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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第四十三話】

――1025室――


保健室での出来事でゆっくりし過ぎたためか、部屋に戻るのが遅くなってしまった。

――松葉づえついてるってのもあるかもしれないが。


「あ、おかえりー」


部屋に戻るとエプロン姿の妹の出迎え――エプロン?


「悪い遅くなった。――何でエプロン姿だ?」

「え?料理作ってたからに決まってるじゃない」

「――そういや食べ物の匂いがするな」


松葉づえを使い、ゆっくり部屋の中を移動するとテーブルには――。


「チャーハン?」

「うん、何だか急に作りたくなっちゃって」


エプロンの裾を掴む美冬を見て、俺は優しく頭を撫でた。
すると、頬を若干紅潮させて笑顔で――。



「じゃあお兄ちゃん、食べて食べて?」


――そう促され、席に座るとレンゲを渡された。


「いただきまーす」

「ど、どうぞ」


チャーハンをレンゲで掬い、口に運んで一口食べた。


「…………」

「ど、どうかな…?」


不安そうに見つめてくる妹に、俺は――。


「……もう少し火力使って炒めるといいな。だが味は問題ないよ。ずっと前に食べた焦げ焦げのチャーハンよりは成長したな」

「むぅ…お兄ちゃん辛口だぁ…」

「ははっ。食べられないレベルじゃないから俺的には美冬は成長したと思うがな。酷いときは調味料なかったんだし」

「うぅ…意地悪だ…」


――小さい頃に美冬が作った料理は調味料の入れ忘れが一回あったんだよな。

連帯責任って事で、家族皆で食べて悶絶したのはいい思い出だ。


がつがつとチャーハンを勢いよく平らげ、皿の上が綺麗になった。

実は腹が減って減って――。


「ごちそうさまでした」

「うん。お粗末さまでした」


皿を片付ける妹の後ろ姿を見つつ、口を開き――。



「しかし、美冬が作ってくれたのは久しぶりだな」

「ん~?お兄ちゃん怪我してるしね。たまにはいいかなぁって」

「おー、美冬を嫁に出したくなくなるな」

「そ、そう?――ま、まぁ彼氏作るつもりないから暫くは大丈夫だよ」


皿を洗う音が止み、此方を向いてにこりと笑顔で答える美冬。

――と、コンコンとノックが聞こえてそちらを向くとドアが開いて入ってきたのは――。


「あのー、有坂さんと有坂くん、いますかー?」

「いてますよ。兄妹共に健在です」


山田先生だった。

こんな時間に山田先生が来るとは――何事だろうか?


「先生、どうかしたのですか?」


美冬がそう問うと、山田先生は――。


「あ、はい。お引っ越しです」

「「……はい?」」


今の引っ越しって聞くと山田先生がここに引っ越しなのかと思う。


「先生が、私たち兄妹の部屋に引っ越しなのですか?」

「い、いえ!違いますよっ!――えっと、お引っ越しするのは有坂さんです。部屋の調整が付いたので、今日から同居しなくてすみますよ」

「えっ?えと――」

「えっと、それじゃあ私もお手伝いしますから、すぐにやっちゃいましょう」

「ま、待ってください。急な事なんでびっくりなんですが――今すぐじゃないといけませんか?」


美冬の言葉に山田先生は目をぱちくりさせ、瞬かせた。


「それは、まあ、そうです。兄妹といえどもいつまでも年頃の男女が同室で生活をするというのは問題がありますので」

「で、でも、お兄ちゃん怪我してるし――」


心配そうに此方を見る美冬。


「美冬、俺なら大丈夫だって。怪我はしたが一応着替えれるしな」

「うぅ…。わかりました…」

「じゃあ、すぐに始めましょうか」


あまり乗り気じゃない美冬、心配なのはわかるが……。



怪我してるから手伝いは出来なかったが、美冬と山田先生二人でてきぱきと動き、作業は一時間以内に終わってしまった。




あれから少し時は流れ、今は無駄に広い部屋を椅子に座って眺めている。


「……何だかんだで美冬がいなくなると寂しいな。――だが、一人なら風呂上がり全裸で文句言う人いないってのはいいかもだが」


美冬が使っていたベッドを見ると、側に何か落ちてるのに気付き拾うと――。


「……携帯忘れてるし。届けに行くかな」


部屋の場所はさっき山田先生が説明してるのを聞いていたので全く問題はない。

ただ、松葉づえのせいで遅くなってしまうが――。


部屋を出、松葉づえを使い歩いていくと曲がり角から喋り声が聞こえてきた――。


何を話してるのかは興味がないから、そのまま行こうと移動すると――。


「ら、来月の、学年別個人トーナメントだが――わ、私が優勝したら――」


聞こえてきた声は篠ノ之の声だった。

向くと、篠ノ之の前には織斑がいて――。


「つ、付き合ってもらう!」


その言葉と共に、篠ノ之は織斑に指を差し、当の織斑は――。


「……はい?」


――という何とも気の抜けた返事だった。

――突き合うって、二人でフェンシングでもするのか?


そんな勘違いをしたとも気付かずに、俺は妹の部屋へと向かっていった――。 
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