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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第285話】

――第三アリーナ中央――


 借りた機体を持ち主へと返した後、俺達全員アリーナ中央へと集まった。

 模擬戦も終わった事で、また一般生徒の訓練も再開される。


「まずはヒルト君、お疲れ様。 織斑君も、約束はちゃんと果たしてくれるかな?」

「はぃ……わかってます。 ……約束ですからね」


 そう返事をする一夏。

 楯無さんも、あまりに素直な一夏の反応に――。


「あら? 随分素直じゃない。 うふふ、偉い偉い♪」

「こ、子供扱いしないでください! ……約束、破るのは男として恥ですし……」


 まあ普段から約束がどうたらしたら男じゃねぇって言ってる以上、ここで言い訳すれば死ぬほどカッコ悪いからな。

 ……まあ、カッコつけても仕方ないのだが。

 ……と、状況の分からない篠ノ之が――。


「一夏、約束とは何なのだ? それにさっきの模擬戦は何だったのだ!? ちゃんと教えた通りにすれば……それに、有坂! あんな卑怯な手を使って恥ずかしくはないのかッ!」


 ……等と卑怯者呼ばわりされてしまう俺。

 美冬の表情が険しくなるのを見て慌てて止めようとする前に楯無さんが――。


「んと、箒ちゃん? 少しだけ口を閉じててくれるかな? 今からお姉さんが説明するから。 後、ヒルト君の何処が卑怯って言うのかな?」

「そ、それは――」

「んん?」

「…………ッ」


 笑みは絶やさないものの、妙な威圧感を放つ楯無さんに、流石にたじろぐ篠ノ之。


「うふふ。 特に言い返せないなら理由は無いわね? じゃあここからお姉さんが事の経緯を説明するわ。 まず――」


 何故こういう事態になったのかを説明し始め、一同は聞きつつも途中で一夏のコーチの話になるとさっきまでたじろいでいた篠ノ之が――。


「い、一夏のコーチは私です! 私が居ないところで勝手に決めないでください! ……一夏、行くぞ!」

「ちょ、ちょっと箒――」


 腕をがっしりと掴み、その場を去ろうとする篠ノ之に待ったをかける声が――。


「ちょっと待ってもらえるかな? ……織斑君が弱い原因、貴女にもあるのよ?」


 楯無さんの言葉に、ピタリと足を止める篠ノ之、振り向くとこめかみをひくひくとひくつかせながら……。


「……何故私に原因があるのですか?」

「それは簡単。 貴女は教えるのが下手だからよ。 ……アリーナで貴方達二人の訓練内容は見せてもらったわ。 ……残念だけど、あれじゃあ織斑君も強くなれない――」


 そう指摘され、篠ノ之も最初こそは反論するものの、楯無さんの方が一枚上手であり、何処がダメでだとかを徹底して言うその様は、鬼だと思った――が、事実なので誰も何も言わない。

 ……多分、この人と口喧嘩すれば完膚なきまでに叩き潰される。

 膝から崩れ落ちる様に項垂れる篠ノ之を他所に、楯無さんは話を元に戻す。


「話は戻すとして……。 さっき言った通り、これから私は織斑君及びヒルト君の専属コーチをする事になったの。 よろしくね、皆」


 にっこり笑顔の楯無さんだが、さっきの篠ノ之を言い負かせたギャップの差が激しいのか色々困惑していたが――。


「……わかりました。 あの、楯無さん。 お兄ちゃんの事、よろしくお願いします」


 美冬は納得したのか、頭を下げてお願いする。

 それを見た四人も――。


「……そうですわね。 ヒルトさんのステップアップには、必要な事かもしれませんし……」

「……そうね。 ヒルトは多分大丈夫だとしても、一夏はちょっとは先輩に鍛えられた方がいいわよ。 弱いんだし」

「ぐっ……ヒルトに負けただけに言い返せねぇ……」


 鈴音にざっくり弱い宣言され、苦虫を潰した様な表情を浮かべる一夏。


「……そうだね。 僕も賛成だよ。 ……でもヒルト、これ以上僕達のライバル、増やさないでよね?」


 そう腰に手を当て、シャルはずいっと顔を寄せて言ってきた。

 相変わらず綺麗な肌と髪質だなと思いつつ、静かに頷くと楯無さんは――。


「あら? シャルロットちゃんはヒルト君争奪戦にお姉さんが加わるのが不安?」

「ふぇっ!?」

「……楯無さんが俺の争奪戦に?」


 指摘されたシャルは狼狽し、それを見た楯無さんはクスクスと笑みを溢す。

 ……てか、あり得ないだろ。

 楯無さんまで参戦は想像出来ないし――と。


「安心なさいな。 お姉さんはあくまでもお姉さん的立場でヒルト君を見守るのが好きなの。 ……ラウラちゃんも、あまり警戒しないでね?」

「むぅ……わかった……」


 争奪戦に参戦と聞いて警戒していたラウラもホッと一息吐き、胸を撫で下ろした。

 ……まあそりゃあそうだろ。

 正直、未来にセシリアにシャル、ラウラと好かれたのが奇跡に近いのにこれに楯無さんが加わったら宇宙をもう一つ創造出来るさ、これがな。


「ふふっ、話が逸れちゃったけど。 ……何はともあれ、ここには経験者がいっぱい居るのは良いわね? ……箒ちゃん、貴女も見ておきなさい」

「…………ッ」


 完全に言い負かされたからか、険しい目付きで楯無さんを睨む篠ノ之だが、楯無さんはそれを気にせずに――。


「じゃあ早速始めましょう。 時間が惜しいもの。 ……まずは織斑君に箒ちゃん、あなた達二人にはこれから『シューター・フロー』を見てもらいます。 ……そして、その演舞を行ってもらうのは――美冬ちゃんとシャルロットちゃんにお願いしようかしら? 演目はシューター・フローで『円状制御飛翔(サークル・ロンド)』――お願い出来るかな?」


 おどけた笑顔を見せる楯無さんに、美冬とシャルは互いに顔を見合わせながら――。


「良いですけど……確か射撃型の戦闘動作ですよね?」

「私で良いのですか? セシリアや鈴、ラウラも居るし」

「うふふ。 貴女達二人にお願いするわ」


 そう言って二人の肩を叩く楯無さんに、美冬とシャルも納得したのか頷いた。


「……バトル・スタンスは分かったけど、それって一夏の役に立つのですか?」


 鈴音の言葉に、振り返ると楯無さんは説明し始めた――。 
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