IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第382話】
オープンカフェを指差す一夏に、真っ先に言葉を口に出した五反田さん。
「い、一夏さん、あそこのオープンカフェ、結構高いですよ? わ、私はファーストフードでも大丈夫ですから」
そう言って遠慮する五反田さん、確かにあそこのメニュー一品でファーストフード腹一杯食べれるからな……コスト的に見ればファーストフード一択で構わないのだが……一応シャルも居るからな。
「僕もファーストフードで構わないよ? 確かにあそこのオープンカフェの雰囲気は僕、好きだけど蘭ちゃんやヒルトは気楽に食べられるファーストフードの方が良いんじゃないかな?」
そう首を傾げるシャル、確かに俺はともかく五反田さんは小遣いがどうとか言ってたし……基本割り勘だろうしな、シャルの性格的に見ても。
――と、一夏は。
「大丈夫だって、俺が奢るし。 あ、ヒルトは自腹だぜ?」
「別に最初から払うつもりだから、奢ってくれなんて言うつもりもないよ」
別に一夏に奢ってもらう筋合いは無いのだし――俺も基本的に友達や美冬、未来と外食は割り勘が当たり前だからな。
「一夏、僕は奢らなくていいから蘭ちゃんに奢ってあげてね?」
「ん? 何でだ? 遠慮するなよシャル、男が女にお金を払わせるわけにはいかないだろ? カッコ悪いし」
……何気にその言葉、ぐさりと突き刺さるのだが……。
「とりあえず入ってランチにしようぜ」
善は急げとばかりに一夏がオープンカフェに向かうので、仕方なく後を追って俺もオープンカフェへと向かい、店内に入ると――。
「うん、やっぱり凄くお洒落だね。 今日は日差しが暖かいからロケーションも僕にとっては抜群かな」
そう言いながら風が髪を撫でていく――金髪が陽光に反射して、更に輝きを放っていた。
各々が席へと座って直ぐに店員がやって来て――。
「いらっしゃいませ」
笑顔を見せながら、四人分の水が入ったコップを置いていく女性店員。
更にメニューを置き、俺がそれに手を伸ばそうとするよりも早く一夏が――。
「あ、本日のランチって何ですか?」
「はい。 本日は蟹クリームスパゲッティとなっております。 デザートは梨のタルトです」
「じゃあ、それを四人前ください」
「畏まりました」
一礼して去っていく店員。
……俺、その蟹クリームスパゲッティが食べたい何て言ってないのに……。
そう思い、俺は怨めしそうに一夏を睨むと――。
「な、なんだよ」
「……お前が勝手に俺のメニューまで選ぶから睨んでるんだよ」
「……そうだね。 確かに一夏の頼んだランチは美味しそうだけど、やっぱりメニューは自分で決めたかったな、僕」
そう言ってシャルは俺に賛同してくれた――そりゃ、昼御飯ぐらい自分の食べたいものを食べたいに決まってる。
実際、メニューを手に取り、見てみるが何れも美味しそうだ――値段は高いが。
軽くため息をつくと、五反田さんは――。
「わ、私は一夏さんが選んでくれたものなら何でも大丈夫ですよ。 そ、そういえば一夏さん、何だか手慣れてる感じがしましたけど、よくこういうお洒落なお店に来るんですか?」
気になるのか、一夏の顔を覗き込む五反田さんに、一夏は直ぐに答える。
「いや、外食はあんまりしないなぁ。 あ、でも蘭の家では結構食べてるよな」
「う、うちみたいな定食屋と一緒にしないでくださいよ……」
そう言って俯き、テーブルの上で指を弄ぶ五反田さんに、一夏は気にする事なく更に言葉を紡ぐ。
「なんだよー。 恥ずかしがる所じゃないだろ。 五反田定食、美味いじゃん」
「私はあの名前自体が嫌なんですけど……」
まあ確かに年頃の女性からすれば定食屋よりも、もっとお洒落な感じの方が良いのだろう――定食名も、まんま五反田定食ではなく、お洒落な感じの。
この辺りは二十歳を越えた辺りから、多分愛着を持つんじゃないかなと思ったりする。
そんな事を考えつつ、行き交う人を眺めていると――。
「と、ところで、その……シャルロットさん」
「ん? どうしたの、蘭ちゃん?」
言いにくそうに口をモゴモゴと動かす五反田さんを、シャルは向日葵の様な笑顔で応える。
「そ、その……。 ……しゃ、シャルロットさんは……一夏さん狙いじゃないです……よね?」
「へ?」
一瞬きょとんとするシャル、時折不安そうにシャルを見てたのはそれが原因だったのだろうか?
……てか、シャルが一夏狙いなら何で俺と手を繋ぐのかが意味わからなくなる、さっきだって五反田さんは見ていた筈なのに――とはいえ、好きな人と一緒に居たら、他の人の事の記憶なんて直ぐに飛んでいくのかもしれないが。
「ふふっ。 蘭ちゃん、安心していいよ? 僕、正直一夏の事狙ってないし」
「え? 何だってシャル?」
……確かに人の行き交う喧騒の中に居るとはいえ、この距離で聞こえない一夏の耳に必須なのは絶対補聴器にしか思えない。
そんな一夏を無視し、コップに口をつけると一口シャルはそれを飲んだ。
「そ、そうですか……。 良かったです、シャルロットさんがライバルだと、私は敵いませんから。 ……後は鈴さんと……篠ノ之箒さんだけか……ライバル」
そう呟く五反田さんだが、生憎と鈴音ももう一夏をフッたのでライバルですらない――当人はフラれた事すら分かってないのだが、仮に俺が鈴音と今度デートするぜって言ったらどうなるのだろうか?
或いは鈴音とキスしたぜとか……まあどんな反応になるかはわからんが、こいつも篠ノ之だけじゃなくちゃんと鈴音も構えばこんな事にならなかった筈だし、鈴音にISを教わればもっと動きもましになるだろうに――篠ノ之優先してばかりだったからな、こいつ。
正確に言えば、篠ノ之に連れられて訓練って形だったが……そういや、四月に転入してきた時も、上級生が教えようとしたのを篠ノ之が――「私が教えます。 私は、篠ノ之束の妹ですから!」――と言いつつ、割り箸を折っていて、上級生も諦めた形になった。
――それはさておき、鼻腔を擽る良い香りが漂ってきて、匂いの元を辿るとウェイターが器用に頼んだ(一夏が勝手に)ランチメニューを持って此方にやって来た。
「お待たせいたしました」
ウェイターがそう言ってまずは女性陣から皿を並べていき、次に俺達男性陣へとスパゲッティの皿を並べた。
見た目は確かに美味しそうだが、俺としてはシンプルなトマトスパゲッティでも良かった……。
「それでは後程デザートをお持ちしますので」
一礼し、テーブルを離れるウェイターは、新しく入ってきた客を席へと案内しに移動した。
シャルが気を利かせ、全員にスプーンとフォークを手渡していく。
「あ、ありがとうございます。 シャルロットさん」
「ううん。 はい、一夏」
「おぅ、サンキュー」
そう言ってスプーンとフォークを受け取る一夏。
「はい、ヒルト。 ……ヒルト、お昼はそれだけで足りるの?」
「ん? 途中でホットドッグなり何なりって食べるから大丈夫だ。 ありがとうな、シャル」
そう言って全員受け取ったのを確認したのか、一夏がまず最初に――。
「いただきます!」
そう言ったので、俺達三人もそれに続く。
「いただきまーす」
「いただきます」
「い、いただきます」
各々が手を合わせ、食事を取り始めた。
早速一口、それを食べると一同が――。
「おお、美味い!」
「そうだね。 生パスタって書いてあったもんね。 ヒルト、どうかな、味は?」
「ん? 美味しいぞ? ――だが、やはりメニューは自分で選びたかったな」
パスタを食べ、再度一夏を睨むと一夏は怪訝な表情を浮かべながら――。
「何だよ、しつこいな。 美味しいからいいだろ?」
いや、そういう問題じゃないって。
確かに四人同じものを纏めて頼めば店としても楽だろうし、俺達からすれば直ぐに食べられるが、人にはその日に食べたいものという物がある。
それを無視して勝手に頼んだのだから俺も言うのだが……あんまりだ。
「蘭はこのスパゲッティ、どう思う?」
「え? も、勿論美味しいですよ、一夏さんっ」
「だよなぁ」
賛同を得られて嬉しいのか、笑顔の一夏だが――五反田さんは一夏に好意を抱いてるのは誰から見ても明白であるのは間違いない。
そんな彼女が、もし一夏と反対意見を言って一夏に嫌われたらどうしようと思うのは自然な事だし、賛同するのは当たり前だろう。
嫌われたくないからイエスマンになる……これは、苛められたくないから力の強いやつにご機嫌伺いをするのと同様のものだろう。
本当なら彼女も、俺が別行動提案した時、内心では賛成だったはずだ、想い人と二人っきりになれるチャンス何て早々無いし。
だがそれでも、一夏の四人で回ろうというのに賛同したのは嫌われたくない一心だからだろう……まあ、俺は彼女じゃないから本心はわからないが。
とはいえ、言い争っても食事が不味くなるだけなので、とりあえず食事を進めていき、直ぐに完食し終えた。
「……相変わらず食べるの早いな、ヒルト。 よく噛んで食わねぇと太るぞ」
「……お前、本気でムカつくな。 ちゃんと食べて噛んでるから大丈夫だバカ」
太ると言われ、カチンと来てしまい口調も悪くなってしまうのだが一夏は――。
「……何怒ってんだよ。 人が心配してやってんのに」
そんな上から目線の心配なら余計なお世話にしか感じない、小さな親切大きなお世話だ、俺は確かによく食べるがちゃんと体調管理もしてるし、食べないと体力回復しないから仕方ないだろうに。
食べ終えた俺は、シャルの食べる姿を眺める。
小さな口に収まっていくスパゲッティを見てると、不意にシャルとのキスが脳裏に過り、顔に熱を帯びるのを感じた。
「……ヒルト?」
「あ、悪い。 つい見てただけだから」
「……フフッ。 一口食べる?」
そう言って自身の皿からスパゲッティを取り分けるシャル。
「……良いのか?」
「うん。 確かに美味しいけど、色々カロリー気にしちゃうからね。 ……はい」
そう言って皿に盛り付けるシャル。
「悪いなシャル、この借りは今度返すよ」
「フフッ。 じゃあ期待してるね?」
そう言ってシャルは再度スパゲッティを食べ始め、俺も一口盛られたスパゲッティを食べる。
暫く喋ることなく、食事が進み、全員が食べ終えたのと同時にデザートが運ばれてきた。
「あれ? この付け合わせのアイス、四人とも違うんだな」
一夏の指摘通り、確かに四人のアイスはそれぞれ違っていた。
「本当だね。 何でだろ?」
軽く首を傾げて、シャルは自分の前にあるチョコアイスを眺めた。
「え、えっと、私のがストロベリーアイスで、一夏さんのがバニラアイス、シャルロットさんのがチョコアイスで有坂さんのが抹茶アイスですよね」
「だな」
……何で俺が抹茶なのだろうか?
嫌いではないが、正直バニラの方が欲しかった。
このお店、気が利かないのでマイナスだな、というかアイスを四人別々の味で出すのではなく、注文の時に各々「何味がよろしいのですか?」と聞くのが接客業だろうに……。
幾らロケーションが良くても、客の望まない味のデザートを出すお店というのならば、今後ここを利用することは無いだろう。
そう思いつつ、スプーンに手をつけたところで一夏が――。
「どうせなら食べさせ合いっこしようぜ」
――耳を疑う言葉、男が食べさせ合いっこ何て気持ち悪い言い方をするので、背筋に悪寒が走ってしまった……。
後書き
一夏の不快指数が右肩上がり( ´艸`)
そろそろオゾン層より上に上がりそうですな('A`)
原作でも三人纏めて注文してますが、それで通じる子って少ない気がします('A`)
そして【食べさせ合いっこ】発言、気持ち悪い('A`)
女の子ならいざ知らず、男の一夏が食べさせ合いっこって('A`)
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