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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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第一巻
  【第四十話】

――第二アリーナ――


突如謎の大きな衝撃に襲われ、一体何が起きたのか誰にもわからない状況だった。


ステージ中央からもくもくと煙が上がっている。

先ほどの『何か』が、アリーナの遮断シールドを貫通して入ってきたようだ。

その時の衝撃波で、アリーナ全体が揺れたようだ。


「一体何が起きたんだ…?」


そう呟く俺に、凰からのプライベート・チャネルによる通信が飛んできた。


『有坂、試合は中止よ!すぐにピットに戻って!』


その凰の通信後、直ぐ様ISのハイパーセンサーが緊急通告を行ってきた。

――ステージ中央に熱源。
データ照合――該当無し、アンノウンISと断定――警告!ロックされています!


「っ……!?」


アリーナの遮断シールドは、ISと同じもので作られている。

そのシールドを貫通するだけの攻撃力を持ったアンノウン機が突如として乱入、俺をロックしている。


『有坂、早く!』

『何言ってるんだ!凰はどうするんだ!?』


プライベート・チャネルの使い方はセシリアによくレクチャーされていたから使い方は解っているため、そのまま返信を返す。


『あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!』

『バカ野郎っ!こんな状況で逃げるわけにいかねぇだろっ!!』

『馬鹿!アンタ弱いんだから逃げなさいよっ!!』

『弱かろうが緊急事態なんだろ!?弾除けぐらいになるさ、これがなっ!!』

『なら勝手にしなさいよっ!――でも、お互い最後までやりあう事はないんだからね。こんな異常事態、直ぐに学園の先生たちがやってきて事態を収拾――』

『凰!危ないっ!!』


咄嗟に凰を突き飛ばした俺を、熱線が襲う――。


「ぐぅぅっ…!?」


熱線をもろに浴び、一気に装甲の表面温度が上がっていく――。



「有坂っ!?」

「……大丈夫だ、排熱処理すれば」


装甲がスライドすると、たまった熱を放出――その際にキラキラと粒子が舞い落ちる――。


「――っ!?」


煙を晴らすように、ビームの連射が放たれた。

それを高く飛び上がり、避けると追撃の一撃で放たれたビーム射撃を天狼で受け止め、地上へと着地する。


「……何なんだよ、このアンノウン…」


姿形からして異形だった。

深い灰色をしたそのアンノウン機は手が異常に長く、つま先よりも下まで伸びていた。

そして、首がまったく見当たらず、肩と頭が一体化しているような形をしている。

そして何よりも特異なのが、『全身装甲(フル・スキン)』だった。

通常のISは、部分的にしか装甲を形成しない。

理由は必要がないからだ。

防御は殆どがシールドエネルギーによって行われてある。

――俺のISは普通のスキンとフルスキンの中間タイプで、部分部分は露出しつつも装甲である程度守られている。

母さん曰く、シールドエネルギーに頼って装甲を排除すると、もしも突破されたときに大怪我を負うかららしいが――。


話は戻るが、あの巨体も、普通のISではないことを物語っている。

腕を入れると二メートルを越える巨体は、姿勢維持のためか、村雲と同じくあらゆる場所に――というよりも村雲以上に全身にスラスター口が見て取れた。

頭部にはむき出しのセンサーレンズが不規則に並び、腕には先程のビーム砲口が左右合計四つあった。


「…………っ」

「……………」


互いに黙ったまま、様子を伺っていると――。


『有坂くん!凰さん!今すぐアリーナから脱出してください!すぐに先生達がISで制圧に行きます!』


飛び込んできた通信は山田先生だった。



「――今引いたら誰があいつを引き付けるんですか?このまま食い止めますよ、これが」


――引けば好き勝手に暴れ、もしも他の生徒に危害が及べば最悪の事態になる可能性もある。


「凰、構わないな?」

「当たり前よ。――アンタこそいいの?」

「構わないさ、怖くないといえば嘘になるが――だからといって凰一人残すほど俺は馬鹿じゃないさ」

『有坂くん!?だ、ダメですよ!生徒さんにもしもの事があったら――』


山田先生の通信が途切れ、言葉はそこまでしか聞けなかった。

その通信が途切れるのを合図に、敵ISが体を傾けて俺目掛けて突進してくる――。


ギリギリまで引き付け、サイドステップでの避け様に掠めるように天狼で斬りつけた。


「ふん、向こうはヤル気満々みたいね」

「ったく――何でヤル気満々なんだろうな」


凰は両刃青竜刀を構え、俺も天狼を構え直す。


「有坂、あたしが衝撃砲で援護するから突っ込みなさいよ。武器、それか弓しかないんでしょ?」

「いや、まだ一つある…」

「その浮いてる槍みたいなやつ?」

「違う――相手に…立ち向かう勇気だ、これがな!」

「……バカじゃないの?――でも、それも一つの武器かもね」


そう言い、青竜刀を掲げる凰。

それを見た俺は切っ先を当てると軽い金属音が鳴った――。 
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