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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第306話】

――IS学園正面ゲート前――


 思わぬ時間をとってしまい、慌てて駆け足でゲート前へと向かうとそこには見知った三人の男子が――。


「おっす! 待たせて悪いな成樹、たっくん、信二」


 そう声を掛けると、気づいた三人は手を振って応えてくれた。


「やあ、ヒルト。 久しぶりだね」

「あぁ。 結局夏もあまり成樹の店に行けなかったが……」

「ふふっ。 大丈夫だよ、僕はいつでもあの店に居るし、連絡くれれば話し相手にもなるしね?」


 柔らかな笑みを浮かべる成樹、周りにいた女子はその笑顔を見て目がハートの形になっていた――一方。


「……成樹が居ると、俺達全然注目されなかったんだが……なあ、信二?」

「……あぁ。 ……なあヒルト。 学園入ったら別行動とっていいか?」

「……? 構わないが、一応言っとくが学園内でナンパすると追い出されるからな」


 そう二人に警告すると、たっくんが――。


「わかってるわかってる! まずはお知り合いになってからだからな!」

「おうよ! ヒルト、チケットサンキューな? 今日ほどお前に感謝した日は無いぜ! ……って言っても、喧嘩の仲裁とかでお前には世話になりっぱなしだけどな」


 そう信二が思い出した様にお礼を言い始めた。


「……気にするな。 喧嘩なんかしても痛いだけだしな」

「だな。 ……てかさ、何でヒルトは燕尾服着てんだ?」


 たっくんがそう俺に指差し、聞いてくる。


「うちの出し物がご奉仕喫茶なんだよ。 男の俺が執事、女子がメイドって訳さ」


 そう説明すると、成樹が――。


「ふふっ。 いつもと違う格好してたけど、そういう理由だったんだね?」

「あぁ。 まああんまり似合わないし、俺の指名は基本ないからな、一夏ばかりだし」


 首を捻るとコキッという音が鳴り響く――と、反対側にも男がボーッと佇んでいた。


「……何かあったのか、あの佇んでる男――」

「……気にするなヒルト。 彼は女の子の声の掛け方を知らず、撃沈した哀れな男なのさ」


 そう説明する信二――確かに、何やら哀愁漂わせるような佇まいな気がしなくもない。


「……まあ気に病んでも仕方ないか――」

「……てかさ、ヒルトんとこ、ご奉仕喫茶って言ってたがメイドのラインナップは? 可愛い?」


 何だか目をキラキラさせて聞いてくるたっくん。


「……てかここの学園で見た目可愛くない子は居ないぞ? まあ……性格の良い子悪い子も居て学校だが……」

「ふむふむ。 ……で、どうなんだ? シャルロットさんも居るのか?」

「……接客班にシャルは居るが――」

「おぉっ!? ……なら後でご奉仕喫茶に行くかな。 むふふ♪」


 そんな声をあげるたっくん――てかシャルを狙うって言ってたのってマジなのか?

 ……正直、それはそれで面白くないと思ってしまう……。


「……まあ何にしてもさ、俺と信二は一旦別行動とるよ」

「……んじゃ、成樹はどうする?」

「僕はせっかくだからヒルトと共に見て回ろうかな……。 ……一人だと、多分女の子達に囲まれそうだしね」


 信二の問いに、辺りを見渡す成樹。

 既に女の子同士が声をかけなさいよって言い合うのが聞こえてきた。


「……何で成樹ばっかりモテるんだよ」

「俺だってモテたい! モテたいんだよぉー!!」


 二人してそんな魂の叫びをあげる姿を見ると、当分彼女は出来ないなと思ってしまう。

 ……根は悪くないんだが、何処か残念なんだよな……。


「まあそれはそれとして。 ……一般開放されてるIS関連の施設以外には入るなよ? 入れば拘束されて査問にかけられるからな……マジで」

「……肝に命じます」

「さ、流石に監視つきは嫌なんで……。 女の子の監視つきなら良いんだけど……」


 そんな気楽に言うが、残念ながら監視は男という罠。


「んじゃ、俺と成樹。 たっくんと信二で別れて行動だな」

「そうだね。 ……僕はヒルトに着いていくよ。 色々気になるしね」


 そう笑顔で応える成樹に、周りの女子からは黄色い歓声が――。


「じゃあ地図もあるし、一旦ここで別行動――後で一組に行くからな?」

「んで、シャルロットさんにご奉仕してもらって……。 ……こほん。 んじゃ、また後でー」


 二人はそう言うと、脱兎の如くIS学園に向かっていった。


「……ははっ、相変わらずだな……」

「そうだね。 ……じゃあヒルト、行こうか」


 そう言うと、俺と成樹は互いに並んで歩き始めた――。


――IS学園一階――


 学園内に入ると、相変わらず女子が行き交う姿が見える。


「ねぇねぇ。 あの人かっこよくない?」

「うんうんっ。 ……でも、何で有坂くんと一緒なんだろう?」

「……まさか、有坂くんの友達かなぁ……?」

「そ、そうだとしたら迂闊だったわ……。 あ、有坂くんにあんなイケメンの友達が居るなんて……」


 ――等という声が耳に届く。

 まあ何だかんだで成樹は目立つからな……線は細いし、顔は整ってるし、女装させたら女の子にしか見えないし、させなくても男からナンパされたという逸話もあるし。


「……何だか居心地悪いね。 ……僕の店も基本女の子ばかりだけど、このIS学園へ来ると居心地の悪さがよくわかるよ」

「……だな。 俺も美冬が居なかったら発狂してたかも」

「ふふっ。 なら美冬ちゃんに感謝しないとね?」


 微笑むその姿、これで女の子なら俺もドキドキしたが残念ながら彼には【ついてる】のだ――。

 ……まあ、ホモ説も出たりするが……今は恋愛するよりは紅茶に恋してるって言ってたからな……。


「さて、マジでどうするかな……。 下手な出し物の所はIS学園の授業の一部を受けさせられるからなぁ」

「そうなんだ? ……僕自身は興味あるけど、どういったものなんだい?」

「……爆弾解体とか、近接戦闘訓練、銃を使った射撃訓練等々」

「……それはまた凄いね? 何だか警察学校か自衛隊関連の学校かと」

「……まあ、そう思っても仕方ないよな。 ……基本はISの授業だが、午前の二時間使って解体とか近接戦闘訓練とか。 午後は一般教科とか……確実に授業メニューがおかしいとしか思えない内容ばかりだよ」


 そう説明すると、静かに頷き、口を開く成樹。


「……僕じゃあとてもじゃないが無理かな? そもそも、ISに乗れないしね」

「……触れたことはあるのか?」

「ううん。 ……なかなか触れる機会が無いんだよ。 ……まあ、僕はIS関連の大会など見るのが好きだからそれで良いんだけどね」


 少し眉を八の字に下げる成樹。

 ……まあ俺も、成樹には危ない目にあってほしくないからな。


「……そういや成樹はご飯食べたか?」

「ううん。 朝食は軽く食べたけど……そういえばお昼に近いね。 何処かで休んで食べようか?」

「それじゃあ、一年二組に行かないか? うちの隣だが、うちがご奉仕喫茶やってるからかあまり人が来ないらしいんだよ」


 ……まあ、俺のクラスがメイドで向こうはチャイナだからな――チャイナ服、俺は凄く好きだが。


「うん。 じゃあ……その二組で軽く食事をしよう」

「オッケー。 んじゃ、階段上がった先だから」


 そう言って俺が先導する形で階段を登っていく――。

 先ほどの踊り場には既に巻紙礼子は居なく、大人しく帰ったのかはたまた純粋に楽しんでるのか……。

 ……まあ、一夏に接触してたら即通報だが。

 階段を上りきり、相変わらず長蛇の列が並ぶ横を素通り――。


「わっ……。 あ、あの人凄くカッコいい……」

「な、何で有坂くんと一緒? し、知り合いなのかなぁ……」

「ど、どうしよう……。 織斑くん一筋だと思ってたのに……カッコいい……♪」


 ――横を通りすぎるだけでこの騒ぎ、まあ背も俺ぐらいあるし顔は整ってるし、線は細いし。


「あ、あはは……。 ど、どうも……」


 居心地の悪さからか、成樹は軽く頭を下げて横を抜けていくのだが――。


「きゃあっ♪ 声かけてもらっちゃった♪ 良かったらアドレスとか――」

「え……あ、あの……」

「ずるいーッ! あたしだって知りたいのに! ねぇねぇっ! あたしと交換しよっ!?」

「ちょ、ちょっと――ひ、ヒルト……助けて……ッ」


 あっという間に囲まれる成樹、その構図は四方を近接戦闘職に囲まれた弓兵の様に見えた。


「……はいはい、お前ら全員列に戻れ。 俺と成樹は今から軽く食事をとるんだから」


 若干強引に掻き分け、成樹を救出する――。


「あ、ありがとうヒルト。 ……ふふっ、何だかこうやって助けられるのって中学以来だね?」

「ん? ……そうだな、あの時も凄まじかった……。 てか、飯食わないとな」


 そう言って女子のブーイングを背に受けながら俺は成樹を連れ立って二組に向かった――。 
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