IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第399話】
前書き
今回は所々視点が変わります。
って言うほど変わるわけではないかも(゚o゜)\(-_-)
――市営アリーナ上空――
「あぎゃ、なかなか白熱したレース展開じゃねぇか……」
「………………」
市営アリーナ遥か上空、ハイパーセンサーでレースの状況を見る二人。
一方は亡国機業のエムで、目元にバイザーが掛けられていて、親しい人でも分からない様になっていた。
もう一方の男――カーマインも、今回はフルフェイス型のヘッドギアを装着し、ツインアイが怪しく光を放っている。
「……カーマイン、そろそろいいだろう。 ……下らないレースなどより、私は人の恐れ戦く声が聞きたい……。 そして……織斑一夏を……」
口元を邪悪に歪め、既に粒子形成を終え、手に構えたスターブレイカーをトップの機体へと照準を向ける――。
だが、その砲口を手でカーマインは遮った。
「あぎゃぎゃ、慌てるなよエム。 ……あいつらのエネルギーを使わせるだけ使わせてから襲撃する方がいいぜ。 まだ一年とはいえあれだけ専用機が揃い踏みしているんだしな。 ……まあ、俺様はこの場で待機して何か不測の事態が起きた場合のカウンターストップの役目だからな」
スターブレイカーの砲口を手で下げたままカーマインがそう告げる――砲口は臨海線の車が行き交う密集地帯へと向けられていて、エムが引き金を引けば民間人に死傷者が出るだろう。
「ふん……。 あの程度の雑魚が幾ら群れようと、私に敵うはずは無いのだがな」
自分の腕に自信があるからこその発言――だが、カーマインはそんなエムに対して……。
「あぎゃ、そう言って殺られる奴を俺様はごまんと見てきたんだぜ?」
「……そいつらは私より弱いだけだ。 私はそいつらとは違う」
淡々とした言葉でそう告げるエムは、銃にエネルギーを充電させ、チャージを開始した。
フルチャージが終え、その砲口が市街に向けば確実に未曾有のテロ事件として取り扱われるだろう。
カーマインとしてはどうでも良かったが、下手な事をしてやりにくくなるぐらいならここで制止させた方がいいと少し頭に過った。
「あぎゃ、確かにてめぇは強いかもしれないが……世の中にはてめぇ以上に強い奴なんかごまんといる。 そんな奴等が油断した結果、死んできたんだ。 ……せめて三周目まで我慢しな。 そこからはてめぇの判断で撃ち抜けばいいさ」
カーマインの言葉に、内心は毒づくエムだったが――。
「……いいだろう、なら後一周待ってやる。 そこからは私の好きにさせてもらう」
「勿論良いぜ。 あぎゃぎゃ、それまで時間はまだあるし、暇だからフェラでもしてくれねぇかエム?」
青空の下でとんでもない事を告げたカーマイン、だがエムは何時ものように呟く……。
「……前にも言ったが、私はその様な事に興味はない。 してほしいのであればスコール辺りに頼むのだな」
何処か言葉に冷たさがあるものの、カーマインはそれを気にせず愉しげに笑った。
「あぎゃぎゃぎゃ♪ ……正直スコールのフェラには飽きて来たからな。 てめぇのその面で俺様のをされたら、まるでブリュンヒルデを犯してるみたいで興奮すると思ったんだがな……。 まあいいさ、三周目までステルスで大人しくしてろよ」
「……言われるまでもない」
短く返事をしたエムに、カーマインは眼下の市営アリーナを見下ろした……。
――市営アリーナ――
まだ三周目に入る前のデブリ帯、クイックブーストを噴かし、時にはデブリである岩石に足を着けてコースを疾走――背後からは射撃が来るが、デブリ地帯故に岩石が邪魔をし、俺にダメージを与えられずにいた。
「くっ……さっきの浮遊機雷といいこのデブリ地帯といい……ヒルトにどんどん引き離されるぞ……!」
「そうだね。 嬉しく思うけど――やっぱり、レースだもん、僕も負けないよ!」
二人して加速し、ハイパーセンサーの後方からチラチラと二人の姿が見え隠れしていた。
ナビゲーターの指示通りに抜けていくが、一歩判断をミスると直ぐに岩石にぶつかって大ダメージを負うだろう。
質量がある物体に当たれば、幾らなんでもどんな機体でもダメージは通るのだから。
神経を集中させ、三周目に突入――現在の順位はトップから俺、ラウラ、シャル、美春、美冬、鈴音とセシリアと未来がほぼ横並びでその後ろが一夏と篠ノ之だ。
この二人が途中から最下位争いになってから、観客席のざわめきが大きく感じる。
第一コーナーに入る――第二コーナーを抜けた一夏や篠ノ之はこれからデブリ地帯へと入っていくようだ。
そのデブリ地帯を、パッケージ組のセシリア、鈴音、未来が激しく猛追をかけている。
「ヒルト! 余所見は禁物だよ!」
ラウラを抜き、二位に躍り出たシャルからの苛烈なショットガンによる連射、面制圧の為、威力は小さいものの、執拗に攻撃を受け、堪らずバランスを崩し、減速した。
「ヒルト、お先に♪」
「すまないな。 嫁とはいえ、手加減出来ないのだ……」
そう言いながら二人は通り過ぎていき、またトップになると互いに近接戦闘を行いながら第一コーナーを抜ける。
三番手で抜ける俺の後ろには、美冬と美春の妹達二人が側に――。
「レースとはいえ、やっぱりお兄ちゃんに攻撃するのは何かやだなぁ……。 模擬戦は仕方ないけどさぁ」
「うん。 それにヒルトは私のマスターだし……攻撃はやっぱりね。 普通に抜いちゃうよ!」
第一コーナーを抜けた浮遊機雷郡までの直線で、二人は急加速――その加速力は凄まじく、激しく推進剤を燃焼させてるのかアフターバーナーの炎が青白く染まっていた。
そして抜かれて必然的に順位は五位――と、後ろから猛追してくる三機。
「ヒルト! 遅いわよ!」
「ラストですから、ここからがわたくしの真骨頂ですわよ!」
「ごめんね? そういう訳だから私達もお先に!」
パッケージ組も凄まじい加速力で浮遊機雷郡へと突入していった。
それに遅れて俺も再度機雷郡に突入――コースはさっきと違って別のコースを辿り、矢印のガイドラインに従って潜り抜ける。
機体すれすれ、いつ機雷に触れるか内心ヒヤヒヤしつつ、スピードが徐々に上がり始め、さっき抜き去った三人を視界に捉えた。
「も、もう追い付いてきたの!? アンタ、速すぎるわよ!」
「こ、この機雷の中でよく当たらずにそこまでの速度を……。 うふふ、少し複雑ですが、やはり嬉しく思いますわ」
そんな二人を抜き去り、未来へと迫る。
一方の一夏達は、完全に遅れていて何とか三周目の第一コーナーへと入った当たりだ。
「……ヒルト、私だって負けないからね」
「俺だって負けるつもりはないさ! そして――悪いが先に抜くぜ!」
細かな制御と加速で更に機雷の中を突き進む。
正直、ここまで機体制御が可能なのは一夏に何百回と行ったシューター・フローのデモンストレーションが活きてきたのだと思う。
後は雅のナビゲート能力――この辺り、ズルいかもしれないが、時にはそういった事も必要だと思う……無論、模擬戦でのナビゲートは頼まないが。
一方……トップの二人、シャルとラウラの二人は機雷真っ先に機雷郡を抜け、第二コーナーへと突入――それに遅れて美春、美冬が機雷から抜け出すと、さっき見せた加速力で二人に迫っていた。
それに遅れる形で俺、未来が抜け出て更に鈴音とセシリアも抜ける。
第二コーナーに入った瞬間、セシリア、鈴音、未来はトップ二人組に対して射撃を行う。
三機の火線は苛烈で、流石のシャルとラウラも減速するしか手が無く、速度が落ちていく。
そんな中、その後ろの妹達の圧倒的な加速力で一気にトップとの距離を詰めていく。
コーナーであの加速力、よくコース外に弾き飛ばされないなと感心しつつも、俺も遅れながら他の専用機達に着いていった。
――市営アリーナ観客席――
観客席ではざわめきが起こりつつも、トップグループの激戦に歓声が巻き上がっていた。
「すげぇな! 生でIS見たけどこの疾走感、テレビじゃ味わえねぇよ!」
「あぁ! ヒルトに声援送った後、俺達かなり注目されてたけど一気にぶっ飛んだぜ!」
拓斗、信二の二人は初めて見るキャノンボールに終始興奮を隠せずにいた。
一方の成樹は――。
「……レースも良いけど、僕はヒルトが心配だよ。 一時はトップだったけど、今は七位……。 野次は無くなったとはいえ、いつまたさっきの様な野次が飛ぶか……」
「……だよなぁ。 てかさ、それだと今最下位争いしてる二人なんか真っ先に野次が飛びそうじゃん? ……やっぱり飛ばねぇのって――」
拓斗の問いに、静かに頷き成樹は口を開いた。
「彼女達の姉、ブリュンヒルデの織斑千冬。 そしてISの生みの親で現在行方不明の篠ノ之束博士が原因だよ。 日本政府もメディアも、完全に二人を押し出すつもりだったからこそ、四月から続く偏向報道があったんだよ。 ――メディアに関しては、対比する二人の話題を出せば視聴率もとれるしね? 確か、夕方でも瞬間最高視聴率は10%を越えてた筈だし」
ふぅっと軽く息を吐き、冷めきったコーヒーを飲み干す成樹。
「……しかしさぁ、同じ日本人でここまで毛嫌いするか普通? 幾ら報道があったってさぁ……」
「そこが僕達一般人――ううん、日本人の弱い所だよ。 例えばさ、黒板にバナナと林檎の絵を書いて最初と次、三人目までバナナを林檎って答えたら信二はどう答える?」
「え? バナナを林檎に間違える方が可笑しいんじゃね? 俺ならそのままバナナはバナナって答えるぜ!」
そんな信二の答えに、目を丸くして可笑しそうに成樹は笑う。
「な、なんだよ! 別に普通だろ、成樹!」
「あはははは、ご、ごめん。 確かに普通はそうなんだよ。 でもね、群衆心理って謂うのがあって、間違ってても十人がバナナを林檎って答えたら、残りの皆も間違ってるって解ってても皆バナナを林檎って答えるのさ。 これは苛めにも通じる話でね、周りが一人の子を苛めてるのに自分が参加しないと、今度は自分も苛められちゃうんじゃないかって。 だから従って苛めグループに関わっちゃうんだよ」
成樹の説明に、首を傾げる二人を成樹は目を細めて柔らかな笑みを浮かべる。
「難しい話だったかもしれないけど、僕達日本人は誰かからハブられたりするのを恐れちゃうからね。 ……だからいつの間にか、一般人にはそう浸透しちゃってたんだよ。 ――ふふっ、でも……流石に今は七位とはいえ、ヒルトの実力に嫌でも気付かざるおえないだろうけどね? それでもヒルトを批判する人が居たら、もうその人の中では根強くそれが正しいって思っていて、後で正当評価されたら一気に手のひら返しすると僕は思うよ」
「……かぁーっ! 俺なら人間不信になりそうだぜ……」
「だよなぁ。 ……ヒルト、どう考えてるんだろうな……」
デブリ帯へと突入していく八機を見、そう二人は呟いたその時だった――直上からアリーナコースに降り注ぐ、粒子ビームが、先頭グループに直撃、大きく撃ち抜くその射撃が突如として雨の様に降り注ぎ、歓声が巻き上がっていた観客席から歓声が消え、ただただその光景を見ているだけだった。
後書き
レース最中に( ´―`)
エム的にはレース結果はどうでもいいですからな( ´―`)
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