IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第378話】
日曜日の朝。
今日は先週から約束していたシャルと鈴音二人と買い物の日だ。
着ていく服装はというと黒のカットPコートに下は赤いパーカー、インナーには白の長袖、ズボンは黒のデザインジーンズを穿く――。
よくわからんが、美冬的にこれがカッコいいらしく、更にそこから帽子やらサングラスやらアクセサリー等で着せ替え人形よろしく、かなり色々着けさせられた。
とはいえ、シンプルなのが一番という事でアクセサリーは着けない――チョーカーと、母さんから貰った銀のロザリオ、後はシャルから貰った黒のブレスレットのみ。
全身黒い印象だが、黒が好きなんだから仕方ないじゃないか。 という事で、出掛ける準備を終えた俺は、財布と携帯をポケットに突っ込み、鍵を机から手に取ると部屋を後にするのだが――。
「ひ、ヒルト」
「ん?」
部屋に鍵を掛けていると、俺の名を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと制服を着た鈴音と見慣れないスーツを着た二十代後半の女性が立っていた。
「き、今日の買い物。 あ、あたし……行けなくなっちゃったの。 め、メールで返事をするのも何か悪いし、無理言ってヒルトの部屋まで来たらあんたが居たから……」
申し訳なさそうな表情を浮かべる鈴音。
後ろの女性は眼鏡を右手で直しながら鈴音を眺めていた。
「気にするなよ、また今度行こうぜ?」
「う、うん。 本当にごめんね……?」
「良いって。 行けなくなった用事って、キャノンボール関係か?」
「う、うん。 今日届いたって、この楊候補生管理官が……」
そう言って紹介されたスーツの女性は――。
「初めまして、今紹介に預かりました国家代表候補生管理官の楊です。 貴方が噂の有坂ヒルトですか……成る程」
そう言って爪先から頭のてっぺんまで一瞥する彼女は――。
「……織斑一夏と違って、貴方には覇気みたいなものを感じられませんね。 何故凰鈴音代表候補生が彼より貴方を選んだのか、理解に苦しみます」
悪びれる様子もなく抑揚の無い声で淡々と伝える彼女に、あまり好感を持てずにいると――。
「あ、や、楊候補生管理官! そろそろトライアルに向かいましょう! 直ぐに追い掛けますので先にパッケージの準備を!」
そう促す鈴音に、怪訝な表情を浮かべた楊と呼ばれた女性は、ため息を溢すとそのまま俺の横を通って向こう側へと消えていった。
「……もう、あのおばさんヒルトの悪口言って……! ……ヒルト、ごめん。 でも中国人皆があんな感じって訳じゃないからね? た、大陸気質な人が多くてやんなっちゃう……」
「ふむ。 ……まあ日本と中国は仲が良いとは言えないからな。 尖閣諸島問題もあるし」
「ぅ、ぅん……。 あ、そろそろあたし、行くね? あ、アタシは……あんたの事……す、すす、すすきだからっ!」
そう言って脱兎の如く通路の向こう側へと消えていく鈴音に、すすきってなんだと思いつつ、俺は再度ドアの鍵が施錠されているかの確認を行うと、学園寮近くの駅へと向かっていった……。
――レゾナンス駅前付近――
モノレールに揺られ、レゾナンス駅へと到着すると、そのまま降りる。
休みという事もあってか、駅には家族連れやカップル、友達同士等のグループが多々見える。
駅員達は、老人の電車の乗り換え等の応対していて忙しそうにしてるのが見られた。
駅構内の階段を降りていく、人の波をするりと掻い潜り、レゾナンス駅前に出て駅前モニュメントを見つけ、足を運ぶ――と、少し離れた所にシャルと見慣れない男の二人組が居た。
――いや、何処かで見た気がしなくもない、だが思い出せない辺りはどうでもいい記憶なのだろう。
そんな男二人組は、見た感じそのまま『遊び人』といった感じの風体だった。
足を止める事なく近付くと、徐々に会話内容が聞こえてくる。
「ねえねえ、カーノジョっ♪」
「今日ヒマ? 今ヒマだよね? 僕達とどっか行こうよ~」
明らかなナンパに、シャルは怪訝そうな表情を一瞬見せるが、出来るだけ傷付けないようにする為か、笑顔で――。
「すみません、約束がありますから」
――そう笑顔で応えるのだが、そのシャルの反応に多少脈ありと思ったのか更に一歩前に近寄る。
俺は、それにイラッとするが、人混みが邪魔をしてシャルの元へと行けずにいた――てか、この人混み、全然途切れないんだが。
「えー? 良いじゃん、良いじゃーん、遊びに行こうよ~♪」
「俺、車向こうに駐めてるからさぁ。 どっかパーッと遠くに行こうよ! フランス車の良いところいっぱい教えてあげるから!」
そう言って男の一人が指差した先には、確かにフランス製の車が駐まっていたのだが、あそこは確か駐禁の筈。
そんな事はお構い無く、男二人はシャルにナンパを続けるのだが。
「日本の公道で燃費の悪いフランス車ですか。 ふうん」
明らかな作り笑顔のシャルだが、男達二人はそれが更に【脈あり】に見えたらしく、シャルの肩に手を置こうとしていた。
人混みが疎らになった隙をつき、一気に抜け出ると俺はシャルに声をかける。
「おっす、シャル。 早いんだな。 まだ時間三十分前だぜ?」
「あ、ヒルト……! 良かったぁ……」
そう言って声をかけると、シャルは安堵したのかホッと一息吐いた。
直ぐ側によると、俺の服の袖口を掴むシャル。
一方、シャルをナンパしていた男二人は俺を見るなり――。
「あ! てめぇ、四月の時の奴じゃねぇか!」
「あ、そうだ! てめえのせいで警察に罰金を払う羽目になったんだぞ!」
何やらごちゃごちゃと文句を言いながら詰め寄る男二人のうちの一人に胸ぐらを掴まれ、もう片割れには力一杯肩を掴まれた。
そんな男二人の様子に、シャルが怪訝そうな表情を浮かべて相手の手を払おうとするが、俺はそれを止めるように手首を掴んだ。
いくら代表候補生でも、流石に手を出したとなれば下手すると国家間の問題に発展しかねないし、シャルの立場も現在非常に良くない立ち位置というのもあるからだ。
手首を掴まれ、シャルもわかってくれたのか成り行きを見守る事にしたようだ。
それはさておき、四月――と聞いて思い当たるのは、多分未来をナンパしてた奴の事かなと思う。
そう思い、二人の顔をよく見ると、確かに四月に未来に絡んでいた男達だった。
一方が顎髭を生やしていて、もう片方は更にピアスの数が増えていた。
「あぁ、そういやそんな事もあったな。 ――てか、明らかに強引なナンパは新しく施行された条例違反だぜ?」
「あぁッ!? 知らねーよ、そんなのッ!」
「てめえぶん殴ってこの子、貰っていくぜ! 二対一で勝てると思うなよ、クソガキッ!」
そう言って胸ぐらを掴んでいた男は、拳を振り上げる。
真っ直ぐと顔面に叩き込もうとするその拳を、ひょいっと避けると顔の横を拳がすり抜けていった。
「……悪いが、こんな人前で喧嘩するつもりか? 先にちょっかいかけてきたのはそっちだし、既に目撃者も複数いる。 更に言えば側に派出所もあるんだ、あんまり目立った事すると捕ま――」
「ウルセェッ! てめぇを一発殴ってやんなきゃ気がすまねぇんだよ!」
そう言って再度拳を振りかざすナンパ男、拳を振り下ろそうとしたその時、ナンパ男の顔面に『誰か』の拳がクリーンヒットし、思いっきり横に吹っ飛んでいった。
因みに俺ではない、俺が殴れば真後ろに吹き飛ぶ筈だし、そもそも俺は喧嘩をするつもりはない、多少口が悪くなることもあるが、拳を振るう時は何か理由がある時だけだ。
吹き飛ばされた男の元へ、もう一人の男が駆け寄る。
吹っ飛び方が悪かったのか、頭をコンクリートでしこたま打ったらしく、舌がだらしなく口元から出ていた。
……てか、死んでないよな。
そう思いつつ、胸ぐらを掴んでいた相手を吹き飛ばした犯人の顔を見て、俺は頭が痛くなる思いだった。
「俺の連れに何してんだ?」
……一夏である、確かに俺は胸ぐらを掴まれていたし、殴られそうにはなっていたが可能な限りは穏便に事を納め様としたのが台無しだ。
流石に相手が殴られた事によって、場が騒然とする中、派出所から中年巡査らしき人物が騒ぎを聞きつけやって来た。
今から逃げたのでは問題になると思い、その場に待機していると一夏が。
「ヒルト、シャル、無事か?」
「「………………」」
俺もシャルも何も答えない、ただ、一夏を残念そうに見てるだけだ。
一夏はそんな俺達を、首を傾げて見つめるだけだった。
後書き
一夏がやっちゃった( ´艸`)
てへペロッ(・ω<)
さて、この話は原作だとシャルの株価を下げる内容であり、一夏のチンピラ度がわかる
てかこれで助けて貰ってシャルの脳内が一夏を王子様認識したときの当時の俺は――。
(ファッ!?}Σ(゜Д ゜;)
ってなった……('A`)
これがカッコいい主人公か
俺にはチンピラにしか見えなかったぜ
これをアニメでやってたら……
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