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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第273話】

 九月四日、現在午前八時半を回った辺り。

 朝一番に母さんからチョーカーを受け取り、これでまた万全に訓練が出来るのは有り難い。

 それはそうと、今日はSHRと一限目の半分を使っての全校集会が行われる事になった。

 全校集会自体、一学期でも行われなかったのはある意味で異例としか言えない気もしない。

 それはともかく、全校集会の内容については今月の中程にある学園祭についてと昨日山田先生から聞かされていた。

 右を向いても左を向いても女子ばかりなのを見ると、改めてここは異空間だと思わされてしまう。

 ざわざわとざわつく中、一人の女子生徒が壇上の前に立ち――。



「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」


 マイクで周囲一帯に響き渡るソプラノ声は、落ち着きがあって何処と無く心地好さを感じた。

 その女子生徒――多分生徒会役員の一人の声に、ざわつきが治まり、集まったホール内は静寂に包まれた。

 そんな静寂の中、足音が響き渡る――俺の良く知る先輩、更識楯無その人だった。


「やあ皆。 おはよう」

「!?」


 隣に居た一夏の表情が変わる。

 昨日の遅刻の原因となった人物が、壇上に立っていれば当然だろう。

 真っ直ぐと俺は楯無さんを見ると、それに気付いた楯無さんは――。


「ふふっ」


 互いの目が合うと、楯無さんは笑みを浮かべていた。

 相変わらず綺麗な人だなと再確認すると、黙ったまま楯無さんの言葉に耳を傾ける。


「さてさて、今年は色々と立て込んでいて、【一部生徒以外】にはちゃんとした挨拶がまだだったね――」


 そんな言葉と共に、一瞬俺を見る楯無さんに釣られて、皆が一夏を見た。

 流石にビクッと反応し、たじろぐ一夏を何やってるんだと思いつつ――。


「――ふふっ。 私の名前は更識楯無。 君たち生徒の長よ。 一学年の皆、以後、よろしく」


 柔らかな微笑みを浮かべる生徒会長に、女子一同の表情が変わり、熱っぽい溜め息が漏れ聴こえてくる。


「では、今月のIS学園一大イベントである学園祭についてだけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。 ……その内容というのは――」


 言いながら閉じた扇子を取り出し、横にスライドすると同時に空中投影ディスプレイが浮かび上がる。


「名付けて、『各部対抗有坂緋琉人&織斑一夏争奪戦』!」


 高々に宣言されたその言葉と共に、勢いよく開かれる扇子が静寂に満ちたホール内に響き渡った。

 その音と合わせて、ディスプレイに表示される俺と一夏の写真がディスプレイに映し出された。

 しかも、どこで撮ったのかやたら眩しい笑顔の俺の写真で、明らかにかなりの腕前のカメラマンが撮ったというのがわかった。

 ……てか、何気に恥ずかしいな、あんな笑顔を撮られたとあっては。

 ……と、静寂に包まれていたホール内が――。


「え……」

「「「ええええええええ~~~~~~っ!?」」」


 全校生徒の女子生徒の叫び声に、ホールが揺れた。

 隣の一夏は、ぽかんと口を開いたまま間抜けな顔をしてる中、全学年の生徒の視線が否応なく俺と一夏に集中していて、流石に気恥ずかしい思いでいっぱいになる。


「静かに。 学園祭では毎年各部活動事の催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。 ――しかし、今回はそれではつまらないと思い――」


 勢いよくセンスで俺と一夏を指す楯無さんは、言葉を続けていく。


「有坂緋琉人、及び織斑一夏両名を――一位の部活動に強制入部させましょう!」


 そんな楯無さんの言葉に、男に勝るとも劣らない雄叫びを上げる女子一同。

 ある者は叫び――。


「うおおおおおおっ!」


 ある者は提案した楯無さんに――。


「素晴らしい、素晴らしいわ会長!」


 そしてある者は野生の咆哮の如く――。


「こうなったら、やってやる……やぁぁぁってやるわッ!!」


 またある者は――。


「今日から直ぐに準備を始めるわよ! 秋季大会? ほっとけ、あんなん!」


 各々の魂の叫び(?)を聞きつつ、頭が痛くなる思いだった。

 ……部活動、女子の大会に男は出れないのは当たり前。

 つまりは労働力の確保だが、各部活動が思い描く構図は、一夏にマネージャーやらせて、俺には大量の雑用――柔道部なら柔道着の洗濯やら買い出しやらをやらされるに決まっている。


「というか、俺達の了承とか無いぞ……なあヒルト?」

「……この世は女尊男卑、選択権も決定権も、全部女の子の掌って訳だよ」


 そう一夏に静かに告げ、楯無さんを見ると俺に気付き――。

「あはっ♪」


 悪びれもせず、ウインクを返す楯無さん。

 頭痛が最高潮に達する中、女子一同のボルテージもヒートアップしていき――。


「よしよしよしっ! 盛り上がってきたぁぁッ!!」

「今日の放課後から集会するわよ! 意見の出し合いで多数決取るから!」

「最高で一位! 最低でも一位よ!」


 ヒートアップした女子を止めることはもう誰にも出来ない。

 美冬の心配そうな視線にも気付かず、頭を抱えた俺を他所に俺と一夏の争奪戦開始の合図が静かに鳴り響く――俺の承諾も無いままに……。 
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