IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第271話】
前書き
ヒルト対宇崎戦です
第三試合は、何故かろくに模擬戦を行わずにのほほんさんが降参したため、あっさりと終了した。
甘いものを食べたいらしく、とりあえず購買にアイスを買いに遅い速度で走っていった。
とりあえず、エネルギー補給もすぐに終わり、最後の相手である宇崎玲がラファール・リヴァイヴを纏い、クアッド・ファランクスをパッケージ装備していた。
「おー? 有坂ー、勝負勝負ーっ」
ヤル気満々の彼女は、片腕を天高く掲げてヤル気を見せていた。
「宇崎、また銃持ったら――」
「おー? あまり気にするなー」
まあ、確かに気にしすぎたらダメかもだけど。
少し不安な気持ちになるが、試合開始のブザーが鳴る――これで模擬戦も終わりだ。
計四試合、全部が良い経験になるかもしれない……。
改めて思うが、やはりこうして対峙してみてクラスメイトの実力には驚かされる。
少しでも訓練を休めば、それだけ彼女達に置いていかれるだろう。
……とりあえず今は宇崎との試合に集中しなければ。
ガトリング砲を構えた宇崎の目付きが変わる――普段の彼女とは違って、目尻を吊り上げ、鋭い目付きで――。
「ハハッ! 有坂ぁーッ!! 派手にドンパチと行こうじゃねぇかぁッ!!」
やはり銃を構えると、彼女の性格は変わるようだ。
好戦的――という表現が正しいのかはわからないが。
構えたガトリング砲の砲身が回転を始め――。
「装甲、削りとってやるぜぇ! 有坂ぁーッ!!」
四門一斉に火を噴き、クアッド・ファランクス周囲にガンスモークが立ち込める。
迫る弾丸を、サイドステップで回避しつつ、ランドホイールを起動し、砂塵を撒き散らせながら滑走していく――。
「ハッ! 逃がさねぇぜ!!」
マルチウェポンラックからミサイルを射出、俺の進行方向の地表を爆心地となり、大きく土が吹き飛び、クレーターが出来上がっていた。
「チィッ!」
クレーターを飛び越えるように跳躍。
そのまま空へと躍り出ると、ガトリング砲の砲火が止み――。
「これならどうだぁッ!?」
「……!?」
宇崎は、インストールしていたアンチマテリアルライフルを構え、射撃体勢を取る。
轟音と共に弾丸が放たれ、空薬莢が地面に落ちると鈍く音を立てた。
無防備な所を狙われ、背部ブースターの繋ぎ目部分に直撃、小規模爆発を起こす――。
「クッ!? パージする!!」
直ぐ様操作を行い、背部ブースターを切り離すと同時に、紫電が走り、大きな爆発を起こした――。
もろに爆発と爆風を浴びた俺は、体勢を崩したまま地表へと墜落する。
「おっと? 狙いが良すぎちまったなぁ……! じゃあ……ゆっくり装甲を削ってやるよ!!」
「クッ……! まさか繋ぎ目を狙うとは……!!」
何とか身体を起こすも、既に狙いを定めていた四門のガトリング砲からの一斉射撃。
腕部装甲を前面に出し、ガード体勢をとるとシールドバリアーを突破した弾丸を弾いていく。
だが、衝撃自体は当たった箇所から全身に痛みとして伝わり、苦悶の表情を浮かべる俺を見た宇崎は――。
「ハハッ! いい表情だなぁ……有坂? ……ゾクゾク来るぜ……お前のそんな表情を見るとなッ!!」
苛烈極まる銃弾の雨は止まず、ますます激しさを増していく。
墜落の衝撃で打ち所が悪かったのか、脚部スラスターとランドホイールがオフラインとなり、滑走も出来なければ出力不足で突発的な加速力も出せない。
その場に留まるのは危険なので、何とか足を動かし、走ってガトリング砲の砲火から逃れる。
反動自体が大きい為か、若干宇崎の狙いがずれているらしく、走った足元に弾丸が当たり小さく土を抉りあげる。
「……まだ動きやがるのか。 流石は村雲……いや、有坂って所か……」
小さく呟く宇崎の独り言をハイパーセンサーが拾う。
銃弾の雨が止み、宇崎を見ると四門のガトリング砲の砲身から煙が出てる為、今は冷却中。
――という事は、ここで懐に飛び込んで戦えばまだ勝機はあるという事だな。
そう考え、冷却が完了する前に俺は宇崎の元へ真っ直ぐと走り、突っ込んでいく。
「そう簡単に接近はさせねぇぜ? ……これで蜂の巣にしてやんよ!!」
両手にサブマシンガンを構え、迫る俺に弾幕を張る宇崎。
最初に習ったマルチステップを駆使し、タイミングをずらせ、マシンガンを回避し続けていくと苛立ちを隠せず、宇崎は舌打ちしながら――。
「チッ。 ……じゃあこれなんてどうだぁッ!? 派手に吹き飛ばしてやるぜぇ!?」
撃ち尽くしたサブマシンガンをかなぐり捨て、インストールしていたロケットランチャーを二門構え、更にマルチウェポンラックを起動させる宇崎。
刹那――迷うことなく一斉射撃し、この直撃を受ければ確実に負けが決まるのは目に見えていた。
迷ってる暇など無く、持っていた天狼をミサイルに投擲――接触と共にミサイルは爆ぜ、一斉射撃したロケットランチャーとミサイルを誘爆させていた。
爆発で視界が真っ白に染まり、爆炎で装甲を焦がし、シールドエネルギーも減少するなか、突き進み――。
「このまま接近戦で……!!」
爆煙から飛び出すように抜け、残ったスラスターを後ろに向けて急加速と共に拳でクアッド・ファランクスに攻撃を行おうと突撃した――だが、宇崎の口元が歪み、笑みを見せた。
「ほら、プレゼントだぜ……有り難く受け取りなぁっ!?」
「……ッ!?」
ピンを抜かれたフラググレネードを放り投げる――。
加速したら急には止まれない――まるでスローモーションの様に機体の横をフラググレネードが通り過ぎ、そして――。
炸裂し、大きな爆発に俺は飲み込まれると共に絶対防御が発動――試合終了のブザーが鳴り響いた。
爆発の衝撃に、横から爆煙を抜け出し、地面に墜ちてごろごろと転がり――止まると、夕暮れの赤い空が目に映った。
「……負けたか」
「おー? 今回は私の勝ちー」
試合が終わったと同時に、いつもの宇崎の声が聞こえ、倒れていた俺を覗き込む様に見つめていた。
「……完敗だな。 まさか背部ブースターの繋ぎ目狙われるとはな」
「おー、何とか当てたぞー? たてるかー?」
笑顔で手を差し伸べる宇崎の手を掴み、俺は立ち上がる。
「……悔しいが、勉強になったよ。 ありがとな、宇崎?」
「へへー。 でも、次はわからないから私も精進精進ー。 後、玲でいいー。 私もヒルトって呼ぶー」
にへらっと笑顔を見せる宇崎――いや、玲に、俺も笑顔で応えると。
「……あぁ、ならこれからは玲って気軽に呼ばせてもらうよ」
「おー! とりあえず、今日はヒルトが負けたから後片付けしとけー」
「……あぁ、派手に荒らしたからな」
そう言い、アリーナを見ると所々の土が抉れていた。
これは少し時間がかかるなっと思いつつ、苦笑しながらどうしたものかと思う。
徐々に夜のとばりが落ちる、九月三日の夕方での出来事だった……。
後書き
ヒルトの負け
勝ってばかりはただの無双ですからな
次は原作の朝礼かも
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