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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第372話】

 
前書き
模擬戦二戦目ザマス 

 
 エネルギー補給を終えた一夏がピットから出てくる。

 空中で静止すると、そのまま対戦相手を待つのだが――負けたのが信じられないのか、表情が険しく見える。

 因みにだが観客席には俺達以外では篠ノ之が居るだけで他の生徒はいない。

 興味が無いわけではなく、模擬戦を行う事自体知らせてないからだ――なら何故篠ノ之が居るかと言えば、一夏から訊いたかららしい。

 ――と、反対側のピットからラファール・リヴァイヴを纏う理央が射出され、空を舞いながら指定位置にたどり着いた。


「わりぃな織斑。 機体又貸しで使わなきゃなんねぇんだ、俺達」

「そういやそうだったっけ? ご苦労な事だな」

「……まあ専用機持ってるお前じゃ、あの書類の山を見たら嫌になるだろうしな」


 ムッと表情が険しくなる理央に、首を傾げる一夏。

 音声は観客席に届いてるからわかるのだが、一夏はもう少し言葉に配慮が必要だと思う。

 【ご苦労な事だな】ではなく、労う様に伝えれば誰もイラッとしないと思うのだが……と、観客席に備わっているシグナルが点灯した。


「一夏ーッ! 次こそちゃんと私が教えた通りに戦うのだぞーッ!!」


 そんな篠ノ之の声が聞こえるが、生憎とアリーナのバリアーに阻まれて向こうには届かない。

 一夏もそんな篠ノ之に全く気付かず、篠ノ之は――。


「……少しは此方を見たらどうなんだ、バカ者が……」


 ……と、呟きが此方まで聞こえてくるが無視してシグナルを見ると、緑色に変わり、試合が始まった。


「今度は速攻だ! はぁぁああああッ!」

「……!?」


 叫んだ瞬間、瞬時加速で肉薄すると共に斬りにかかる一夏に対して、理央は驚きの表情を浮かべつつシールドを展開、鈍い金属音が響き渡ると同時に防ぎきった理央だが――。


「まだまだァッ!!!!」


 雪片でシールドを押さえつつ、脇腹へとミドルキックを浴びせる一夏に、流石の理央も対応出来ずに体がくの字に、折れ、横に飛ばされた。

「追撃だ! 雪羅、月穿に切り替える!」


 左手を前に翳し、武装腕が可変して荷電粒子砲が姿を現し、砲口から紫電が溢れ出る。


「クッ……まさか速攻で来るとは……! そらッ!」

「な――クゥッ!?」


 最大火力で放つその瞬間、武装腕目掛けてシールドを投擲し、腕に衝撃を与えると狙い済ました射線が擦れ、荷電粒子砲はアリーナ上空のバリアへと当たって四散して消えていった。

 最初の速攻で一夏にペースを奪われたものの、直ぐ様体勢を整え、反撃に出る理央。

 粒子形成させたシュトゥルム・ファウスト二基を空へと投擲――更に重機関銃を粒子形成させ、一夏へ射撃しながら突撃をかける――それと同時期、空を舞うシュトゥルム・ファウスト二基が真っ直ぐと一夏へ突き進んでいった。


「チッ! 当たるかよッ!」


 そう言って回避行動を取ろうとする一夏に対して、左右上と機関銃の弾をばら蒔き、動きを封殺――そして、左手に新たに粒子形成させた近接ブレードを握り、地表に切っ先が当たると激しく火花を撒き散らせた。


「わりぃな織斑! そう簡単に回避させるわけにはいかねぇんだよッ!!」


 動きを封殺した一夏へ重機関銃の射撃を浴びせ、衝撃で一夏は少し体勢を崩す――そして、時間差で迫ってきたシュトゥルム・ファウスト二基の直撃を肩と腹部に受け、激しく爆ぜた。


「ぐぁあああッ!?」


 衝撃に表情が歪む一夏に、更なる追撃の一撃――真っ直ぐと胴へと近接ブレードの一撃を浴びせ、無反動旋回による切り返しによる二連撃。

 大きく体勢を崩した一夏への置き土産にフラググレネードのピンを抜き、その足元に転がして離脱していく。

 ――そして、激しい爆発が白式を覆う様に飲み込み白式のシールドエネルギーを大幅に奪い去った。

 距離を離し、その場で180度ターンしてから両手の武器をかなぐり捨て、新たにロケットランチャーを両肩に構える理央。

 もくもくと立ち込める煙が少しずつ晴れ、一夏の姿が確認出来るも、片膝をつき、肩で荒く呼吸を整えているだけだった。

 ――と、観客席のベンチを激しく叩き付ける篠ノ之。


「クッ! ちゃんと対策も言っておいたのに一夏の奴……!」


 叩き付けられたベンチは、少し凹んだ様に見える――というか、急に叩き付けるのはやめてほしい、俺もだが他の皆も突如激しい音を立てられると反応してしまうからだ。

 言えば煩いで一蹴されるから、言わないが……本当はちゃんと言ってわかってもらいたいが、篠ノ之に聞く耳が無ければただの徒労に終わる。

 そう考えてる間も、熱の冷めやらぬ篠ノ之の独り言が聞こえてくる。


「あそこは『ダァーッ!』っと回って『グァーッ!』と背後を取って『ズバシュドカン』と言っただろうに! あぁもうッ!!」


 ……ズバシュドカン?

 普通擬音を使って説明する人は、その状況を相手に何となく分かりやすく言いながら、例えようがない事に関してモーション交じりで擬音を使って説明するのだが、篠ノ之はモーションはあれど、状況説明が出来ないから擬音では意味がわからない。

 ズバシュドカンだけで何と無く推測するなら多分斬って撃つだと思う……自信ないが。

 一人でそんな事をしてる篠ノ之の姿が可笑しく、思わず吹き出しそうになるのを何とか堪え、再度試合に集中する。

 何とか立ち上がった一夏が、雪片を構えて真っ直ぐ突撃をかける所だった。


「真っ直ぐ突っ込む!? 織斑、真っ直ぐ来るんじゃなく、もっと回り込むように動かねぇとダメだぜ!」


 構えたロケットランチャー一門から激しいバックブラストが噴出され、ロケットが加速して飛んでいく。


「ちゃんと考えての突撃だ! うぉぉおおおおッ!!」


 目の前に迫るロケット弾に、あろうことかそれを切り払う一夏。

 当たり前だが、映画やアニメ何かでも切り払うとかはあるが、大抵ロケット弾の推進部分を切り払うのが普通――だが一夏はあろうことか、ロケット弾本体を切り払っていた。

 雪片の切っ先が触れ、一夏は確かな手応えを感じたのかそのまま切り払おうとするが――接触型のロケット弾に、何かが当たればそこで炸裂するのは目に見えていて激しい爆発が再度一夏を包み込むと同時に試合終了のブザーが鳴り響いた。


「なっ!? ば、馬鹿な!? ロケット弾を切り払ったのに爆発しただと!? クッ……映画ではあんなに切り落としても爆発しなかったのに!」


 ――諸悪の根元はお前か、篠ノ之。

 映画でロケット弾切り払って爆発しない裏設定なんか、大抵不発弾かロケット弾がめちゃくちゃ古くて火薬がダメになってるかのどちらかしかないって設定だと思う。

 まあそれでも、質量弾として直撃を受けたらダメージは負うが、映画にそこまで求めてないし。

 またもピットへと走り去る篠ノ之を見送ると、アリーナでは悔しそうに地面を叩く一夏の姿が見えた。


「織斑、悪いけど今のお前じゃ多分俺達に一勝は難しいと思うぜ?」

「クッ……! そんな筈はねぇ……」

「確かにお前には才能があるかもしんねぇけど、何かあまり努力してる様に思えねぇんだよな……」

「そんなことねぇよ! ちゃんと授業だって皆と同じ様に受けてるんだ! ……クッ!」


 ふらふらと立ち上がり、そのままピットへと戻っていく一夏を、理央は眺めながらため息が足元にこぼれ落ちていく。


「……最初、ネームバリューだけであいつをカッコいい何て思ってたあの頃の俺が馬鹿だったな……。 今のあいつじゃ……」


 吐くように言葉を呟く理央は、反対側のピットへと戻っていった。

 残り一戦――そう思うと、何だか喉が乾いたので――。


「何か買ってくるけど、リクエストあるか?」


 立ち上がり、皆にそう言うと美春が――。


「あ、じゃあ私も手伝うよ。 ……ヒルトは私のマスターだもんね……」


 誰にも聞こえないように呟く美春の言葉――シャルやラウラは、いち早く名乗りを上げた美春に先を越されたのが少し悔しいのか表情に現れていた。


「じゃあお兄ちゃん、美冬はお茶でよろしく」

「……ぼ、僕はコーヒーをお願い。 ……つ、次は美春に負けないんだから……」

「私もコーヒーだ。 ……むぅ、義理の妹とはいえ……むぅぅ……」


 注文を聞き、メモに記入すると俺は――。


「んじゃ、買ってくるから大人しくな?」

「ぶー、子供扱いしてるよお兄ちゃんっ!」

「ぅー……」

「……まだ私はヒルトに子供の様に思われているのだろうか……? ……せめて、シャルロットぐらいに胸があれば……」


 明らかに変な勘違いをしてるラウラ――とはいえ、言い方が不味かった俺が悪いが。

 そんな三人をその場に残し、俺と美春は自販機に飲み物を買いに向かうのだった。 
 

 
後書き
試合内容が呆気なく見えるのは、戦ってるのが第三者達ですからな

それでもそこそこ描写してるとは思いますが……ズバシュドカン 
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