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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第248話】

 テレビをつけると、いきなり飛び込んだのは何処かのアイドルだった。

 ……俺は芸能関係にそれほど詳しい訳じゃない。

 バラエティーを見ない訳ではないが、皆おんなじような顔や衣装、口調なのでいまいち印象に残らないのだ。

 今テレビに映るアイドルも、正直覚えることはないだろう。

 ……だが、何でだろう?

 この子は何処かで見た気がしないでもない。

 ……まあいいか、思い出そうとしても思い出せないなら有象無象のアイドルの一人って事だし。

 手元のチャンネルで番組を変え、ニュースに変えると早速出たのが一夏のニュース。

 もう大分使い回されてる映像を何度もコメンテーターがよいしょしたり、次のモンド・グロッソが楽しみですねといった感じに女子アナが言ったりと謎の特集を行っていた。

 ……政府もマスコミも繋がってるのかと思うぐらい、一夏メインだな。

 まあ、俺に注目されるよりは気が楽なんだが。

 またチャンネルを変えるも、バラエティーかニュース(IS特集メイン)か料理番組か釣り番組しかないという罠。

 結局つけても暇に変わらず、電源を切るとまたキッチンを見てみる。


「ん~♪ ふんふ~ん♪」


 野菜を切り終えた鈴音は楽しそうに鼻歌を歌いつつ、野菜を炒めていた。

 しかし、実ごと皮を切った為、具材が少し小さくなってるのが悲しくなる。

 セシリアも、未来のサポートで何とかハッシュドビーフが出来たのか皿に装っていた。


「うふふ。 流石はわたくしですわね、何をやらせても上手くいきますわ……♪」

「……セシリア、みぃちゃんのサポートも忘れちゃダメだよ」

「う……。 わ、わかってますわ……。 ……次こそは一人で成し遂げてみせます」


 美冬の指摘に、ぎくりとしつつも拳を作り、意気込むセシリアには好感が持てる。

 何にしても努力をする奴は基本的に好きだからな、俺は。

 美冬も八人分のハンバーグを焼き終え、皿に盛り付けつつソースもいつの間に作っていたのか、それをかけていた。


「ん……えへへ」


 そんな声と共にカラッと揚げた唐揚げの油を取るシャル。

 上手く作れたからか、いい笑顔だった。


「うふふ。 どれも美味しそうねぇ~。 皆、いつでも家にお嫁さんに来れるわねぇ~」


 楽しそうな声と共に、鮭の煮付けを盛り付ける母さん。

 ヤバい……腹が鳴りまくりだ。


「……こんなものか」


 グツグツと煮えるおでんを見、満足そうに頷くラウラ。

 夏におでんも悪くはないな……。


「……私だけ何だか簡単に作っちゃったな。 ……今度はもっとちゃんと作ろうっと」


 そう言って人数分のポテトサラダを盛り、粉吹き芋も別の皿に盛り付ける。

 俺はシンプルながらもこの粉吹き芋が好きだったりする。

 まあ塩胡椒かけて食べたりもするが。

 最近のだと粉を吹かない見崩れしにくいジャガイモが多いから大変だ。

 そうこうしている内に、リビングのテーブルを埋め尽くす勢いで各人が作った料理の皿が並べられていく。


「へへっ、これだけの料理が揃うってのも壮観じゃない、お兄ちゃん?」

「……まあな。 学園のテーブルより大きいからな」


 まるで一種のパーティーの如く――は言い過ぎかもしれないが、それぐらい見事なほど料理が並んでいた。


「うふふ、ヒルトさん。 わたくしが作ったハッシュドビーフ、どうぞ召し上がってくださいな♪」


 見た目も香りもハッシュドビーフそのもので、未来のサポートがあったとはいえ流石にセシリアの吸収力は凄まじい。

 ……アレンジしたり、色が違うからと変に付け足したりしなければ彼女も普通に料理が作れるという事が証明されたと言っても良いだろう。

 ……一時の優しさで不味いと言わずに美味しい美味しいって食べ、後で真実に気付くよりはやっぱり言って良かったと思う瞬間だ。

 ……一夏には酷い奴だなって言われたが……、結局どちらが正しいか何てのはセシリアが決めることだからな。


「おでんというのは中々に珍妙だな。 ……バーベキューによく似ている。 そうは思わないか、ヒルト?」

「……その刺し方だと完全にバーベキューだがな。 てか漫画みたいなおでんだな」


 上から大根、卵、竹輪、蒟蒻を一本の長い串に刺しているのだが。

 確か煮込んでた筈なのに焼き色がついた具材は何事かと思う。

 ……もしかすると、俺がニュース見てるときにこっそりバーナーで炙ったのだろうか?

 とりあえずおでんを元に戻すと、母さんの作った鮭の煮付けを見る。

 鮭の煮付けという物自体、食べたことがないのだが……。


「うふふ。 初めて挑戦したから上手くいったかわからないけど、味見したら美味しかったから大丈夫よぉ♪」


 自信たっぷりに胸を張る母さん。

 ゆったりした服ながらもぷるんっとたわわに実った乳房が弾んだ――母親ながら、目の毒になる気がしなくもない。

 それはそれとして、鈴音が作った料理を見ると――。


「ふふん。 どうよヒルト。 あたしの肉じゃが、美味しそうでしょ? 感謝しなさいよ、あたしの手料理が食べられるんだから」


 無い胸を張り、えへんと自信満々の鈴音だが――。

 肉じゃがのジャガイモはかなり小さく、ブロック状のビーフよりも小さいとは……。

 ……煮くずれではないのだが……見た目がちょっと悪いな。

 ……だが匂いは美味そうなので、これは多分見た目はダメ系なのだろう。

 シャルの唐揚げの山に視線を移すと、色合いも鮮やかでこんがり揚がっていた。

 ……馬車馬の如く食べる俺にはありがたい一口サイズだったりする。

 この辺りはシャルが皆にも食べやすくする為の配慮だろう……相変わらず、周りの事を考える子だなと思い、感心する。

 そして未来の作ったポテトサラダと粉吹き芋。

 シンプルながらもこれも料理には欠かせないだろう。

 美冬のハンバーグも、実に美味そうな香りが鼻孔を擽る。


「んじゃ、皆で食べるか? 待ってる間腹と背中がくっつくかと思ったよ……」

「あはっ♪ お兄ちゃんったら、いっぱいあるからたんと食べてね♪」


 そんな俺を楽しげに見る美冬は、俺の隣に腰掛けた。


「うふふ、じゃあお母さんは飲み物を用意しようかしらぁ? セシリアちゃん、手伝ってくれる?」

「えぇ、勿論ですわお母様♪」


 母さんがセシリアに手伝いを呼び掛けると、嬉々として一緒に飲み物を用意するセシリア。


「じゃあ、あたしは小皿出そうかな。 何処にあるの、ヒルト?」

「あ、私知ってるから教えるよ?」

「そういえば未来ってヒルトの幼なじみだったわね。 ……少し、あんたが羨ましい」


 小皿を取りに向かった未来の後ろについていく鈴音。

 最後の方に言った言葉は聞き取れなかった……。


「……こうやってお互いに作った料理を食べるというのは、なんというか不思議な気分だな。 ……悪くはない、なんというか……心地好いものだ」

「そういう時はね、楽しいって言うんだよ。 ラウラ」

「……ふむ、そうか……。 ……ふふっ」


 そう微笑を溢すラウラを見て、シャルも一緒に笑顔になる。

 ……楽しい、そうだな……。

 こうして大人数で囲む楽しさというのは何だか久しぶりな気がする。

 それも、家という安らぎの空間で……。

 瞼を閉じ、皆の楽しそうな声を聞けるというこの環境に感謝しないといけないかもしれないな。

 全員が着席するや、母さんが――。


「じゃあ皆、ご飯を食べましょうかぁ?」


 ふわふわとした声がリビングに響き、母さんが先に言葉を口にした。


「いただきます」

「「「いただきます」」」


 皆が一斉に言い、夕食が始まった。

 会話も弾み、皆と食べる夕食の美味しさを噛み締めながら俺はいつもの様に馬車馬の如く、料理を平らげていった――。 
 

 
後書き
ここで四巻は終わりっす

さて、オリジナルにするか五巻にいくか……。 
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