IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第554話】
前書き
四月初更新
次の日の放課後、バス停にバスが停まるとドアが開いた。
「買い出し班、かぁ……」
バスから降りた俺は一人ごちる、その後ろから更に降りてくるのはラウラだった。
「ヒルト、不満だったのか? ……私は嫁と二人っきりだから嬉しいのだが……」
そう言い、顔を覗き込む様に見上げるラウラ、俺自身ラウラと二人っきりが不満では無いことを伝える。
「いや、二人っきりが不満じゃなくて、買い出しに駆り出されるとは思わなかったからな。 ……てかラウラ、俺に付き合う必要はなかったんだぞ? 良かったのか?」
「む? ……何を言うか。 嫁一人では大変なのは私でも分かる。 故に手伝うのだ。 ……で、では行くとしよう」
そう言い、僅かに顔を横に逸らして控えめに左手を差し出してきた。
その手を取り、繋ぐとラウラは満足そうに小さく頷き、俺に手を引かれて歩き始めた。
バスを降りた先にあるステーション・モール、夕方という事もあり様々な人たちが居た。
買い出し用のメモをポケットから取り出し、見る俺――。
「……あんパン五〇個? 様式美とはいえ、ベタな競争を入れるんだな、運動会……」
そう呟く俺に反応したラウラ。
「あんパン? ヒルト、何故あんパンを注文するのだ? それに五〇個では学園生徒全体に行き渡らないではないか」
そう告げるラウラ、無論生徒に配るには数が足りなさすぎるのは明白だ。
俺は何故あんパンを注文するのかをラウラに説明した。
「昔から運動会にはパン食い競争というものがあるんだよ」
「む? パン食い……?」
「あぁ。 高い所の棒から吊るしたあんパンを手を使わずに口だけで咥わえてゴールへ向かうんだ」
「む? ……ヒルト、その競技に何か意味があるのか?」
「さあ? よくわからんが……無意味かもしれないが、昔からある様式美って奴だろうな、これが」
今一納得していない様な表情のラウラ、その手を繋ぎながら俺はステーション・モール内のパン屋へと入った。
夕方だからか大抵のバスケットは空の状態だった。
「すみません、パンの注文良いですか?」
そう言って俺はあんパンを発注し、IS学園へと発送してもらう様に注文すると、一礼してパン屋を後にした。
「ヒルト、他にもあるのか?」
「んと、鉢巻きと軍手だな」
「成る程、それらも学園へと発送するのだな?」
「うん」
そう頷くとラウラは控えめに俺に聞いてきた。
「……ヒルト。 それらの注文が終わったらその、付き合って……もらいたい所があるのだが?」
「ん? 構わないぞ」
断る理由もない俺がそう言うや、表情が綻ぶラウラ、だが周囲に人が居る為か直ぐ様表情を戻した。
「で、では共に行くとしよう。 ……抹茶カフェで新メニューが出たとクラスで話題になっていると聞いてな」
人が行き交うモール内を歩く俺達二人、こうして改めてラウラの銀髪を見ると実は美冬が妹ではなくラウラが実の妹なのではと思ってしまう。
無論そんな訳ないのだが――と、目的の抹茶カフェへと到着した。
店舗前の幟に新メニュー抹茶シェイク販売中と書かれていた。
「新メニューって抹茶シェイクなんだな、ラウラ」
「そ、そのようだな」
「そういやさ、ここ最近秋でもシェイク系あるが……やっぱり秋なのに暑いのも理由の一つなのかもな」
「あ、ああ!」
心ここにあらずといった感じのラウラ、首を縦に何度も振るその姿が何だか面白く、思わず吹き出してしまった。
「ハハッ、どうしたんだよラウラ。 柄にもなく緊張してるのか?」
「べ、別に二人きりで緊張してる訳ではないのだ! ば、バカ者!」
緊張してる訳ではない、だけどヒルトと二人きりで出かけるという経験が少ない為か少し強がるラウラ。
繋いでいた手を離し、店内へと足早に入るラウラ、自動ドアが開くその後に続きながら俺は――。
「慌てるなって、抹茶シェイクはちゃんと待ってるさ」
店内はそれほど混雑していなかった、店内には落ち着いた音楽が流れている。
「いらっしゃいませ、ご注文は御決まりになりましたか?」
人の良さそうなお姉さんがそう告げると俺は――。
「あっ、抹茶シェイクを二つお願いします」
注文をするのだが店員のお姉さんは申し訳なさそうな表情をしながら頭を下げた。
「すみません、抹茶シェイク好評で残り一個分しか作れないんです……」
「そうですか。 じゃあ抹茶シェイク一つとアイス抹茶ラテを一つお願いします」
「はい、ありがとうございます~」
手早くレジを打つ店員、ラウラが財布を取り出す前に支払いを済ませた。
それから直ぐに抹茶シェイク及びアイス抹茶ラテがトレイに乗せられた。
それを受け取る俺はラウラを見て――。
「じゃあ何処に座る? 窓際も良いし、二階のテラスでもいいが」
「な、ならばヒルト。 窓際のあのテーブルで私は構わない」
指差す先にあるテーブルは二人掛けだった。
頷くと俺はラウラを誘い、互いに差し向かいで座り、座ったラウラに抹茶シェイクを渡す。
「ほら、ラウラ」
「ぅ、ぅむ。 ……そ、そうだ、代金は払うぞ」
そう言ってラウラは財布を取り出そうとするが、俺はそれを制止した。
「構わないさラウラ。 ラウラには世話になってるんだし、気にするなよ」
「だ、だが……ヒルト。 ……織斑と違って、代表候補生に選ばれなかったではないか。 金銭面的な問題は――」
「これぐらいは問題ないさ、これが」
代表候補生――今朝の話だが一夏が日本代表候補生に選出された。
とはいえそれは仮の代表候補生という前の美冬の状態に近かった、だがそれでも支給金が支払われてる以上ほぼ当確だと思われる。
俺に関しては特に何も言われていない、相変わらず世間から評価はされてないのだろう。
既に今更だし、俺も何も思わないことにした、考えるだけ無駄でしかないからだ。
「す、すまないヒルト。 御馳走になる……」
「そんな畏まるなよ、気にせずに飲めって」
いつになくラウラが畏まるその姿が珍しいのだが、俺自身特別な事をしているわけではない。
そんな事を考えながらラウラを見ていると抹茶シェイクに口をつけたラウラ。
一口それを飲むや驚きの表情に変わっていった。
「う、美味い! なんという美味さだ! ……ん……く。 これは……蜂蜜か? それにあんこ……?」
一口、また一口と飲んでいくラウラ、見ているとやはり美味しいようだ。
「良かったなラウラ、そんなに美味しかったなら一つだけでも間に合って良かったよ」
「あ……ぅ、ぅむ。 ……せっかくだヒルト、少し飲んでみるといい」
そう言ってシェイクを差し出してくる、今ストローに口を着けたラウラ――間接キスになるが、何度もキスをしたどころか、既に交わっているのだから今更気にしても仕方ない。
ストローを咥わえ、一口シェイクを飲む俺――。
「ん、確かに美味いなこのシェイク」
「そうだろうそうだろう。 ……で、では」
おずおずとシェイクを戻し、残りを飲んでいくラウラ。
心なしか頬が僅かに紅く染まっている様に見えた。
ふと窓から外を眺めていると向こう側の歩道から見知った顔が見える。
「ん? ……シャルと美冬に美春? 後は……エレン?」
学生服を着ていて目立つ一同、特にシャルとエレンは金髪に緑髪と目立つからか道行く男女問わず視線が移る。
とはいえ美冬に美春の二人も容姿は整っているから彼女達も見られてはいる――と、ラウラが慌てた様子で俺に言った。
「ひ、ヒルト。 ここはまずい、出るぞ」
「な、何が不味いんだよラウラ――」
「ば、バカ者! せっかくの二人きりなのに外のシャルロット達と鉢合わせたら……」
なるほど、ラウラ的には俺と二人きりになれる事自体あまり無いから見つかりたくないのだろう。
俺としても、見つかって皆にやいやい言われるのもキツいのでラウラに同意し、アイス抹茶ラテを残してカフェから立ち去った。
後書き
三末付けで職場退職、とりあえず人手不足なのに行くところがないとかで実質の派遣切りに近い形での離脱に
まあ賃金少ないしキツい職場だったから構わないかな
とりあえず二週間は休みますん
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