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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第七十話】

――保健室――


女子たちが保健室を去った後も、俺はシャルルを抱き寄せたままだった。

そんな様子を見た美冬がジト目気味に――。


「……お兄ちゃん、いつまでデュノア君を抱き締めてるの?デュノア君、男の子だよ?」

「あ、悪い。シャルル、悪かったな、急に抱き寄せて」

「う、ううんっ!?ぼ、僕は平気だよ!?……それに、少し嬉しかったし……」


――と、頬を紅潮させ、上目遣いで見つめてくるシャルルに――。


「あ、あぁ気にするな。てか――」

「ヒルトさんっ!」


――俺の言葉を遮るように声を上げ、セシリアがベッドから飛び出してきた。


「ヒルトさん!私と組んでくださいな!!」


――と、一旦シャルルを解放した俺に対して詰め寄ってくるセシリア。


怪我してるのに無理するなよと思うのだが、今のセシリアの頭のなかには俺と組む事で頭がいっぱいなのだろう。

――セシリアって、俺の事が好きなのかな?

……まさかな、そりゃキス未遂したりとかはしたが…。

――それに、貴族なら許嫁の一人や二人ぐらいは居そうな気もするしな。


そんな事を考えつつ、迫るセシリアの体が密着しそうな勢いにドキドキしつつも突如声をかけられた――。


「ダメですよ」


――声の主は山田先生だ、いつの間に来ていたのだろうか?

保健室に居てる皆が山田先生の登場に目をぱちくりとさせていた。


「オルコットさんもそうですが凰さんお二人のISの状態をさっき確認しましたけど、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ。――ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可出来ません」


――と、眉を吊り上げ気味な山田先生が告げた。


「……わかりました……一夏と組みたかったけど、仕方ないわよね」

「……不本意ですが……わたくしもトーナメント参加は辞退します……。――はぁ……」


――っと、あっさり引き下がったセシリア。

鈴音も食い下がると思ったのだが――確かIS基礎理論の蓄積経験に影響出るんだったかな?


「わかってくれて先生嬉しいです。ISに無理をさせるとそのツケはいつか自分が支払う事になりますからね。肝心な所でチャンスを失うのは、とても残念な事です。貴女達にはそうなってほしくありません」

「はい……」

「わかっていますわ……」



――山田先生のあの口調、もしかすると何かあったのかもしれないな、又は仲間の代表候補生が無理をしたのを見たのか…。


「ヒルト、IS基礎理論の蓄積経験についての注意事項第三だよ」

「ん?――確か…『ISは戦闘経験を含む全ての経験を蓄積する事で、より進化した状態へと自らを移行させる……。その蓄積経験には損傷時の稼働も含まれ、ISのダメージがレベルCを超えた状態で起動させると、その不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまうため、それらは逆に平常時での稼働に悪影響を及ぼすことがある』……であってるか?何分うる覚えだから」

「流石お兄ちゃん♪私でもそんなパッと言えないのに」

「ヒルト毎日勉強してるんだね、偉い偉い♪」

「か、からかうなよ未来。――正直、覚えるのだけでも大変だってのにさ」


――今でもいっぱいいっぱいなのに、まだまだ覚えることが多くて正直ついていくのがやっとだ。


「――ですがヒルトさん。入学なされてからここまでの飛躍は素晴らしいと思いますわ」

「く、悔しいけど…アンタ凄いと思う…」


――とセシリアと鈴音が褒めてくれる…。

何か変な感じだ、あまり褒めてられる事なんかこれまで無かったからな。


「僕も凄いと思うよ?僕とかは入学前に徹底してISの事を教え込まれたから…」


――そんなに凄い事なのか?

うーん、よくわからんが…お世辞で褒めてる訳じゃないってのはわかる。


「ん…ま、まぁ俺の事はいいよ。当たり前の事を当たり前のようにした結果ってだけだからさ。――てか話は変わるが何でラウラと模擬戦する事になったんだ?セシリアと鈴音とは付き合いが短いが、三対一で戦うような性格じゃないってのはわかってるんだし」


「え、いや、それは……」

「ま、まあ、何と言いますか……女のプライドを侮辱されたから、ですわね」

「そ、そうそう。それだけだよ、お兄ちゃん」

「……ふーん。――言いにくい事って事はわかったよ」


――目を見たらわかるが、明らかに女のプライドを侮辱された訳ではないってのがわかった。

美冬が怒った理由は多分だが、セシリアや鈴音が何か悪口でも言われたとかだろう。

残りの二人は――。


「ああ。もしかしてヒルトや一夏の事を――」

「あああっ!デュノアは一言多いわねぇ!」

「そ、そうですわ!まったくです!おほほほほ!」

「そ、そうだよ!デュノア君!黙ってーっ!」


――と慌てふためく三人が、シャルルを取り押さえセシリアと鈴音がシャルルの口を手で覆った。

突然の事にびっくりするシャルルは、苦しそうにもがき始める。


「ストップストップ!美冬もセシリアも鈴音もやめなよ。シャルルが窒息するって。――怪我人何だから大人しく寝てな」


そう言うや、思い出したかのように痛みが全身に走り、その場にへなへなと座り込む三人。


「――ったく、無理するからだよ。皆、立てるか?」


「だ、だいじょ――いたた…っ!」


――と悶える鈴音。


「くっ……つぅっ…!――立てませんわ…」


――セシリアも同じく、痛みに悶絶している。


「っ…ぅ…!…ごめん、お兄ちゃん…助けて…?」


――美冬も痛みに耐えられず、若干涙目で俺の方を見てきた。


「了解――よっと」

「ちょ、ちょっとヒルト!?」

「文句なら後だ、セシリア、美冬。少し待ってろよ」


――ひょいっと鈴音をお姫様抱っこで抱えると、鈴音が驚きの表情になると共に顔が赤くなった。

そんなこともお構い無しに、俺はそのまま鈴音をベッドに寝かせ――。


「今日はもう安静にしてな。無理して痛いのに動くと余計に酷くなるからな」

「…わ、わかったわよ…バカヒルト…」


布団を掛けると、顔半分だけだして一応納得したのか返事をした鈴音。


「んじゃ、次はセシリアの番だな」


――そう伝えると、急に顔が赤くなるセシリア。

――と同時に、未来とシャルルの表情の変化にも気付く。

それも明らかに不機嫌そうな――シャルルの方は直ぐに表情を戻したが、未来に関しては若干頬を膨らませて――。


「……ん、しっかり掴まれよ、セシリア?」

「は、はい……――ひゃっ…!?」


――セシリアをお姫様抱っこで抱えると、小さく声をあげると共に、俺の首に腕を回して落ちないようにしっかりと抱きついてきた。

――思いっきりセシリアのおっぱいが密着してきたため、俺の心臓の鼓動の速さが加速していく。


「……ずっと…この状態が続くといいのですが……」


そうか細い声で言うセシリア。

セシリアが俺の胸に顔を埋める形で隠してるから表情が見えない――。


「う…?さ、流石にずっとは腕がパンパンになっちゃうよ、これが」

「そ、そうですわね…。――……耳が良すぎですわ、ヒルトさん……」


そのままセシリアをベッドに寝かせると同時に、布団を掛ける。

――するとセシリアは、その布団を被り直して全く表情が見えなくなってしまった。


「じゃあセシリア、無理に動くなよ?――最後は美冬だな、悪いな、待たせて」


「ううん、後でも先でも私は気にしないよ?」


そう笑顔で答える美冬を見て、俺も自然と笑みがこぼれる――。


「んじゃ、美冬もベッドに入ったら大人しく寝てるんだぞ?――よっ…と」

「はーい…。――……えへへ…」


美冬を皆と同じようにお姫様抱っこすると、そのまま自然と首に腕を回した美冬。


――妹の胸が当たるのが気になりながらも、皆と同じようにベッドに寝かせ、布団を掛けた。


「ふぅ、何度も言うが…今日は安静にして寝てるんだぞ、皆?」

「わ、わかってるってば!」

「…わかりましたわ、ヒルトさん…」

「りょうかーい…。お兄ちゃん、見舞いに来てね?」

「ん?当たり前だろ?――未来、ちょっといいか?」

「ふぇ?――な、何…?」


若干驚いた表情の未来に近付き――。


「ん?何か不機嫌そうだったからな。――何かしたのなら謝ろうかと思って――」

「だ、大丈夫!……ただ、少しヤキモチ――」

「ん?焼き餅??」

「ふわあぁぁあっ!?な、何でもないよーっ!!」


そう慌て、未来の手が俺の顔を押し退けるように――。


「むぎゅ――いや、押される意味がわからん。――てかそろそろ夕食時だな。シャルル、行こうか?」

「え?う、うん――じゃあ皆、お先に――」

「じゃあな、また様子見に来るよ。未来も俺らと一緒に食べるか?」

「え?……ううん、まだ少しここに残ってるよ」


「わかった。じゃあ皆、またな?」


手を振ると、俺とシャルルは保健室を後にした――。




――保健室――


「……デュノア君って、お兄ちゃんの事が好きなのかなぁ?」

「「「え?」」」


ヒルトとシャルルが保健室を出た後、美冬が直ぐに口を開き、衝撃の内容を告げた。


「……えと、美冬ちゃん?」

「……ごめん、唐突過ぎたよね?――でもね、何となくデュノア君がお兄ちゃんを見てる目がそんな感じだったから…」

「い、幾らなんでも…ヒルトさんとデュノアさんは男同士ですわよ…?」

「うん。お兄ちゃんが男の子好きって事は無いから大丈夫なんだけどね。――うーん…」

「美冬の気にしすぎじゃない?ルームメイトだからちょっと仲が良いってだけかもしれないじゃん」

「……そうかも。考えすぎだよね、私」


――って思いたいんだけど…デュノア君って女の子の格好したら、女の子にしか見えなくなりそうだもん…。


――少し不安になる美冬だったが、その考えを払拭するように頭を横に振ると、そのまま布団を被って考えないようにした――。 
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