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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第374話】

 同時刻、場所は職員室、織斑一夏が模擬戦を行っていた頃、職員室にはほぼ全ての教職員が集まっていた。

 職員室な備わっていた空中投影ディスプレイに映し出されていたのは、一年生専用機を持つ生徒のデータ。

 勿論ランク分けをされていて最高ランクSの飯山未来に続き、有坂美冬、セシリア・オルコットのA+評価、次点のA評価である凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識簪。

 そしてBランクの織斑一夏、Cランクの篠ノ之箒に続いて最後はEランクの有坂緋琉人が映し出されいる。

 その横には、最近転入して来たばかりの美春のデータも表示されているが、まだ適性ランクをちゃんと計測していない為、ランクは不明と表示されていた。


「相変わらず有坂はランクが低いですね」

「……彼が本当にあの【亡国機業】からコアを奪取したのか、疑われても仕方ないぐらいランクが低いですよ」


 そんな教職員の声が辺りから織斑千冬の耳に届く――。


「諸君、それは事実だ。 現に更識生徒会長もその場にいて報告書も提出してある」

「……ですが織斑先生、彼女は有坂贔屓だという噂を生徒から聞きますよ? 生徒会長は生徒の中での長……故に学園生徒最強ですが。 そんな彼女が取り戻したのではなく、最低ランクの有坂が取り戻したと訊いても私達からすれば疑問に思うのは当然です。 正直、織斑一夏君が取り戻したのならまだ納得は出来ますが」


 そんな一教師の発言に眉を潜めるのは有坂真理亜だった。

 まだ新参者の彼女だが、教職員という事もあり、現在この職員会議にも出席している。

 ――だが、自身の息子を悪く言われると、やはり教職員の立場よりも親の立場として見てしまう……教師として駄目だと、心の中で苦笑する。

 本当ならこの時間は、学園倉庫にある【IS】に手を加えてる時間なのだが――そうは思っても、まだ始まったばかりなので大人しく耳を傾ける事にした有坂真理亜。


「……先生は、生徒の噂を鵜呑みにするのでしょうか?」

「……ッ!?」


 織斑千冬のその言葉に、狼狽える様子を見せる教職員。

 確かに、生徒の噂を鵜呑みにするのは良くないとは思えど、どうしても有坂緋琉人が取り戻した事実を受け入れられない教職員一同。

 それだけ、この学園に教師として選ばれたエリート意識があるのだろう――専用機は持たずとも、代表候補止まりであろうとも、自身のISランクとこれまで積み重ねてきた努力がもたらした結果なのだから。


「私も彼ばかりを見てる訳にはいかないですが、少なくとも一年生の中では彼が一番皆に追い付く為に努力をしてますよ。 アリーナ使用時間を越える事も多々ありますが、それだけ彼は必死だという事は認めてあげてはどうだろうか?」


 そう伝える織斑千冬の言葉に、少しざわつく教職員。


「……しかし、彼のアリーナ使用時間を越えるというのは、私的でアリーナを私物化してる様に思えるのですが? ……彼がいつも使用時間を越えるから、私のプライベート時間も削られるんです……」


 そう言ったのはアリーナを管理している教職員の一人、いつも有坂緋琉人が頭を下げて謝るのを見ても、自身のプライベート時間も削っていく彼には悪い印象しかなく、もし自分の担当するクラスの生徒なら×評価にする所だっただろう。

 勿論、教職員としてそんな私念は許されていないのだが……それだけ彼のせいで見たいテレビを見逃したりしている彼女にとっては許せないのだろう。


「……生徒が頑張っているのなら、それを応援するのが教職員の勤めでしょう? 確かにプライベートを削るかもしれませんが、それは有坂君も同じだと思いませんか?」


 そう言ったのは、織斑千冬の隣でレポートを書いていた一組副担任の山田真耶だ。

 その言葉に、文句を言っていた教職員も口を真一文字に結ぶ。


「私も彼の全てを把握してる訳じゃないですけど、朝は確か他の生徒より早く起きてからこの学園島を一周して体力強化を行ってるのは私も何度も目撃してますし。 部屋でも彼は寝る時間を削って色々勉強してるのでは無いのでしょうか?」

「……ですが、一部女子が有坂緋琉人の部屋に入っていくのを見てる生徒も居ますよ? 中で何をしてるかは知りませんが……そんな彼がプライベートな時間も削ってるとは到底思えないのですが」


 一人の教職員言葉は最もだと頷く一同に、織斑千冬は――。


「……有坂の部屋に入って行くのは主にここに映し出されている代表候補生だろ? 彼女達の大半は彼に好意を抱いてるのは既に明白済みだ。 彼自身が彼女達の部屋に夜遅くに来訪するといった話は聞かないが?」

「そ、それは……」


 確かに、有坂緋琉人から夜中に女子生徒の部屋に入るという話は聞かない。

 それどころか、玄関前で会話する所を見る方が多いと聞いていたのを思い出す。


「まあ女子生徒が夜に男子の部屋に行くというのは教育上良くはない。 だが諸君にも少し覚えがあるのではないだろうか? 想い人と少しでも長く一緒に居たいという気持ちは、誰しも心覚えがあるはずだ」


 織斑千冬の言葉に、確かにと声をあげる教職員の声が波紋の様に拡がる。


「代表候補生生徒も、ちゃんと規則を守って有坂緋琉人の部屋に行っているのだから、そこは諸君も彼や他の代表候補生を信じてもらいたいものだ。 幾らランクが低くても、人はそれだけで全てを測る事は出来ないのだから」


 そんな織斑千冬の言葉に、思わず頷く教職員。



「……さて、有坂緋琉人の話ばかりに時間は裂けない。 有坂の事は諸君にももう少し平等に見る目を持っていただきたいという所でこの話を締めさせていただく。 次にだが篠ノ之箒についてだが――」


 指し棒で篠ノ之箒のデータを指すと、大きくデータが表示され、話は篠ノ之箒の事に及んだ。

 まだ有坂緋琉人に対して、良い印象を持たない教職員は入れど、一部理解を示す教職員が居ることに、有坂真理亜は少し表情を綻ばせながら篠ノ之箒のデータを眺めてレポートに書き始めた。

 そんな中で、彼女の脳裏にふと過る――そういえば、ちゃんとヒルトの最近のデータに関しての話が全く無かったのでは……と。

 だがもう既に篠ノ之箒の話に移ってしまった以上、有坂真理亜は指摘する事を止めて今話題に上がっている彼女の事とその専用機の事、所属国家先などの問題などをレポートに書いていくのに集中した。 
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