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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第三十九話】

あれから更に時は流れ、試合当日。


第二アリーナ第一試合。

組み合わせは一組代表俺こと有坂緋琉人、対戦相手は二組の凰鈴音だ。


「おぉ……、アリーナは満員御礼だな」

「だね~。やっぱり注目されてるんだよ」

「そうですわね、会場に入りきらなかった人達は校舎内モニターで観戦するんだとか」


俺たち三人は、アリーナ全体を見られるアリーナ内のモニター前に立っていた。


「こんななかで凰との勝負か……。織斑、凰には謝ったのか?」


そう後ろを向くと、織斑と篠ノ之が壁に寄りかかっていた。


「いや、まだだぜ…?」

「……ったく、いつまでも謝らないと、問題は解決しないぞ?」


そう告げると、織斑の返事も待たずにピット入り口へ――。


「お兄ちゃん、頑張ってね!」

「えぇ、ヒルトさんの特訓の成果を皆様の前で披露してくださいませ」

「――わかったよ美冬、セシリア。――じゃあ行ってくる」


その言葉を受け、俺はピットへと入っていった――。


――第二アリーナ――


ピットから出、規定位置へと移動すると、既に凰は静かに目を閉じ、待っていた。

肩の横には浮遊した棘付き装甲が攻撃的な主張をしていた。


俺の第三世代用の装備の機能はまだ開放されていないが、同じように西洋の槍――ランスみたいな形状が特徴だが。


『それでは両者、規定の位置まで移動してください』


今回、空を飛べない俺に配慮して、地上での対峙となる。

互いに向かい合い、その距離は五メートルと短くもなく、長くもないものだ。


そして、凰がオープン・チャネルを開き、口を開いた。


「あんたに恨みはないけど、一夏とおんなじ組って不運を呪ってよね」


「ったく……とんだ痴話喧嘩の飛び火だな。呪いはしないが、クラスの期待を背負ってるんだ。悪いが…やらせてもらう」

「一応あんたに言っておくけど、ISの絶対防御も完璧じゃないのよ。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通させられる」


脅しではなく、本当の事だ。

後で調べたのだがIS操縦者に直接ダメージを与える”ためだけ“の装備も存在するとか。

――今さら驚かないが、軍事用のISもあるんだ、武器や兵器の目指す先は威力とかになるのだろう。

悲しい事実だがな。


まあ凰の言葉を要約すると『殺さない程度にいたぶる事は可能だ』。


まあ、その辺りは個人のモラルによるだろう。

俺はそういうの嫌いだからしないが。


『それでは両者、試合を開始してください』


アリーナに鳴り響くブザー、それが切れる瞬間に凰は動いていた。


振り抜いた異形の青竜刀を後方宙返りで避け、天狼を展開した。


「ふぅん。初撃を避けるなんてやるじゃない。けど――」


手にした異形の青竜刀をバトンのように扱い、回した。

両端に刃の付いた――というよりは刃に持ち手がついているそれは、縦横無尽に振り回し、距離を詰めると此方へ斬り込んできた。

回転する勢いのまま、攻撃を行う凰。

その力を受け流すように捌き、凰が横に振りかぶるのを見るや、その横に振り抜いた青竜刀の刃をしゃがんで避け、足払いをして体勢を崩した。


「取った!!」


体勢を崩した凰へ、手に持った天狼を振り下ろすが――。


「――甘いっ!!」

「なっ…!?」


肩のアーマーがスライドして開き、中心の球体が閃光を放った瞬間、目に見えない衝撃をまともに受け、吹き飛ばされていた。


「今のはジャブだからね」


不敵な笑みを浮かべた凰。

牽制の次は本命って事か――。


また球体が光るとそこから見えない衝撃が放たれ――。


「――ぐぅっ…!?」



装甲にダメージは全くないのだが、内部に直接ダメージを与えるせいか、衝撃で全身に痛みの衝撃が走り、口の中を切ってしまった。


「――見えない弾丸か……厄介だな」

「ふふん。降参するなら今のうちよっ!!」


そう言いながらも、肩のアーマーから不可視の弾丸の連射が此方を襲う。


アリーナを走り、その弾丸を右、左へと避けるがいつの間にか壁際まで追い詰められていた。


「もらったわ!!」


弾丸を放つと見えないが此方に迫るのを直感で感じ取った。

咄嗟に跳んでアリーナの壁を蹴り、宙返りしてその一撃をかわすと反転する視界の中、全スラスター及びブースターを使用、一気に間合いを詰めるも――。


「甘いのよっ!そんな直線的な動き!!」


するりと避ける凰、そして、そのままの体勢で不可視の弾丸を放つ肩のアーマーが此方の方へと球体を向け射撃。

背後からもろに直撃を受け、地表に打ち付けられる。


「ちぃっ…!まさか射角無制限か…」

「ふふん、よくわかったじゃない。衝撃砲『龍咆』は砲身も砲弾も目に見えなければ射角も無制限なのが特徴なの」


素早く立ち上がり、俺は天狼を構えたまま凰の真下まで移動した。



「流石に真下だと狙いも――」

「そんな考えが甘いのよっ!!」


くるんっと球体が下を向き、短く閃光を放つと頭上から衝撃砲の一撃をまたもや受けてしまう。


吹き飛ばされた俺は、一度地面に叩きつけられ、跳ねた後ゴロゴロと地表を転げた。


――やはり付け焼き刃程度の訓練じゃ、勝てないのか…。


――いや、俺だって……訓練したんだ。

せめて一矢報いらないと、特訓を付き合ってくれた皆に顔をあわせることが出来ない……!!


立ち上がり、手元に落ちた天狼を拾うと俺は構え直す。

気合いでどうにかなる訳じゃない、だが――このまま何もせず負けるわけにもいかない。


構え直した姿を見た凰も、両刃青竜刀を一回転させて構え直した。


――一か八かなんてのは嫌いだが、意外性で攻めるか…。


先ほどと同じく、スラスター及びブースターを点火し――飛び上がると一気に詰め寄る。


「ワンパターンなのよ、アンタはっ!!」


また同じく、するりと避ける凰だが――。


――ここだっ!!


――セシリアと美冬から習った『三次元躍動旋回(クロス・グリッド・ターン)』と『無反動旋回(ゼロリアクト・ターン)』の併せ技をこなし――。


「えっ――」


何が起きたのかわからないといった表情を見せる凰へと、天狼を振り抜き、その装甲へと刃が届く寸前―――突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。 
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