だった。
百メートル走、全体的な活躍は鈴音の桃組が一位、二位がエレン率いる翠組、三位は未来の白組だった。
最初の種目も終わり、次は第二種目、本来なら陸上競技としては四〇〇メートル走や砲丸投げ、クラス対抗リレー等があるがIS学園ではそれらの競技はなかった。
そして、次の準備の為上級生がグラウンドに出て、競技に必要な機材の設営をし始める。
少し時間も出来た為、俺は一旦水分補給しようと学園側にある自販機へと向かった。
「ヒルトさん、少しよろしいかしら?」
「え?」
自販機向かう途中、呼び止められ振り向くとセシリアが居た。
「あ、構わないぞ」
「では……此方に来てくださいまし」
俺の手を取り、セシリアは人が来ない所まで俺を連れてきた。
そして――セシリアはギュッと俺に抱きつくと背中に腕を回して見つめてきた。
「ヒルトさん……あまり、わたくしにヤキモチ妬かせないでくださいまし……」
「え? ……もしかして、さっきのシャルの件か?」
「………………」
小さく頷くセシリア、お互いに体操着――セシリアも普段とは違ってブルマ姿だ、密着してくる彼女の肢体に俺は反応する。
「……ヤキモチ妬いたのか?」
「そ、そうですわよ……?」
「そっか……。 どうすれば、いい?」
本当はわかっていた、だけど俺は敢えてセシリアから言わせたかった。
瞳を潤ませ、セシリアは俺を見つめたまま腰に回した腕を今度は首に回し、彼女の豊満な乳房を俺の胸板に押し付けてきた。
「意地悪ですわ……。 解ってらっしゃるくせに……」
指で俺の唇に触れ、ソッとなぞると上顎を上げ瞼を閉じ、セシリアは唇を突き出した。
俺もそれに応える様に、セシリアの腰に腕を回すとそのまま唇を重ねる。
誰も来ない――誰も見ていないというその状況下、俺とセシリアは互いに何度もキスを繰り返し、身体を密着させ、愛撫するように互いに触れ合う。
「んは……っ。 ……こ、これ以上致しますと、わたくしも流石に我慢が難しくなりますわ……」
名残惜しそうに唇を離すセシリアは、頬が真っ赤になっていた。
だが、満足したらしく、体操着越しに俺の胸板に触れ、爪先立ちしてソッと耳元で囁いた。
「ヒルトさん……ありがとうございます。 こうして貴方と過ごす時間がわたくしにとってかけがえのない時間ですわ……」
「……俺も、こうしてセシリアと過ごすの、好きだぞ」
「ヒルト、さん……」
嬉しそうにはにかみ、目を細めるとセシリアの方から唇を重ねてきた。
いつもと違う熱のこもった口付け――唇が離れると、セシリアは。
「そろそろ戻りますわ。 ……次の競技が始まりますもの」
「もうそんな時間か……?」
「えぇ。 ……うふふ、何だかヒルトさん、凄く名残惜しそうですわね?」
密着したままのセシリアは嬉しそうにそう言った。
俺はそれに応えず、頬を指で掻くとクスクスと微笑み――。
「ヒルトさん、先に戻りますわね? ……もしヒルトさんがこの続きを御所望でしたら、時間がある時に……」
そう言って首筋に口付けを落としたセシリア――言ってる意味は多分【それ以上】の事だろう。
俺から離れると、セシリアは軽く手を振り、其処から走って出ていった。
俺も間を開けて出る――水分補給と思ったが、時間もなさそうだし俺はそのまま戻ることにした。
後書き
ちょいとセシリアと……( ´艸`)
何だかんだでわりとセシリア書いてしまうが、書いてると気付いたらセシリアが可愛くなってる気がする
ページ上へ戻る