IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第290話】
風呂上がりの俺は、まず真っ直ぐと向かったのは自販機コーナー。
とりあえず、さっきのラウラとの事を払拭しなければとも思うが、いつかは誰かと関係を持ちそうで……欲には勝てそうにないと改めて思う。
自販機コーナーへと辿り着くとそこに居たのは――。
「あ、ヒルト君。 お疲れ様」
「こんばんは、鷹月さん」
自販機側に備わったベンチに座っていた鷹月さんがコーヒーを飲んで座っていた。
軽く挨拶して俺も飲み物を選んで、ボタンを押す。
風呂上がりの為、今回は紙パックのフルーツジュースを選んだ。
「ヒルト君はコーヒーとか飲まないの?」
「ん? ……コーヒーってあんまり好きじゃないんだよ、俺」
「うふふ。 誰にでも苦手なものくらいあるよね」
柔らかな笑みを溢す鷹月さん。
制服はスタンダードタイプだが、少しスカートが短い辺りはやっぱり女の子だなっと思う。
「ん。 そうだ……学園祭について少し相談あるんだが、いいか?」
「ん? うん。 もちろん良いわよ?」
了承を得ると、俺は当日の纏め係を彼女に頼んでみた。
俺が纏めるより、しっかりものの彼女が纏めればクラス一同しっかり連携も取れると思って――。
「――という訳で、無理じゃなければ引き受けてくれないか?」
「えぇ、私で良ければ。 じゃあ、ある程度は私に一任してくれる?」
「あぁ、構わないよ。 ……クラス代表も楽じゃないって、改めて思うよ」
そんな何気ない愚痴を溢すと、鷹月さんは覗き込むように見てきた。
「……確かに、委員長とかそういった仕事とかは大変だけど。 だからこそクラスの皆がいる。 私で良かったらいつでも力になるから言ってね?」
「……ありがとう。 何ならついでに嫁に来るか?」
「へ……?」
きょとんとした表情のまま瞬きを二度ほどすると、完熟したリンゴの様に顔が赤く染まっていく鷹月さん――。
「も、もぅっ! ヒルト君、あんまり女の子をからかったらダメです!」
「ははっ。 まあこれ言っても基本的に誰も相手しないからな、皆断るし」
「………………」
何故かジト目で見られてしまう……やはり嫁に来るかはまずいのかな。
「……ふふ。 ……でも、私は考えてもいいよ……?」
「ん?」
「な、何でもないです……」
隣に居たのに聞こえなかったのは彼女の今言った言葉のボリュームが小さすぎて聞き取れなかった。
地獄耳だと知ってる子は、皆こんな感じでボリュームを小さくして口にするから最近ちょっと困りものだったりする。
「そ、そろそろ戻らないと。 ……そ、そういえば、最近篠ノ之さん機嫌が悪いことが多いけど、ヒルト君は何か知ってる?」
「ん? ……そういや、鷹月さんはあいつのルームメイトだったな。 ……まあ原因は一夏だよ。 俺じゃないさ」
「そっかぁ……。 じゃあヒルト君、また明日ね? おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ~」
そう言い残し、その場を去っていく鷹月さんを見送ると紙パックをゴミ箱に捨て、もう一本何かを買おうと選んでいると――。
「あ、ヒルト。 お風呂上がり?」
「ん? 少し前に上がったばかりさ、未来」
何やら書類を抱えてる未来。
俺を見つけると駆け足でやって来てくれたようだ。
「……何の書類だ?」
「ん? ……書類だけじゃなくて、パンフレットもあるよ? んと、時間があってその時にIS装備関係者と面会してたの。 ……天照に自社の製品はどうですかーだって」
そう言ってベンチに座った未来は、抱えた書類やらパンフレットを見せてくれた。
「……だからヒルトにその話を持っていったらって言ったらその人――『彼はダメダメ、あんなISランクの低い落ちこぼれに我が社の製品を使わせたらイメージダウンになる』――だってさ。 有坂先生もその場に居たけど、明らかに怒ってたよ……まあ、私も少しムッとしたけどね?」
そう言って軽く舌を出す未来。
その仕草が少し可愛く見えたのは、やはり前に好きだったからだろうか……。
「成る程。 ……まあ俺自身、他がどう評価してもあまり気にしないがな」
「ふふっ……相変わらずだね? でも、私はヒルトはもっと評価されてもいいはず。 ……世間は織斑君ばかりに期待して出回る情報も好意的に書いてるけど。 ……ランクが低いだけで天と地程の差を受けるのっておかしいよ」
そう言って腕を組み、頬を膨らませる未来だが――。
「何で未来が怒ってるんだよ。 ……まあいいじゃん。 てかそんなに書類持って帰るのも大変だろ? 俺が荷物持ちになるさ、これが」
そう言ってベンチの書類やパンフレットを纏める。
様々な企業名の入った書類を見る限り、未来に期待してる企業がこれ程あるという事だな。
……それだけ、武器ばかりにしか目のいかない悲しい企業ばかりだということでもあるが。
「ありがとう、ヒルト♪ そういえば美冬から聞いたけど、生徒会長から指導を受けてるんだって? 今日の訓練はどうだった?」
「ん? 今日も昨日と同じシューター・フローだったな。 一夏が――」
そんな話をしながら、俺は未来を部屋まで荷物を持ちながら送っていった。
この時、まさか俺の部屋に新たなルームメイトが増えるとは夢にも思わず、ただただ楽しく、未来と会話をしながら歩いて行くのだった……。
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