IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第327話】
「一夏……!?」
思わず声をあげた俺――亡国機業の狙いは白式なのに、何で……。
「一夏! 何しに来たんだ!?」
「助けに来たんだよ! さっき、俺は戦ってないし、エネルギーだって補給したから問題はないぜ!」
一夏はそう言うが、狙いがお前だということを忘れてるのか、こいつ……?
頭痛がする……許可とってるにしろとってないにしろ、迂闊すぎる……。
「……あいつ、男なのにISを使ってる……?」
呟くように言葉を言う一夏――と。
「あぎゃぎゃぎゃ。 これはこれは……まさか織斑一夏が出てくるとはな。 てかお前も男じゃねぇか。 ――それともなんだ? 本当は女か、お前は?」
展開した盾の装甲が閉じ、地面に突き刺す様に置くとそのまま一夏を眺める男。
「俺は男だ! ……そして、仲間は……誰一人やらせねぇ!」
そう言い放ち、一夏は雪片を呼び出すと構えた。
「……成る程。 狙いがお前の機体だってのにわざわざ出てくるなんて……お前、馬鹿を通り越して大馬鹿だな、あぎゃ」
「うるせぇッ! お前は俺が倒すッ!」
瞬時加速の体勢から一気に男に対して真っ直ぐと突撃――平行して、月穿による荷電粒子砲の射撃――だが。
「……あぎゃ、効かねぇぜ。 俺様のユーバーファレン・フリューゲルにはよぉッ!!」
突き刺した盾の装甲が開く――すると、先程と同じ様にその荷電粒子を盾が吸収した。
「うぉぉおおおおっ!!! 零落白夜ァァァッ!!」
効かないと解るや、直ぐに零落白夜の光刃が雪片の刀身を包む。
青白く光る光刃による突きの一撃が迫る――だが。
「フリューゲル・ドライ! 行きなッ!」
背部の翼からまたも射出される自律兵器――俺とラウラの二人も、この自律兵器から発生される停止結界によって身動きが取れない。
セシリアは動けるものの、盾が粒子エネルギーを吸収したのを見てから攻撃を躊躇するようになった。
男もそれが分かってるからか、セシリアに対しては放置しているが――何かやれば多分俺やラウラの様に動きを止められるだろう。
射出された自律兵器が一夏に迫る――。
「邪魔だ! ハァァアアアッ!」
自律兵器を切り払おうとする一夏だが、その前にピタリと振るった雪片が止まる。
「なっ!? ……AIC!?」
「その通りだ。 ……あぎゃぎゃ、息巻いてこの結果か? 織斑一夏?」
「……ッ!」
男の挑発に、一夏は表情を変化させる。
左腕の武装腕を翳すと、再度荷電粒子砲を男に放つ。
「あぎゃ? ……学習能力のねぇ奴だな。 ――そらよ!」
開いた盾の装甲がまたも吸収――次の瞬間、光を放つと共に盾の真ん中が開き、中から砲口が現れるとそこから荷電粒子砲を撃ち返した。
「何!? ……霞衣!」
直ぐ様切り替え、零落白夜の盾が機体前方に張り巡らされた。
「あぎゃ……! ドライ、砲撃開始だ!」
自律兵器が真ん中から開くと、中から砲口が現れ――。
「……ッ!?」」
一夏の表情が変わるも、時既に遅く、武装腕に集中的に実弾射撃――。
自律兵器から排出される空薬莢の量が凄まじく、もしかするとあの兵器自体に粒子変換させる何かの機能が搭載されているのかもしれない。
周囲一帯に立ち込めるガンスモーク――執拗な攻撃に、白式の武装腕に紫電が走ると同時に霞衣の膜が消え去る――そして。
「ぐぅぅううっ!!」
荷電粒子砲の直撃を浴び、機体を包み込むような爆発に呑まれた一夏。
男の方は、自分の自律兵器が巻き込まれないように寸での所で離脱させていた――。
爆煙が立ち込める中、強い突風が吹き荒れ、爆煙を掻き消すと中から装甲が少し黒ずんだ白式を纏った一夏が現れる。
「……ッ!!」
「あぎゃ、中々効いたようだな?」
「へっ……! 全然効いてねえよ! ……それに、一度見た以上俺には通用しないぜ!」
「あぎゃぎゃっ! なら……俺様の期待に応えろよ、織斑一夏ぁッ!」
待機させていた自律兵器――フリューゲル・ドライを再度一夏へと向けた男。
一方の一夏は左右に機体を大きく揺らし、自律兵器を避けつつ――。
「そらァッ!!」
一直線に飛んできた所を狙い済ますかの様に横へと切り払う――だが。
それをまるで先読みしていたかのように紙一重で雪片の刃を避けきる――そして。
「ッ……し、しまった!」
「あぎゃぎゃ♪ とんだ口先だけの野郎だな!」
フリューゲル・ドライから放たれる停止結界で身動きの取れなくなった一夏に、男は飛翔して急接近――勢いそのまま、顔面目掛けて膝蹴りによる一撃を与える。
「ぐっ……!?」
「そらよ! こいつの一撃、耐えれるかッ!?」
「……!?」
一夏の表情が変わる。
粒子形成された武器は、まるでチェーンソーの様な刃を持つ大剣でそれを片手で回すように器用に扱いながら――。
「織斑一夏、知ってるか?」
「……何をだよ」
「……チェーンソーは神すら葬る最強の武器だって事をよぉッ!!」
チェーンソーの独特な機械音と共に、刃が高速回転し始める。
そして――白式へと斬りつけると凄まじい火花が立ち、白式の装甲が傷つけられていく。
「あぎゃぎゃ! 絶望しな、織斑一夏! ざっくり切り刻んでやるぜ……白式をなぁッ!!」
「く、クソッ! やられるかよぉッ!!」
一夏の叫びが聞こえるも、俺もラウラもまだ動けずにいて、セシリア自身は援護は可能だが、撃てば確実に一夏に当たり、フレンドリー・ファイアになるため容易には援護できずにいた。
『ちっ! 雅、此方にまだ誰も向かって来てないか!?』
『……教師陣はまだ無理な様だ。 だが、北エリアの警戒を行っていた篠ノ之箒の紅椿がそろそろやって来る様だ』
『……了解』
不安が過る――この間も白式にダメージを与え続ける男の連撃にとうとう白式は――。
「……!? しまった、エネルギーが……!?」
シールドエネルギーが根刮ぎ奪われ、白式の機能がダウン――空中から地上へ膝をつく形で降り立った。
「ぎゃぎゃっ。 ――テレビの情報なんざ当てにならねぇな。 ……まあ、そんな気はしてたがな。 シビリアンコントロールって奴か? あぎゃぎゃ……さて、このまま白式を奪えば亡国機業としての任務は達成だが――」
「一夏ァァァッ!!!」
男の呟きが遮られるように、声が聞こえてきた。
「あぎゃ♪ 来た来た……唯一の第四世代型――【紅椿】!!」
口元を歪ませた邪悪な笑みを、空中にいる篠ノ之へと向けた男。
その笑みに、篠ノ之は不快そうな顔をしながら――。
「男の……IS使いだと……!?」
驚きの声をあげる篠ノ之――そして。
「フリューゲル・ドライ! 織斑一夏をその場で固定しな!」
命令を送った次の瞬間、まだ白式を身に纏った一夏に対してAICで動きを封じ込めた。
「……ッ! 動けねぇ!」
「あぎゃ、暫く大人しくしてな」
不敵な笑みを浮かべながら一夏にそう言うと、悔しそうな表情のまま男を睨み付ける一夏だった……。
後書き
次回はカーマイン対箒戦
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