IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
【第371話】
前書き
も、も、模擬戦なんだな
お、おむすびの神様に、な、なりたいんだな
久しぶりに裸の大将見た
放課後、第二アリーナ観客席。
模擬戦は既に始まっていて一夏の最初の相手は玲だ、纏っている機体はラファール・リヴァイヴ、ついでにパッケージ装備のクアッド・ファランクス付き。
「ハハハッ! 蜂の巣にしてやんよぉ! 織斑ーッ!!!!」
四門のガトリングガンを構え、面制圧するように弾丸をばらまく玲――樽型弾装から排出される空薬莢が、クアッド・ファランクス周囲に散らばって落ちていく。
「っ! 接近戦が出来ねぇ! 今度は外さない!!」
左右に機体を振りつつ、月穿の最大出力による射撃を行うも、狙いをつけにくく、弾幕を張り続ける玲によって射線をずらされ、クアッド・ファランクス左後方に着弾――派手に地表を抉る。
「クッ……! 相手は止まってるのに何で……!」
「どうした織斑ー? ワンサイドゲームにしてくれんじゃねぇのかよ!?」
ガトリング砲の砲身から煙が上がる――あのまま撃ち続けると、先にガトリング砲の砲身がダメになると直ぐに判断するや、一旦ガトリングから手を離すと左手に手榴弾を構え、右手にはマークスマンライフルを粒子形成化させた。
「射撃が止んだ? ――月穿ィッ!!」
再度最大火力で放つ一夏――ビリビリとアリーナのバリアが振動する音が響き渡る。
一夏にとってやって来たチャンスも、玲にとっては予測できた事態だったのか表情を崩さずに前方に手榴弾を投擲――それをマークスマンライフルでピンポイントで信管を撃ち抜くと、破裂と同時に光の細かな粒子片が周囲に四散した。
そこを突き抜ける様に進む荷電粒子のエネルギー――かと思われたがそのエネルギーが突如弾けとび、決定打にすらならなかった。
「なっ!?」
必中だと思った一撃が四散し、驚きを隠せずにいた一夏に対してマークスマンライフルでの射撃と平行してミサイルの水平発射。
轟音と共に白煙を上げて突き進むミサイルを避けようと動く一夏だが、玲はそれを許さず、マークスマンライフルで回避先を執拗に撃ち、足止めさせた。
さっきの手榴弾の中身は多分粒子撹乱膜の入った特殊な手榴弾だろう――相手の能力を踏まえた上での装備のチョイスという訳だな、これが。
「そう簡単に避けさせねぇぜ、織斑ーッ!?」
「く、クッソーーーーッ!!!!」
一夏の叫びも虚しく、直撃したミサイルの爆音にかき消されて聞こえなかった。
――試合終了のブザーが鳴らない所を見ると、まだ一夏のシールドエネルギーが残っているのだろう……と、隣に座っていたラウラが。
「これは――驚いたな、どうして宇崎玲が日本の代表候補生に選ばれないのかが不思議だ。 いくら私でも、小さな手榴弾の信管をピンポイントで撃ち抜くには眼帯を取って補助を行わないと難しいからな。 それをハイパーセンサーがあるとはいえ……恐れ入る」
感心した様にそう呟くラウラ――確かに、背部ブースターの繋ぎ目を狙ったりする辺り、射撃能力は高いだろう。
「我が部隊、黒ウサギ隊にスカウトしたいほどだ」
「それほどなのか?」
「うむ。 因みにだが我が黒ウサギ隊の軍服はミニスカートタイプが主流だ。 私は穿かないがな」
「成る程……」
「だ、だが……もしヒルトが興味あるのであれば……穿いて見せても良いぞ?」
軽く上目遣いでそう言うラウラに、照れ隠しで鼻の頭をかくだけにした。
ミニスカートタイプの軍服――明らかに広報目的にしか感じない、ドイツ軍広報の。
女尊男卑とはいえ、反論が無い辺りは軍服事態が可愛くて気に入ってるのか、はたまた別の理由か……。
そういや夏に見たラウラの黒服、あれがラウラの軍服……だと思うが、少し記憶が曖昧になっている。
――と、爆煙が晴れ、白式の装甲が少し黒い煤がついていた。
「っ……! 何とか凌いだけど……このままじゃ……! でも……まだ逆転出来る……!」
そうごちる声が聞こえてくる――と、美冬が。
「……うーん、何で織斑君はまだ逆転出来ると思うんだろう? 確かに諦めない気持ちは大事だよ? でも気持ちだけでどうにかなるのなら、皆逆転勝利できるし」
確かに、気持ちだけでどうにかなるなら苦労はしない。
……勝負を捨てないというのは悪いとは思わないが、一夏に足りないものは考える力かもしれない。
そう考える俺を他所に、玲は更に苛烈な攻撃を加えていく。
一夏も、当たらない様に避けるがかなりのエネルギー消耗故か、徐々にシールドエネルギーが削られていく。
「埒があかねぇ! 零落白夜で一気に決める!」
そう叫ぶ一夏の雪片から零落白夜の光刃が纏うと、白く輝きを放ち始めた。
「……一夏って、何でいつも手の内を晒す様な事を言うんだろうね?」
シャルの指摘に、それは俺も思うが実は俺も結構武装名を叫んでいたりするので人の事が言えない。
「織斑一夏の癖じゃないのかな? ヒルトも時折使ってる武器の名前叫ぶけど」
シャルの隣の美春がそう告げる――しかも、今まさに俺の考えていた事をそのまま伝えたので内心びっくりしたのは内緒だ。
「うーん、僕が六月に教えた頃は、あんまり叫ぶイメージ無かったんだけどなぁ……。 もしかして、篠ノ之さんの影響なのかな?」
そう言って離れて座って見ている篠ノ之に視線を移すシャル――因みにだが、今俺が座ってる周囲に美冬、美春、シャルにラウラと座っているので見る人によれば完全に小さなハーレムを作ってる印象だろう。
――まあ、今は普通に試合の考察をしてるからそんな良いものでは無いが。
セシリアは今日も別のアリーナでフレキシブルの訓練を行い、鈴音は「多分一夏が負けると思うからアタシはパス、それに国に今度のキャノンボールで使うパッケージ、まだかって聞かないといけないし」――との事。
未来も今日は雑誌のモデル話が来てるらしく、それを断るために席を外してるのだが――美冬もだが、あまりにしつこいモデルとかの話に「お兄ちゃんと一緒なら良いですよ」って言って断ってる。
……てか俺がモデルとか似合わないだろ、容姿とかは皆良いとは言うが、俺以上に面のいい男は無数にいるからな――成樹とか。
――そういや、成樹やたっくん、信二はキャノンボール見に来るのだろうか?
チケットが高いからな……確かS席が五万、A席三万、B席一万、自由席二万(決められた範囲の自由席)、見通しの悪い席でも五千だからな。
VIP席は専用個室で食事つきで百万って訊いたが……高過ぎる。
後はアリーナ内部で土産物店もあるし、良からぬ噂では賭け賭博もあるとか。
あくまでも噂は噂だが、火の無い所に煙は無いと言うが――それよりも、試合だな。
また意識を再度アリーナ中央へと向けると、ちょうど瞬時加速で玲の弾幕を無理矢理押し通り、一気に肉薄していく。
「うぉぉおおおお!!」
間合いを詰めると共に上段に雪片を構え、一気に切り伏せようと振るう一夏だが、玲もこれを受ければ死ぬというのがわかっていて左二門のガトリング砲身で受け止めた。
バチバチと火花と共に光刃が輝きを放つ。
「このまま――押し通る!!」
「させねぇよ織斑ぁッ!!」
ガトリング砲身で防ぎつつ、右ガトリング砲で勢いよく突き飛ばすと、一夏は体勢を崩して背中から落ちていく。
「ぐ……はっ!?」
圧迫されたことにより、一気に肺から空気が抜けたのだろう、苦しそうに上体を起こす一夏の眼前に突き付けられる右側二門のガトリング砲――。
「チェックメイトだな、織斑!」
「――!?」
砲身が回り始め、砲口から白煙と共に放たれる無数の弾丸が白式の残ったシールドバリアーを一気に削っていく――そして、ブザーが鳴り響き、試合は玲のワンサイドゲームという結果に終わった。
「馬鹿な!? たかが訓練機に遅れを取るとは――! 一夏の奴、ちゃんと私の言う通り実践していればこのような事は無かったのだ!」
怒りを隠さず、観客席からピットへと走って駆けていく篠ノ之を他所に、玲は――。
「おー? 織斑ー、この程度かー?」
「……ッ!」
「織斑ー、正直がっかりだぞー? それにー、零落白夜は危ないから使用は控えた方がいいと思うぞー」
間延びした声だが、案外的確な意見――というか、皆が気付いている意見を伝える玲。
「…………ッ、まだ一敗しただけだ。 次、挽回すればいい……!」
玲の言葉が耳に届かなかったのか、そのままピットへとエネルギー補給に戻っていった一夏を、玲はぽかんとしながら眺めて――「まあいいかー」――そう呟いてクアッド・ファランクスを粒子化させてピットへと戻っていった。
――とりあえず一戦目の模擬戦が終了し、俺は。
「……一夏の悲劇って、篠ノ之に教わってる事かもしれないな」
何気ない言葉だが、皆一様に頷いたのを空気で感じた。
「なあシャル、六月に教えて以来、あいつお前に教えを請いに来た?」
「え? ううん、教えた後は僕とヒルトでタッグを組んだでしょ? だから教える機会は無かったから。 大会終わった後も、一夏は教わりに来なかったなぁ……」
「……ふむ。 あいつって、頭下げて教えを請うてる所って見たこと無いんだよな……鈴音然り、シャル然り、篠ノ之然りって」
多分だが、あいつの中では「女に頭を下げるなんてそんなカッコ悪い事、出来るか」ってぐらい思ってそうだ。
……周りの女子は、そんな【女尊男卑に負けない織斑君が素敵】って思考だし……俺がやればダメなのに。
軽く息を吐くと、俺はアリーナの抉られた土を直す機械に目を向け、何と無くそれを眺めて第二試合を待つのだった……。
後書き
代表候補生より強くね?Σ(゜∀゜ノ)ノ
それぐらいインフレした戦闘能力( ´艸`)
ページ上へ戻る