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Fate/imMoral foreignerS

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始まりから夏休みまで
  燃える生贄人形と戦う話

 
前書き
どうも、クソ作者です。
この話が終わると、とりあえずは一区切り(一学期から夏休みまで)つくという形になります。
というより、真面目な話は終わって次からはエッチなやつ書くぞって話です。
一応このウィッカーマン。第一部のチャプターボス的なものになりますね。
さて、ウィッカーマンなのですがこれは前回記した通りサーヴァントでもないしましてやクー・フーリンの宝具によって出てきたものでもありません。
察しのいい読者の方なら気付いた方もいるかもしれませんが、ここでネタバラシしてしまうのはご法度。
それでは本編、どうぞ。 

 
「なんだ…こいつ…。」

僕たちの目の前に現れた、巨大な木の人形。
ウィッカーマン。
空洞の胴体に人や家畜を入れ、神様のための生贄として共に燃やす人形って聞いたことはあるし、何よりキャスターよクー・フーリンの宝具だ。

10メートルは超えるだろうそれは木の身体をきしませ、まるでこちらを見下ろすかのように身をかがめる。
そして次の瞬間。

「来るぞ!!」

ウィッカーマンが片腕を振り上げる。
同時に点火。炎に覆われた巨大な腕が地面に叩き付けられた。
僕達はなんとか避けられたが…そういえば先輩は?

「「先輩!!」」

僕、そして近野さんが先輩と叫ぶのはほぼ同時だった。
先輩がいたのはずっと向こう。
無事…ではなさそうだ。

「先輩!!しっかりしてくだ」
「どけ!!」

倒れた先輩に駆け寄るが、同じく走り出した近野さんに突き飛ばされ、僕は転ぶ。

「先輩!!大丈夫ですか!?」
「ちょっと…やばいかな?足挟んじゃって…。」
「!!」

顔を顰めている先輩。
確かに、片足が瓦礫に挟まれ動けないでいた。

「今助けます!!」

運動部に所属していたとはいえ、近野さん1人では先輩の足を押し潰している巨大な瓦礫をどかすのには到底無理だった。
どれだけ力んでも、瓦礫はビクともしない。

「この…っ!」
「僕もやるよ!!」
「お前はいい!!どっか行ってろ!!」

僕も手伝おうとはするが、案の定怒鳴られ追い払われそうになる。
でも、今はそんなの関係ない。

「君と同じだ!!」
「…は?」
「君と同じで、僕だって先輩にはたくさんお世話になったんだ!!嫌な時も!辞めたくなった時も!いつも先輩が助けてくれた!!そんな恩人を見捨てるなんて僕には出来ないから!!」
「…。」

瓦礫の名から鉄筋を見つけ、それを間に差し込んでてこの原理でどかそうとする。

「お前…。」
「葛城!!逃げろ!!」

必死でどかそうするも、やっぱり非力な僕ではどうにもならない。
そして背後から聞こえた暮馬くんの叫び声。
振り向けばそこには、ズン、と思い足音を立てて接近するウィッカーマンが。

「…!!」

でも、そんなこと知らない。
一刻も早くこの瓦礫を退かすんだ。

「少年!もういい!!私なんかにかまわなくていいんだ!!」
「いえ…ダメです!!」

振り上げられる腕。
でもここで先輩言う通りにするわけにはいかない。
そのときだ。

「うらぁ!!」

ウィッカーマンの剛腕は、僕達に届く少し前で停止した。

「…!!」
「ったく心配したんだぜマスター!何も言わずにどっか行くもんだからよ!!」

止まったんじゃない。受け止めたんだ。
その燃え盛る腕を槍で受け止めたのは、近野さんのサーヴァント。

「森くん!」
「おうよ!次どっか行く時はオレに行き先教えてからにしろよな!!殿様守れねぇとか一生モンの恥だからよ!にしてもあっちぃなテメェ!!」

ウィッカーマンの腕を弾き、よろけたところでさらに追い打ちをかける。

「ぶったぎれろや!!『人間無骨(にんげんむこつ)』ッ!!」

それは人でなくともいとも簡単に腕を叩き斬った。
ウィッカーマンは多少怯み、数歩後ろに下がるが近野さんのサーヴァント、森長可は好機とばかりにぶつかって行く。

「どうしたどうしたァ!文字通りの木偶人形ってかァ!?」

突く、薙ぎ払う。
例え火が己の身体に燃え移ったとしても、バーサーカーは気にすることなく突っ込んでくる。

「早く!森くんが何とかしてるうちに…!」
「え、あ、うん!」

近野さんにそう言われ、また鉄筋に力を込め、瓦礫を持ち上げようとする。
しかしやはりというかビクともしない。
さらに隣にいた近野さんもまた、同じようにてこの原理で鉄パイプで瓦礫を浮かそうと悪戦苦闘している。

「このまんまじゃダメだ!せーので同時にやらないと…!」
「分かった。気に食わないけど先輩の為だから。お前に合わせる。」
「…うん!」

がむしゃらにやっていたとしてもダメだ。
2人いるのだから、2人で力を合わせないとこの瓦礫はどかせられない。
僕がそう提案すると、近野さんは嫌そうな顔をするものの、渋々了承してくれた。
てっきり、お前の提案なんかのむもんか。とか言われそうかなと思ってたけど…。

「よし…せーのっ!!」

2人同時に、全体重をかけて力を入れる。
するとどうだろう、1人では全く動かなかった瓦礫が

「…動いた!!」

僅かだが浮いた。
その内に先輩はさっと足を抜き、なんとかして窮地を脱することが出来た。

「先輩!?立てますか!?」
「ごめん…足折れてるかも…上手く立てないや。」

けど安心するにはまだ早い。
田所先輩の挟まれていた足は折れているらしく、1人ではまともに立てない。
なので僕達が左右の肩を持ち、とりあえず安全な所まで連れていくことにした。

「はは…何から何まで迷惑かけちゃって…ごめんね。」
「普段は僕がいっつも迷惑かけてるんで…大丈夫です!!」

血の流れている先輩の足は非常に痛ましかった。
本人はヘラヘラとしているけどきっとすごく痛いはずだ。

「ところで…これは夢かな少年?」
「えっ?」
「なんかでっかい燃えてるのがいて、それを魔法使いみたいな人が空飛んで戦って、戦国時代から来たみたいな人が槍持って暴れてる。いや、痛くないからこれは現実なのかな?」
「詳しいことは後で!先輩は自分の身体の事だけ考えてください!!」

説明するとなると、ものすごく面倒くさいことになる。
近野さんはその一言で片付けると足を早めた。

「今は森くんが引き付けてくれてる。それでも時間の問題だ!お前!もっと早く歩け!!」
「ご、ごめん…!」




一方その頃。

「なんだこいつ…調べれば調べるほどまるで分からないぞ…!!」

戦いの中でウィッカーマンについて分析していたキルケーだが、その正体は未だに謎のままだった。

「どういうことだ?」
「霊基がない。纏っていたのは偽装と言うにはあまりにもお粗末な霊基だったんだ!それでいてこいつは"生きてる"」
「生きてる…?」
「ああ、これでひとつの生物として完成しているんだ。生贄の為に用意された人形。ウィッカーマンという生物としてね…!」

魔術で迎え撃つも、ウィッカーマンには効いているのかいないのかまるで分からない。

「まぁともかく、こうして乱入してきたバーサーカーが暴れてくれているんだ。私一人ではどうしようかと思ったけど一安心だ。あんな奴、さすがの大魔女でも骨が折れるからね。」
「そうか、」

バーサーカーによってウィッカーマンは押されている。
これなら安心かと思われたが、そこでキルケーの表情が一瞬曇った。

「…?」
「どうしたキルケー?」
「あいつ…何か変だ。」

バーサーカーによって切り刻まれるウィッカーマン。
このままならゴリ押しでいけるんじゃないかと考えもあったが、現実はそう甘くはない。

「うお!?あっちぃ!!」

ウィッカーマンの全身から、突然炎が吹き出した。

「うははははは!!なんだコイツ!これじゃロクに近づけねぇな!!」

吹き出した炎はやがて体を包み込み、それは最早木の人形というよりかは炎の人間だった。
数十メートル離れた友作や暮馬でも感じる、ごうごうとした暑さ。
おそらく接近戦を仕掛けている森長可の感じる温度はひとたまりもないものだろう。

「魔力だ。あいつ、まだあれだけの魔力を温存していたんだ!!」
「なんだって?」

燃え盛るウィッカーマン。
さらに彼は腹の扉を開けると、そのまま森長可をスルーしてどこかへと歩き出す。

「おい!無視すんじゃねぇ!!」

目指すのはただ1つ、そう…。

「来てる!!」
「そんなこと分かってる!!」

田所先輩を連れて逃げている、あの2人だ。

「こいつで!!」

キルケーは再び、鎖による拘束を試みる。
しかし、鎖で縛ることが出来るのだがそれは数秒と立たず派手な音を立ててちぎれ飛んだ。
ウィッカーマンの力が純粋に強過ぎるのだ。
それに、魔術でこちらに興味を引かせようとする事もしようとはしたのだが、どの魔術もまた、ウィッカーマンに当たる寸前にジュウと音を立て消えてしまうのだ。

「だめだ!あちぃ!おい魔法使い!!なんとかならねぇのか!?」
「今やってる!!」

まともに近付けず、武器を震えば炎のカウンターがやってくる。
こちらも手を出せないでいた森長可はキルケーに救援を求めるが、どうしようもできない。

「ああ無理だ!どの魔術でも奴の身体にはダメージが与えられない!!」
「マジかよ!そりゃやべぇなぁ!!」

笑っているが笑い事ではない。

「!!」

ウィッカーマンは完全に周りのことなど気にせず、真っ直ぐ舞達に向かっている。
しかし歩くだけだったその巨人は今

「まずい!避けろ!!」

攻撃を始めた。
腕を振るうとそこからいくつもの火の玉が放物線を描いて放たれる。
そこら中に落ち、文字通り辺り一帯を火の海に変えたのだ。
そう、追いかけているだけではない。

「どうしよう…このままじゃ…!」

彼らの逃げ道を塞いだのだ。

「こんちゃん…少年…私はいいって」
「そんなこと言わないでください!!やっと会えたのに…また会えなくなるのは嫌なんです!!」

自分が足を引っ張っている。
そう思った田所先輩は自分を捨てて逃げろと言うが、二人はまずそんな事は許さない。

「お前…何かないのか!」
「何かって何も…!」

火によって行く手を塞がれてしまい、このままではウィッカーマンに追いつかれる。
横の道も、無論火の海。
ならここは無茶して強引に火に飛び込むかと思ったその時、

「…!!」

彼はこちらに飛来する火の玉に気付いた。

「危ないっ!!」

先輩と近野を押しのけ、自分が無理矢理前に出る。

「うぅっ!あああっ!!!!」

直後、背中に感じる熱いもの。
ジュウジュウと焼ける音。人間のやける匂い、そし想像を絶する痛みが舞の背中を襲った。

「少年!!」
「…!」

叫ぶ田所先輩。
絶句する近野。
2人を庇った舞はそのままガクリと膝を着いた。

「葛城ィ!!!!」

遠くからは友達の友作と暮馬の声。
大火傷を通り越し、彼の背中は焼けただれ骨が覗いていた。

「せん…ぱい…。」
「何してるんだ少年!!だから私なんて置いてさっさと逃げろって…!!」
「…。」

そんな状態の舞に、近野が有り得ないものでも見るかのような目で見下ろす。

「お前…なんでそこまで…。」
「決まってる…でしょ…。」

ぜえぜえと荒い呼吸をしながら、彼はたどたどしくも庇った理由を話す。

「僕も…先輩が大事だから…君と、同じ…ように…!」
「…!」

この男は、ただ先輩に擦り寄る害虫、下心しかない汚い男ではない。
彼は、本当に大事だと思って守った。
でなければ、ここまで大怪我をして庇うはずがない。
こいつは本当に馬鹿なやつだ。
けど…私が思っていたよりもずっと、こいつは優しい人だった。
と、近野の舞に対する印象が改めさせられる。

「お前…馬鹿だろ…!」
「うん…ぼく、あんまり頭よくない…から。」

そう言って舞は、よろよろと立ち上がる。
状況は芳しくない。
あのウィッカーマンに対する策はまだない
しかし、離れたところにいた友作は1つの案を思いついていた。

「暮馬!巴御前は!?」
「え?と、巴さん?」

隣にいた暮馬にそういう。
増援、という意味でもあるがその他にも彼女にはやってもらいたいことと役目がある。

「巴御前なら多少は炎に耐性くらいはあるんじゃないか?今すぐに呼んで欲しいんだ!」

彼女ならば、ウィッカーマンに少しくらいは対抗できるかもしれない。
炎を扱うならば、耐性があるのではないか?
あの燃え盛る人形に太刀打ちできるのではないか?
それに、手一杯なキルケーと森長可に代わり向こうの3人を助けられるのではないか?
そういったあらゆる期待を込めて、マスターの暮馬に聞いてはみたが…。

「よ、呼ぶって言っても…巴さんには今日男同士の話し合いがあるからって先に帰ってもらってるんだよ!」
「じゃあ令呪で呼べばいいだろう!?」
「それが…。」

口ごもる暮馬。
巴御前を呼び出せない理由、それはあまりにもくだらないものだった。

「出かけてる…?」
「ああ…前々から約束してたみたいで…今妹と出かけてるんだ…。」
「…。」

何も言うことなく、頭を抱える友作。
手を合わせ、本当にごめんと心の底から謝る暮馬だがそれはしょうがない。
令呪で呼び出したとて、妹からしてみれば隣に居たはずの巴御前がいきなりいなくなるのだから。
さらに彼は、巴御前がサーヴァントだということを家族の皆には内緒にしている。
話せばとても長くなるし、説明もこの上なく面倒くさい。
第一、ゲームの登場人物がある日突然自分のところへやってきたといって信じてもらえるだろうか?
答えは、否だ。

「なら…後は火消しが来るのを願うしかないな。」
「火消し?火消しって消防士を呼ぶのか?」


しかし、万策尽きた訳じゃない。
スマホを取り出した暮馬に友作は手のひらを突き出して待てと指示する。

「そうじゃない。火消しは火消しでもサーヴァントの方だ。」
「火消しのサーヴァントって…あ!」

ようやく、火消しとは何か答えにたどり着いた暮馬。

そう、火消しとは

「良かったな。噂すれば影だ。」

2人を飛び越え、瓦礫の中を駆けるサーヴァント。
ウィッカーマンは初めて、そのサーヴァントに興味を抱き振り返った。
その時にはもう跳び上がり、既に眼前にまで迫っている。
そして…

「そらっ!!」

大筆からの一撃。
大波の飛沫を体全体に浴び、ウィッカーマンは大きく仰け反った。

「お!お前あんときの絵描きじゃねーか!」
「よう。虫の知らせならぬ風の知らせを聞いてすっ飛んできたとこサ。」

仰け反り、そのままウィッカーマンは後ろに倒れ地面を響かせる。
近くにすたっと着地したのは北斎。葛城舞のサーヴァント、葛飾北斎だった。

「で、どういう状況だいこりゃ?」
「見ての通りだよ北斎。」

辺りを見回すも、てんで分からない。
この大きな炎の巨人も、そしてキルケーや森長可が協力して戦ってるのも。
なにより、

「お栄…ちゃん!」
「!?…マイ!そいつはなんだ!?」

自分のマスターが背中を大怪我し、さらには顔を怪我しているではないか。
自分のマスターの顔はまさに宝。そんなものを傷つけた輩はどこのどいつか知りたいが…。

「聞きたいことはあるが、まずはその前に…。」

振り向くと、ウィッカーマンは起き上がり、北斎に襲いかかろうとしている。
舞の大火傷はどう見たってこいつの仕業。
そう、まずはこいつを倒すことが先決だ。

「どこの誰だか知らねぇが、このおっかねぇ火だるまを倒せばいいんだナ?」
「ああその通りだ!キミの宝具でならそいつの火は消せるはず!私達ではそいつにロクに手を出せなくて困っていたところだよ!!」
「ホウ…そうかい。」

怒りがふつふつと込み上げてくる。
まさにこのウィッカーマンのように、怒りの感情がごうごうと燃え盛ってきた。

「お前さんかい?おれのマイをあんな風にした奴は。」
「…」
「喋らねぇってんなら…そういう事だな?」

ウィッカーマンはさらに燃え盛る。
その手を伸ばし、北斎を自らの胴の中にしまいこもうと襲いかかる。

北斎はそれを跳躍してかわし、宙に舞うと大きく回転し、全体重をかけた一撃をおみまいした。

「よし!効いてるぞ!!」

腕の火が鎮火し、ボロボロと崩れ落ちる。
再び再生し、火に包まれるが北斎の攻撃は明らかに効いていた。

そうして舞は、朦朧とした意識の中かろうじて立ち上がり、己のサーヴァントの戦う姿を見守る。
マスターとしての役目だ。
ここで意識を失うなんてあってはならない。
せめて、この戦いの行く末を見届ける義務がある。

「大丈夫。お栄ちゃんなら…お栄ちゃんなら絶対に勝つよ。」

令呪の刻まれた右手を握りしめ、彼はただそう呟いた。

 
 

 
後書き
何か戦いがあるたびに大怪我する舞くん。 
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