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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第四十一話】

――第二アリーナ――


俺と凰の即席コンビでアンノウン機と戦闘に入っていた。


「ちぃっ……当たれぇぇっ!!」


切っ先は微かに触れるが、有効打にはならずにアンノウンはするりと避ける。

――四度目のチャンスを逃した、だが相手のアンノウン機が異常な気がする。


「有坂っ、馬鹿!ちゃんと狙いなさいよ!」

「わかってる!だが……!!」


凰が引き付け、俺の攻撃に直ぐ様反応するこいつは本当に人間が操っているのか疑ってしまう。


エネルギーも残り少ないのに……!


「有坂っ、離脱!」

「わかってるっ!!」


――そしてこれも同じ、此方の攻撃を避けた後に直ぐ様反撃に転じてくる。

その反撃方法も無茶苦茶で、長い腕を振り回して俺や凰に接近、しかもその状態でビーム砲撃をするためあちこちに砲撃後が残る。


「ああもぅっ、めんどくさいわねコイツ!」

「凰、撃つな!!」


その言葉を訊かず、焦れたように凰は衝撃砲を展開し、砲撃を行った。

――だが、敵の長い腕はその衝撃砲の弾丸を叩き落とす。

これで七回も無駄撃ちになってしまった。


「凰、残りエネルギーはどれぐらいあるんだ?」

「180って所ね」

「なぁる。互いに残り僅かって事だな」

「ちょっと、厳しいわね……。現在の火力でアイツのシールド突破して機能停止させるのは確率的に一桁台ってとこじゃない」

「低いな――まあ、上がろうと下がろうと事態は変わらんがな」

「そうね。――で、どうすんの?」


凰は此方へ顔を向けると聞いてきた。

どうするもなにも――。


「やるしかないだろ?キツいなら休んでも構わないさ」

「なっ!?馬鹿にしないでくれる!?あたしはこれでも代表候補生よ。アンタばかりに戦わせてアタシだけが休むなんて、有り得ないわ」


まあ、そういうだろうな。


「んじゃ、俺では頼りにはならんだろうが――凰の背中ぐらいは守るよ」

「え…!?――な、何生意気言ってんのよ!!……ありが――」


言葉を遮るように、凰の横をビームが掠めた。

集中しないとな。


「なあ、凰――」

「鈴!」

「はい?」


突然自分の下の名前を叫ぶ凰、そして言葉は続けられ――。


「鈴!――で良いわよ!!」

「……いや、その鈴って呼び方よりも俺は鈴音(すずね)って呼び方のがいいな」

「す、好きに呼べば?……馬鹿」

「あぁ、好きに呼ばせてもらうさ。だからお前も好きに呼びな。――しかし、何かあのアンノウン、無人機じゃないのか?」


そう俺が鈴音に問うと、目をぱちくりさせ――。


「は?人が乗らなきゃISは動かな――」


そこまで口を開いて言うと、直ぐ言葉が止まった。


「――そういえばアレ、さっきからあたしたちが会話してる時ってあんまり攻撃してこないわね――」


そう、何故か会話中攻撃をしてこない――。

会話が終える、又は会話終わる前ぐらいには攻撃はしてくるが。


「ううん、でも無人機なんて有り得ない。ISは人が乗らないと絶対に動かない。そういうものだもの」

「だが――有り得ないなんて事は、有り得ない――無人機の可能性だってあるんだ。無人機なら……」

「なに?無人機なら勝てるっていうの?」

「まあ確率はあがるさ。人が乗ってないなら遠慮なく攻撃も出来るしな」


――バリア無効化攻撃の出来る天狼なら、大丈夫なはずだ。


「遠慮なくも何もその攻撃自体が当たらないじゃない」

「大丈夫だ、次はもっと踏み込む…!」

「言い切ったわね。じゃあ、そんなこと絶対に有り得ないけど、アレが無人機だと仮定して攻めましょうか」



不敵ににやりと笑う鈴音を見て、俺も笑みを浮かべる。


「ヒルト」

「おぅ、どうした?」

「アタシ、どうしたらいい?」

「難しく考えるな、注意を引いてアイツが飛ばないように、動き回らないように衝撃砲を撃ってくれ」

「?――いいけど、当たらないわよ?」

「構わないさ。だから――頼んだぞ!!」


体勢を低くし、天狼を逆手に持ち変えてアンノウン機に向かって走り出す。


その動きに反応したアンノウン機は此方に腕を向けるが――。

空へと浮かぶ鈴音の衝撃砲による牽制射撃により、注意が向こうへ向いたのを確認すると――。


「……一気にいかせてもらうっ!!」


デッドウェイトになっている邪魔になったパーツをパージし、スラスター及びブースターを全力噴射――間合いに入った。


加速力のついた天狼の突きで腹部装甲を貫き、引き抜く力を利用し、一気に右腕を斬り落とした。


「………取った!――っ!?」


残された左腕から繰り出される一撃をモロに受け、回りながら地面に落ちるなか――避難して誰もいない客席にセシリアがいるのを確認するや、天狼を遮断シールド発生機に向けて投げ――突き刺さった。


「ぐっ…ぅ…っ」



此方に近づいてきたアンノウン機は、左手で俺の頭を掴むと、その接触面から熱源反応を感知した。


「「ヒルトっ!」」

「お兄ちゃんっ!!」


いつの間に来ていたのか――織斑や美冬の俺を呼ぶ声、鈴音の声も俺の耳に届いた。


「……ふっ、チェックメイトだな……セシリア!!」

『わかっていますわ、任せてくださいな!』


よく通り、いつも以上に頼もしく聞こえるセシリアの声。

刹那、客席からブルー・ティアーズのビット四機と狙撃銃による一斉射撃により、敵ISを撃ち抜く――。


遮断シールドは、セシリアの居てる一部分だけの発生機を破壊した結果、援護を受けられる状態になっていたのだ。

小さな爆発音が鳴り、敵ISは地上に墜落した。


『ふぅ……ギリギリのタイミングでしたわ』

『ははっ、セシリアなら問題ないと思ってたさ、俺はな』

『そ、そうですの……。とっ、当然ですわね!何せわたくしはセシリア・オルコット。イギリス代表候補生なのですから!』


その台詞を聞き、思わず苦笑しながら、織斑から突き刺さった天狼を投げ渡され、受け取った。


「さ、終わった事だし――これから再戦か――」


言い終わる前に警告音が頭の中に鳴り響く、確認すると先程倒したはずの無人機が再起動していた。


「……っ!?やらせるかよッ!!――はぁぁああああっ!!!」


片方だけ残った左腕を、最大出力形態に変形させたISが、地上から俺を狙っていた。


皆が俺の名を叫ぶ中――放たれたビームの中へ飛び込む俺。

残った左腕の装甲を切り裂く手応えを感じながら、俺の意識はそこで途絶えた――。 
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