IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第268話】
前書き
ヒルト対鷹月戦です
試合開始のブザーが鳴り響くや、鷹月さんは静かに言葉を口にする。
「……参ります」
小さく、短い言葉を放つと同時に軽やかなステップで間合いを一瞬で詰める。
それと同時に、粒子形成を終えた近接ブレードを横一閃に振るった……。
「……!?」
鮮やかとも言えるステップと、速攻による一閃。
出だしを取られた俺は、腕部装甲で振るった剣撃を受け止める。
金属同士がぶつかり、小さく火花を散らす――油断はしてなかったが、あまりにも速い速攻に、何とか腕部装甲で受け止めるもののシールドエネルギーが僅かに減少していた。
「防がれた……? なら……ッ」
バックステップで距離を離し、またそこから速攻によるステップで間合いを詰めながらの突きによる一撃。
バックステップからの速攻の速さは、まるで蝶の様に舞い、蜂のように刺すを忠実に実行するかの様なヒット&アウェイ戦法。
流石に対応しきれず、装甲で受け止めると、激しく火花を巻き散らかせた。
「……これは。 うん、やっぱり有坂くんの機体の硬さは……」
掌から伝わったのだろうか、また距離を一旦離してから近接ブレードを握っていた手を握ったり開いたりを繰り返していた。
「……おいおい、鷹月さんに専用機与えた方が良いんじゃないか?」
そんな独り言をごちり、改めて鷹月さんへと視線を移す。
正直、一夏や篠ノ之と違って彼女の攻撃に転じる速さと離脱タイミングは、このやり取りだけで二人の上を遥かに上回るのが俺にもわかった。
出遅れながらも、天狼を呼び出すと俺は構える。
……てか、能ある鷹は爪を隠すとは、まさに彼女の為の言葉じゃないだろうか?
普段の鷹月さんとはまた違った一面を今覗かせていた。
「……うん。 狙うは脆弱な箇所だね……行きますッ!!」
「……ちぃっ!」
小さく打鉄のブースターを噴かせ、突発的な加速と共に、関節部分を狙った一撃を狙いにきた鷹月さん。
咄嗟のクイックブーストで横に逸れ、離脱と同時に横に切り払うも、打鉄のシールド操作によってその一撃が防がれ、打鉄のシールドの一部が欠けた。
離脱し、距離を取るも直ぐ様の追撃――攻勢に転じるその姿は、明らかに普段の鷹月さんとは違っていて――。
「はぁっ!!」
「クッ……これは……!?」
突きによる攻撃を、身を捩らせる事で避けるもののそこからの横一閃――軽い一撃ながらも、確実に村雲のシールドエネルギーを減少させていた。
――と、ここで見るに見かねたのか突如ムラクモが俺に語りかけてきた。
『苦戦してるね。 ……力、貸そうか?』
『……いや、何とかやってみるさ。 だからムラクモ、見ててくれ』
『……フフッ、了解~』
そんな楽しげな声で返事をしたムラクモ。
その声が聞こえなくなると同時に急上昇――気持ちを切り替え、追撃に来た鷹月さんを迎え撃つ。
また小さくブースターを起動させた鷹月さんは、突発的な加速と同時に突きの構えをとり――関節部分を狙って貫く。
だが、その一撃を避けるとそこには無防備な鷹月さんが上へと急上昇していくのが見え、下から天狼で斬り上げる。
刃がシールドバリアーに触れ、崩壊させるとそのまま生身を晒した足に切っ先が当たり、絶対防御を発動させて大きくダメージを負わせた。
急上昇からの後方宙返りを行った鷹月さん。
避けられるとは思わなかったのか、少し表情に陰りを見せていた。
ある程度の対峙でわかったが、彼女の攻撃は【軽い】。
一撃の出の速さを重視した為か、一撃一撃が軽いのだ。
だが――これは彼女のスタイルと合わせると最高の武器とも言えるかもしれない。
そのスタイルも、打鉄が防御特化型だからいざというときの被弾率軽減にも役立っているだろう。
――考察はこの辺りにして、今ので風向きが変わった筈。
出鼻を挫かれた俺としては、この攻勢に出るチャンスを逃したくない。
背部ブースターを点火、それと同時に天狼を腰だめに構え、振り抜くと同時に投擲――その動作の一拍後に急加速で天狼と共に間合いを詰めていく。
「……!?」
一瞬、何が起こったのかわからないといった表情になる鷹月さん――だが、それが俺からの速攻での攻撃とわかった時には既に遅かった。
大きく回転した天狼の刃が打鉄の二枚のシールドを両断――咄嗟に防御の為に前面に展開したのだろうが、それが一瞬の視界を奪う結果となり――。
「あっ……」
「悪いな、今回は俺の勝ちってね!」
勢いを失った天狼を掴むや、腹部に向かって一閃――シールドバリアーの崩壊と共に、絶対防御が発動――。
激しく絶対防御からスパークが放たれ、それが治まると同時に試合終了のブザーが鳴り響いた。
「……ふふっ、負けちゃったか」
そう鷹月さんが言葉を口にすると、ニコッと笑顔で応える。
「……鷹月さん、めちゃくちゃ強いな? 油断してなかったけど……戦い方、勉強になったよ」
「ううん。 私こそ、貴重な経験を体験できたから……有坂くん、ありがとう」
「……ヒルトでいいよ。 クラスメイト何だし、な?」
ニッと白い歯を見せ、笑顔で言うと一瞬目を見開き、少ししてから頬を少し紅潮させてから満面の笑顔で――。
「……うん! ヒルトくん♪」
そんな力強い言葉と共に、手を差し出す鷹月さん。
それを見た俺は、そのまま握手に応じた。
まだ残暑の残る九月三日の夕方。
黄昏の夕焼けが俺と鷹月さんを優しく照らしていた……。
後書き
この鷹月さん誰?Σ(゜∀゜ノ)ノ
謎の強キャラになってもた
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