IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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第二巻
【第五十八話】
前書き
冒頭の手合わせシーンはオリジナルです
お目汚しな駄文ですが、よろしくお願いします
――第三アリーナ――
「うっ……ぐっ…!」
上空からのアサルトライフルによる一斉射撃を受け、体勢を崩しつつも殆どの弾丸を装甲が弾いていた。
今現在、土曜の午後の自由時間。
場所は第三アリーナ。
そして、シャルルとの手合わせ中だ――。
「もらったよ!」
その声がアリーナに響き、上空から一気に地上へと急降下、そしてその衝撃に視界を覆うように砂ぼこりを撒き散らせた――。
ハイパーセンサーには効果が無いのだが、一瞬の出来事に俺は状況が読み込めず、一気に懐に入られ――。
「……っ!」
二刀流による二連撃、その刃が装甲に当たると激しく火花を撒き散らせる。
「くっ…ヒルトの装甲硬い…!」
「硬いのも取り柄なんでな、これがなぁっ!!」
刃を受け止めたまま、シャルルの腹部装甲を蹴り、距離を離すが――。
「きゃっ……――まだまだぁ!」
吹き飛ばされたシャルルは低く屈むと、離された間合いをショートダッシュで一気に詰められ――。
「――間に合わないっ!?」
天狼の展開も間に合わず、二振りの近接ブレードの刃が、装甲の隙間の生身の部分――絶対防御を確実に発動させる部位へと的確に当てられると同時にシールドエネルギーが一気にゼロになっていた――。
――手合わせ後――
「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してなくて、ヒルトは一瞬の状況判断に直ぐに対応出来るときと出来てない時があるのと、後はやっぱり空を飛べないってのが原因かな?」
「そ、そうなのか?一応わかっているつもりだったんだが……」
「やっぱ空飛べないのが足枷になってるのか…状況判断も課題だな」
シャルル、未来が転校してきて五日。
土曜日はアリーナが全解放されていて、殆どの生徒が実習に使っている。
そして今、俺と織斑は軽くシャルルと手合わせ後に、IS戦闘に関するレクチャーを受けていた。
「うーん、一夏は知識として知っている感じかな。さっき僕と戦った時も殆ど間合いを詰められなかったよね?」
「うっ……、確かに。『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』も読まれてたしな……」
「――ヒルトは射撃の特性は把握してるけど、装甲の硬さに過信してる所もあるかな?」
「まあ確かに……今まで破損したことないからな。銃弾も基本装甲が弾くし…」
事実、織斑やセシリア、鈴音は戦うと此方が攻撃をし、当たった箇所の装甲が破損したりするのだが、こっちのは斬られようが撃たれようが全く装甲が欠けたりへこんだりもしない――。
ただ、ビームとか熱系統の武器には弱い…。
装甲の温度が上がって排熱しないとオーバーヒートしてシールドエネルギーを消耗していくから。
排熱しながら動けば良いのだが、それだとスライドした脆い部分に直にダメージ受けるからな…。
「――で、一夏のISは近接格闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬時加速って直線的だから反応出来なくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」
「直線的か……うーん」
「でもさ、あの瞬時加速中に軌道変えたりしたらヤバイだろシャルル?確か…圧力や空気抵抗の関係で負荷がかかったら骨折したりするとか」
「うん、その通りだよ」
「……なるほど」
――俺は瞬時加速を全く使えないからやったことはない…というより加速力が既に織斑の瞬時加速並に出せるらしいからあまり必要がない――。
しかし、シャルルの説明は非常にわかりやすい、美冬や未来もわかりやすいが――他の三人の説明だと。
――篠ノ之の場合――
『こう、ずばーっとやってから、がきんっ!どかんっ!という感じだ』
――擬音ばかりで何言ってるかわからん、幾ら俺がバカでもこれはわからん。
――鈴音の場合――
『なんとなくわかるでしょ?感覚よ感覚。……はあ?なんでわかんないのよバカヒルト』
感覚論でわかったら俺はニュータイプだよ、鈴音。
――セシリアの場合――
『防御の時は右半身を斜め上前方へ五度傾けて、回避の時は後方へ二十度反転ですわ』
……ごめん、バカですから五度や二十度なんて全くわからないんだよ、セシリア。
――それでも、ある程度わかりやすく言い直してくれるからまだそこそこわかったが。
美冬の場合は、動きの動作をしながら説明をするので覚えやすく、未来は教科書や手引き書に書かれている内容をわかりやすく纏めたノートを見せて、解らないときは丁寧に教えてくれる――先生向きだ。
空いた時間に聞いたのだが、未来は日本の代表候補生に選ばれ、政府からの推薦もあってIS学園へ転入してきたって彼女の口から聞かされた。
最初からIS学園に来てたら良かったのにと思うが、前に聞いた時は俺と一緒に行く高校の制服が可愛いから俺と同じ高校を受験したのだが――うーん……俺を追いかけて来たのか、未来は?
――考えても答えはわからないが、本人の口から聞かないと。
――話は戻るが総評しても、大体のコーチ陣はありがたいがやはりISスーツの露出が高いのが難点かな、女子にいえることは。
思春期の男子の目には眼福だが、そこから下半身に血液が集中しそう――てか何度か集中して危なかったが。
バレたら変態扱いだからな…ぐぅ…。
織斑はホモ又はゲイ疑惑だから平気かもしれないが…。
「ふん。私のアドバイスを二人ともちゃんと聞かないからだ」
「あんなにわかりやすく教えてやったのに、なによバカ一夏、バカヒルト」
「わたくしの理路整然とした説明の何が不満だというのかしら」
「まあまあ皆、デュノア君の説明、お兄ちゃん達にはわかりやすく聞こえるんだよ」
「私が聞いてもデュノア君、わかりやすいよ?それに…やっぱり男の子同士で気を使わなくていいのも大きいしね」
未来や美冬が三人を納得させようとしているが……大丈夫かな?
――先程も言ったが、土曜日の午後はアリーナが全解放されていて、ここ第三アリーナでも多くの生徒が所狭しと訓練に励んでいる。
しかし、学園で三名しかいない男子が全員第三アリーナにいてるので、ここの使用希望者が続出し、かなり過密な状況だった。
先程から別のグループ同士がぶつかったり、此方に流れ弾が飛んできたり――っても俺は当たっても装甲で弾いてるし、未来や美冬は打鉄のシールドで上手くガードしてるから問題ないが――。
それよりも、俺が人にぶつかる方が大変だ。
織斑やシャルルなら、ぶつかった女子も優しいのだが俺の場合は――。
『ちょっと!もっと周りに気をつけてよ有坂!』
――と、キツい言い方をされてしまう……何で俺だけ…。
「一夏の『白式』って後付武装がないんだよね?」
「ああ。何回か調べてもらったんだけど、拡張領域が空いてないらしい。だから量子変換は無理だって言われた」
「たぶんだけど、それってワンオフ・アビリティーの方に容量を使っているからだよ」
「ワンオフ・アビリティーっていうと……えーと、なんだっけ?」
「織斑、ワンオフ・アビリティーはその名の通り、単一仕様の特殊才能だ。各ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する能力の事だ。だが、それでも普通は第二形態(セカンド・フォーム)から発現するんだが、それでも発現しないこともある。だからそれ以外の特殊能力を複数の人間が使えるようにしたのが第三世代型のISって事だな。セシリアのブルー・ティアーズ、鈴音の衝撃砲がその第三世代型って訳だ、これがな」
「なるほど。それでシャルル、白式の単一仕様ってやっぱり『零落白夜』なのか?」
――【零落白夜】――
エネルギー性質のものであればそれが何であれ無効化・消滅させるという織斑のIS、白式最大の攻撃能力。
しかし発動するにはIS、白式のシールドエネルギーを使用しないといけない。
簡単に言うとISのライフを削って攻撃を行う諸刃の剣ってやつだな。
それ以上に――エネルギーの無効化・消滅というのは絶対防御にも当てはまり、人の命を奪う可能性の高い単一仕様なのだが――織斑はバカみたいに対人戦でも使用してくる。
――正直、何度か危ない目にあいかけたからあの単一仕様を対人戦であまり使わないでほしいが…。
「白式は第一形態なのにアビリティーがあるっていうだけでも物凄い異常事態だよ。前例が全くないからね。しかも、その能力って織斑先生の――初代『ブリュンヒルデ』が使っていたISと同じだよね?」
――確か暮桜だったか?
織斑先生の使用していた第二世代IS。
詳しく調べてはいないから解らないが――。
「まあ、姉弟だからとか、そんなもんじゃないのか?」
「そんな単純な訳ないだろ。姉弟だから同じ能力の発現って、それじゃあ姉妹でIS専用機持ちも外見違っても発現するってなるじゃん?」
「そうだね。ヒルトの言う通り、いくら再現しようとしても意図的に出来るものじゃないんだよ」
――仮に再現が出来たら、その単一仕様を最大限に活かせるIS造りをするってのが企業なりなんなりするはずだし。
ISの技術による技術向上によって、戦車とかの旧世代の乗り物の生産コストが大幅に安くなったとはニュースで聞いたりもするが……良いことなのか悪いことなのか。
「そっか。でもまあ、今は考えても仕方ないだろうし、その事は置いておこうぜ」
「――だな、考えても答えが見つからない気がするし」
「そうだね。じゃあヒルト、一夏、射撃武器の練習をしてみようか。まずはヒルトから」
そう言って、シャルルは俺に五十五口径アサルトライフル《ヴェント》を手渡してきた――。
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