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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第247話】

 シャルと近所のスーパーまで買い出しに出掛け、現在スーパーの中。

 夕食時ということもあってか、主婦が多数子供を連れて買い物をしていた。

 お菓子売り場から一歩も動かない子供も居て微笑ましい――。

 買い物カートにかごを入れ、押しながら進んでいるとシャルが――。


「……何だか、新婚さんみたいだよね?」

「ぶはっ!? ……い、いきなり何を言うんだよ、シャル」

「あははっ♪ だってそう思ったんだもん♪」


 楽しげに笑うシャルは、カートを押す俺の隣を歩く。

 ……周りの夫婦なども、そんな感じで歩いてるのを見て参考にしたのだろうか。


「……き、今日は寝かせないぞ……」

「……え?」


 一瞬何を言われたのか解らず、顎に人差し指を当てて考えるシャル。

 ――だが、言葉の意味を理解すると完熟したリンゴの様に赤く染まった。


「ば、バカッ。 ……ヒルトのえっち」

「……冗談だって。 シャルが新婚さんみたいって言うからな」

「……だ、だってそう思ったんだもん。 ……嫌だった?」


 不安を感じたのか陰りのある表情で俺を見上げるシャル。


「……嫌な訳ないだろ。 ……逆に俺の事、嫌にならないのか?」

「え? ……ならないよ。 好きだもん……ヒルトが」


 赤く染まったまま見上げるシャルに、ドキドキしつつ――。


「……あ、ありがとな。 ……ちゃんと答えを出さなきゃとは思ってるんだが――」

「うん。 ……ごめんねヒルト。 でも、前にも言ったけど……僕は君の事、諦めるつもりはないからね? えへへ」


 決意の表れなのだろうか、真っ直ぐな眼差しには一種の信念みたいなものを感じ取った。

 その後直ぐに表情が和らいで笑顔を見せるのだが――やはり、何処かで俺は傷付けてるんだろうなと思うと胸が痛い。

 ――と、シャルが突如。


「ヒルト。 ――えいっ」

「ん? ……何だよ、いきなりほっぺをおもいっきり突いて」


 むにゅぅっと、突き刺さるぐらいにシャルが指で俺の頬を突いた。


「ふふっ、ヒルトは直ぐに思い悩んじゃうんだもん。 ……こんなことで傷付かないよ、僕は♪ ほら、買い物しないと♪」


 満面の笑顔のシャルを見ると、俺は向日葵を思い出す。

 もしも彼女に花を贈る機会があるならば、薔薇よりは向日葵の方が彼女に似合うだろう。

 ……まああくまでも俺が思ってる事なんだがな、これが。

 カートを押し、必要そうな野菜をかごにどんどん積めていき、俺とシャルは雑談しながら買い物をしていった……。


――自宅内リビング――


 買い物を終えて帰ってきた俺とシャルは、早速リビングに買ってきた食材を置くと、直ぐに【全員】がキッチンに入るという――。

 全員とは、母さんも含めた女子全員だ。

 まあ確かに七人行き交うのに不自由しない設計にはなってはいるが――。


「んっ……しょ。 ああもうっ……このっ、ジャガイモっ、切りにくいっ」


 鈴音のそんな声が聞こえ、視線を移すと切りにくいのか、ジャガイモの皮を実ごと削ぎ落とす姿が――。

 確か、彼女は中華料理屋の看板娘だよな……?

 その隣のセシリアは、本を片手に持ちながら何やらハッシュドビーフを作りたいようだが――まだセシリアには難易度高い気がする。


「……本当にこれで大丈夫なのかしら? 写真と色が違います……。 やはり赤色が足りない気が――」

「セシリア? そうやって色々継ぎ足すと料理がカオス化しちゃうからダメだよ?」


 セシリアの様子を見た美冬が制止すると、あまり納得がいかないのか微妙な表情だった。

 ……美冬が作ってるのはハンバーグとカレーだ。

 ハンバーグは現在、ミンチを捏ねて先に刻み、炒めた玉ねぎ、パン粉やケチャップ等を入れてボールの中で捏ね続けている。


「シャルロットは何を作っているのだ? 焼き鳥か?」


 そんな声が聞こえ、ラウラとシャルの二人に視線を移す。


「違うよ、ラウラ。 これは唐揚げだよ。 今、下味をつけてるところなの」


 言いながら唐揚げの下味をしつつ、直ぐに揚げる準備が出来るようにてきぱきと動くシャル。


「ふむ、そうか」


 そんなシャルを見つつ、ラウラは何と大根の桂剥きを見事に行っていて、手つきは手慣れたものだろう。

 だが、使ってる刃物が何処から取り出したのかわからないサバイバルナイフで行ってるのは色々まずい気がする。


「うふふ、ラウラちゃんって凄いわねぇ♪ 軍で桂剥きを覚えたのかしらぁ?」


 母さんも鮭の煮付けを作りながら、見事な桂剥きに感心してラウラに聞いたようだ――。


「み、見よう見まねです。 その……この前、テレビの料理番組に出ていたコックがやっていましたので、私にも出来ると思い、真似をしてみました」


 母さんに注目されたからか、敬語で答えるラウラは少し緊張している気がする。


「ま、真似しただけでそこまで鮮やかになるのっ!? ……はぁぁ、私なんかまだまだ……」


 未来は驚きつつも、ポテトサラダを作り、更に余ったジャガイモで粉吹き芋を作っていた。

 家にあるIHがこれほどフル稼働で動くのは初めてかもしれない。


「ん。 ナイフの扱いには長けているので。 教官からも、ナイフの扱いは誉められました。 ……ジャングルでは、木を加工出来ないと道具を作りにくいと教わりましたので」

「うふふ。 あの人がねぇ~。 ……ところでラウラちゃん? 貴女のメニューは何かなぁ?」

「えっ……と。 おでんです」


 言いながらも桂剥きを続けるラウラは、急に皆が黙ったのが気になってかもう一度――。


「おでん……です」

「ら、ラウラ? 二回言わなくてもいいよ……。 でも、あれって冬の料理じゃないの?」


 下味をつけていたシャルが、やはり困った笑顔でラウラに言うのだが――。


「シャルロット、夏に食べてはいけないという決まりはない」


 言い切るラウラの男らしさに感服しそうになるが、女の子なのだから男らしさって表現もどうかと思ってしまう。


「ま、まあそうなんだけど。 ……ヒルトって、唐揚げどういう風なのが好きなんだろ? 一夏は大根おろしを混ぜた唐揚げが美味しいって言ってたけど……」

「お兄ちゃん? ……お兄ちゃんなら塩唐揚げに柚子胡椒、または少し醤油入れて作った唐揚げにレモンかけて食べるのが好きだよ? 隠し味で拘るより、そういう方が好きだから」


 そんな俺の唐揚げ情報を聞き、シャルはぱぁっと花開く様な笑顔で――。


「あ、ありがとう、美冬♪」


 そんな美冬はハンバーグの形を作り、フライパンで焼いていた。

 この辺りから美味しそうな料理の匂いが漂ってきて、俺のお腹の虫は鳴るばかり。

 ……時折、ダン! という一定のリズムで切る音が聞こえてくるが……その音の犯人はラウラで、正確に大根を分断しているのだが目が少し虚ろなのが怖い。

 ……ともかく、待つのが少し暇になった俺はテレビを付けて待つことにした……。 
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