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黒魔術師松本沙耶香  銀怪篇

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12部分:第十二章


第十二章

「どうかしら」
「ここで」
「よかったらそれで」
「言ったわね。じゃあいくわよ」
 一人を抱き寄せた。そして。
「さあ貴女も」
「はい」
 三人で宴に入った。そのまま二人を溶かすようにして弄んでいく。それが終わりまだ夢から覚めない二人を両手に抱いてホテルから出て来た。服も髪も当然のように整え終えている。
「これが女の人なんですね」
「どうかしら。よかったかしら」
「また・・・・・・お会いできます?」
 一人がうっとりとした顔で沙耶香の顔を見上げてきた。
「よかったら」
「私も」
 もう一人も言ってきた。
「またお会いしたいです」
「いいですか?」
「困った娘達ね」
 沙耶香はそんな二人の言葉を聞いて笑った。困った苦笑いではなく悠然とした妖しい笑みであった。
「それじゃあ。時々会いたいわ」
「はい」
「宜しければ」
「その時にまた色々と教えてあげるわ」
 二人の顔を見て言う。
「色々とね。それでいいわね」
「ええ」
「またお会いしてそれで」
「それからは今度ね」
 そこから先は言わせずにこう言った。
「携帯の番号はもう覚えたから、二人共ね」
「じゃあ原宿でまた」
「もっといい場所を教えてあげてもいいわよ」
「もっと、ですか」
「それもね。後々でゆっくりとね」
「はい・・・・・・」
 二人は完全に沙耶香のものとなってしまっていた。その身体に少女達の残り香を濃厚に残したまま彼女は次の場所に向かった。向かうのは清水亜美の場所であった。
 収録前の休憩時間であった。亜美はその合間を利用して楽屋で一人食事を摂っていた。簡単なサンドイッチである。
 茶色の髪をショートにした長身の女の子であった。スタイルはかなりいい。そのスタイルをラフなシャツとジーンズで包んでいる。それがまたスタイルを際立たせる格好であった。
 沙耶香はその彼女の横に座った。だが亜美はそれに気付かず相変わらずサンドイッチを食べている。
 サンドイッチは野菜サンドとツナサンドであった。肉等は入っていない。側に置かれているペットボトルのジュースもまた無糖のものであった。スタイルを気遣ってであろうか。
「ねえ」
 沙耶香はその亜美に声をかけてきた。ごく自然に。
「貴女、付き合ってるそうね」
「!?誰、あんた」
 ここでようやく沙耶香に気付いた。顔を向けた時だった。
 沙耶香は彼女の唇を奪った。口の中に舌を入れ亜美の舌と絡み合わせる。一瞬だが確実に彼女の唇を奪った。

 
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