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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第375話】

 全ての模擬戦を終え、現在第二アリーナ入り口前。

 一夏と篠ノ之の二人はまだ第二アリーナ内で何か話をしてるのか、出てくる様子は無く、俺は三人に視線を移す。

 美冬たちは機体の調整がしたいという事もあって、先に戻らせた。


「んと、三人とも今日はありがとうな? 美冬の我が儘に付き合ってもらってさ」

「おー、気にするなー。 美冬とはマブだからなー」

「そうだぜ? 俺も美冬――いや、美冬だけじゃなく未来やお前には世話になってんだし、気にすんなよ」

「うん。 ……これで少しでも織斑君の力になれたならいいけど――」


 そんな鷹月さんの言葉に首を真っ先に振ったのは理央だ。


「無理じゃねぇかな? 普段男が男がーって言ってるけど、正直カッコ悪く見えたな。 後、ランクBって割には突撃思考だし……織斑にはもっと他に篠ノ之以外から教わらなきゃ、多分何かの有事の時に足を引っ張るんじゃねぇかな? もちろん篠ノ之にも言えるが」

「おー? 篠ノ之は私の言葉も聞かないから苦手だー。 陰口みたいでイヤだけどー、篠ノ之は自分にとって心地の良い言葉をかけてくれる子がいいみたいだー」


 そんな玲の言葉に、思い出させるのはいつも篠ノ之の取り巻きみたいに居る子達――因みに彼女達の狙いは専用機で、篠ノ之に取り入って専用機を篠ノ之博士に用意して貰ってから疎遠になるっていう筋書きらしい。

 何かのゲームであったな……唯一作れる物を作って貰うために必死で鉄屑を集め、罵倒されながら物を作ってもらうと二度と逢わないという……妙に人の心理をついた様な内容の。

 こうなると、篠ノ之が哀れに感じるのだが……多分彼女は気付かないだろう、その時が来るまで。


「……一応私、ルームメイトだから色々言ったりするけど、言い過ぎると彼女に怒られちゃうのよね……。 うーん、何とかルームメイトだから仲良くはなりたいんだけどね? 後、部屋で竹刀の素振りも危ないから止めてほしかったり……なんて」


 ルームメイト故の悩みだろう……人によって色々悩みがあるのがわかる。

 篠ノ之も個室にしてもらう方が良いのではないのだろうかと思うが……。


「まあ何にしてもお疲れ様。 一夏との模擬戦、どんな感じだった?」


 そう俺が三人に訊くとまずは玲が口を開く。


「そうだなー。 模擬戦の印象はだなー。 がっかりって感じだぞー? パッケージ使ったけど、まだ白式の方がスペックは上なのに圧倒されてたからなー。 後、零落白夜は危ないって感じだなー」


 第一戦目の玲が言い終わるのを見て俺は、理央の方へと顔を向けると少し頬を紅潮させ――。


「か、開幕の速攻の速さはなかなか良かったと思うぞ? でもそれだけだな。 ペースを掴めずに居たし、あれじゃあ勝ち星上げるには本当に零落白夜を当てねぇと無理だな。 まあ当たれば乗ってる生徒が大怪我するかもしれねぇから、アイツにはその点を留意してほしいが……それを指摘する前にあいつ、ピットに戻っていったし……」


 ため息を溢す理央は、腕を組むとその上に乳房が乗った。

 あの柔らかい感触、もう一度堪能したいとは思いつつもそれは叶わぬ夢と思い、今度は鷹月さんへと身体事向ける。


「私の印象だと、確かに剣道の動きもあるけどやっぱり錆び付いてるからかな? あまり驚異に感じなかったかな? 彼、喧嘩は強いらしいけど……喧嘩が強いっていわれても反応に困っちゃうかな。 その喧嘩も、合気道とか古武術使ってるらしいから逆に名前を傷付けてる結果になってる気が――って、IS関係ないね? ISに関してはやっぱりもう少し誰か上級生か代表候補生に教わる方が彼にはいいかな? 後、篠ノ之さんもね? 正直、専用機あるってだけで技術はそれほど高く感じないし、授業の内容見る限りだとね」


 厳しい評価だが、的は射てると思う。

 紅椿も白式同様燃費は悪いが、彼女自身あれを使いこなしてる感じは見受けられないし。

 てか一夏、鷹月さんに何を話してるんだよ……いや、まあもしかすると誰かに話してたのを聞いただけかもだが……、何にしても喧嘩の武勇伝何て、人に喋るもんじゃない。

 まあ推測だからこれに関しては一夏の事をどうこう言えないが……。


「まあ何にしてもありがとうな?」

「おー。 私も貴重な経験できたー。 それで十分だー」


 いつもながら間延びしたその声と、模擬戦のギャップが激しいものの、嫌いにはなれないな。


「気にすんなよヒルト。 俺達が専用機持ちと戦える機会なんて、大会ぐらいしかねぇからな。 それも暫く大会ねぇから、そういった意味じゃ、貴重な経験させてくれてサンキューな!」


 ニッと白い歯を見せて笑う理央、メッシュの入った赤い前髪が少し揺れた。


「此方こそありがとう。 美冬ちゃんにも後でお礼を言いに行くね? ……あぁ、でもまた篠ノ之さん部屋で暴れないか少し心配……」


 困ったような笑顔を見せる鷹月さん――てかルームメイトに迷惑かけるのは良くないぞ。

 ――と、俺が言えば多分怒鳴るだろうな……篠ノ之ももう少しあの性格さえどうにかなれば、見た目は悪くないのに。

 まあ彼女にしたいかと言えばノーとしか言えないが。


「ヒルトー。 そろそろ私たち戻るぞー」


 そんな玲の言葉にハッとし、顔を上げて――。


「おぅ、じゃあまた夕食か明日な、皆」

「おー。 たまには一緒に食べようー」

「そ、そうだな。 ヒルト、たまには誘えよな?」


「ぅ、ぅん。 あ、そうだ。 ヒルト君、番号とメアド交換しない? ほら、連絡取りやすいし」

 そんな鷹月さんの提案に、玲も賛成らしく――。


「おー! 私も知りたーい。 教えろー!」

「あ、あぁ。 ちょっと待てよ?」


 制服のズボンから携帯を取り出すと、赤外線通信で二人と交換する。


「あれ? 理央ちゃんは交換しないの?」


 携帯を取り出さない理央に疑問を抱いたのか、鷹月さんは首を傾げて理央に訊くと――。


「お、俺はもう交換してるから……」


 少し罰の悪そうな表情を浮かべた理央。

 それに玲と鷹月さんは――。


「おー? 理央ー、抜け駆けかー?」

「理央ちゃんズルい……」

「ず、ズルくねぇよ! い、良いじゃん、玲もしずねも今交換出来るし!」


 狼狽しながらそういう理央に、鷹月さんはクスッと笑みを溢して。


「ふふっ、冗談よ。 ヒルト君、それじゃあお疲れ様。 またメールするね?」

「おー。 私もメールするー。 デートに連れてけー」

「お、俺もまたメールするよ――って玲! お前も何デートに誘われようとしてんだよ! ――じ、じゃあな、ヒルト!」


 慌てたように理央は二人の背中を押して第二アリーナを後にした。

 ――デートか、時間があればセシリアと約束したデートもしないととは思うが、セシリアはずっとフレキシブルの訓練を一人で行ってるからな。

 そんな考えをしつつ、未だに出てこない一夏と篠ノ之が気になり、俺は再度アリーナ内部へと入っていく。

 観客席ゲートからアリーナを見るも、やはり誰も居ず、一夏が居たピットに立ち寄るも、そこには居なかった。

 第二アリーナ正面にいる今日の管理してる先生に尋ねようと足を運び、ドアをノックすると少ししてから開いた。


「有坂か、どうした? 何か機材でもぶっ壊したのか?」


 開口一番、何故いきなり俺が機材をぶっ壊した話になるのかわからないが――。


「いえ、違います。 織斑君と篠ノ之さんの両名ってもうアリーナを退出してますか?」

「ん? あぁ、ついさっきな。 何か織斑が篠ノ之怒られてたが……。 まあいつもの夫婦喧嘩ってやつだろう」

「そうですか……。 すみません、お手数御掛けしました。 では失礼します」


 ぺこりと一礼すると、先生は手を振ってドアを閉じた。

 ……もう居ないなら仕方ないか。

 そう思い、俺はアリーナを後にした。

 空に少しずつ夜のとばりが落ち、一番星が空に輝いていてそろそろ夕食時だと思うと、お腹の音が鳴った。


「……飯、食べますか」


 何気ない一言をごちり、足取り軽く俺は寮への道を駆け足で戻っていった……。 
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