IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第314話】
――正面玄関付近――
「あ、お兄ちゃん」
「美冬、待たせたか?」
正面玄関付近の柱に凭れ掛かっていた美冬。
俺を見つけるや、駆け足で近づいてくる美冬。
「ううん、大丈夫。 ……待つのもデートの醍醐味♪ 何てね♪」
「ははっ、何かさっきセシリアもそう言ってたな」
「そうなの? ……まあいいじゃん。 折角だし、外の出店で食べ歩きしようよ♪ まずは綿飴から~」
「おっと、急に引っ張るなって美冬」
危うく足が縺れかけるも、体勢を何とか持ち直すと美冬に引かれて歩き始めた。
「いらっしゃーい。 あら? 有坂くんと妹の有坂さんじゃない」
「どうも。 綿飴二つよろしく」
「はいはーい。 ちょっと待ってね~」
そう言って綿飴を作り始める女子生徒。
美冬も、出来が気になるのか待ちきれないといった感じで見ていた。
「……はい。 まずは一人前~」
「ほら、美冬」
「……いいの、お兄ちゃん?」
「構わないよ。 先に食べなよ美冬」
「えへへ♪ なら遠慮なくもらっちゃうね♪」
嬉しそうな笑顔と共に綿飴を頬張る美冬。
「んんんッ! 美味しい~♪ あまーい♪」
表情いっぱいに見せる幸せそうな笑顔は華の女子高生そのものだった。
――妹の幸せそうな笑顔、正直兄としては嬉しく思う。
「はい。 有坂くんもどうぞ」
「ありがとう。 お代はこれね」
「へへっ。 毎度ありー♪」
二人分の綿飴の代金を支払い、俺も綿飴を一口――。
「おっ? 確かに美味いな」
「うんうん♪ 美味しいもの食べるのが一番の幸せだよ~♪」
そう言って綿飴を食べる美冬――食べる速度が結構早く、あっという間に食べきった。
「えへへ。 綿飴なら直ぐに食べちゃえるよ♪」
「そうか? 俺のも食べるか?」
「……いいの?」
「遠慮するな。 双子なんだし、食べろ食べろ」
そう言って差し出すと、美冬は笑顔のままぱくりと綿飴を食べ始めた。
「えへへ。 ごちそうさま♪」
「はやっ!? ……さて、次は何を食べるか……」
「ふふっ。 なら次はたこ焼きだねー♪」
そう言ってたこ焼きの屋台を指差す美冬――と、そこに居たのは。
「あらぁ? ヒルトと美冬ちゃんじゃない~。 今は休み時間?」
「お母さん!?」
たこ焼き屋台の前でたこ焼きを購入していた母さんを発見。
……てか、教師って色々やってないといけなかったような?
「うふふ。 今は休憩中よぉ~。 折角だし、たこ焼き食べたいなぁって思っちゃったの」
そう言ってつまようじでたこ焼きを刺してパクパクと食べる母さん――。
「……てか母さん食べてるの見たら腹減るな。 すみませーん、たこ焼き十六個入り一つと……美冬は?」
「あ、私は十二個入りで」
「はいはーい。 今から焼くから待っててね~」
そう言ってたこ焼きを焼く準備を始める女子生徒。
手付きが慣れてるのか、結構様になっていた。
「うふふ。 じゃあ出来上がるまでお母さんのたこ焼き、一つずつあげるわぁ~」
「え!? いいの!? えへへ、お母さん大好きっ♪」
「あらあらぁ? うふふ、はい美冬ちゃん。 あーん♪」
「あーん……パクッ」
端から見ると、本当に仲の良い姉妹に見えるが、れっきとした親子だ。
……本当に、母さんが若く見えすぎるのが気になる。
「うふふ。 はいヒルト、あーん♪」
「いやいやいや、食べれるからいいって!」
口元にたこ焼きを運んでくる母さん。
流石に恥ずかしく、断ると母さんはしょんぼりとした表情になる。
「……だあぁっ、わかったから母さんそんな顔するなよ! どうも苦手だよ、その顔……」
「うふふ♪ お母さんの勝ちねぇ♪ じゃあ、口を開けてねぇ~」
「……いいなぁ、お母さん……」
隣の美冬からそんな声が聞こえる――とりあえず、口を開くと再度たこ焼きを口元へと運ばれ、そのまま一口で口に入れた。
「モグモグ……。 ん、美味いな」
「うふふ♪ なら良かったわぁ♪」
満足そうに微笑むと、再度母さんはまたたこ焼きを食べ始めた。
「はい、十二個入りおまちどおさま!」
「あ、私の分だ♪ ありがとう♪」
代金を支払い、早速出来立てのたこ焼きを美冬が食べると――。
「んんッ♪ えへへ……やっぱりたこ焼きのたこは大きくないとね♪」
母さんと同じく満足そうに一つ目のたこ焼きを食べ終え、二つ目につまようじを刺すと俺を見ながら――。
「お兄ちゃん、美冬も食べさせてあげるよ♪」
「ぅおいッ! お前もかよ……」
「いいじゃんいいじゃん! それとも、お母さんだけなの?」
ぷくぅっと頬を膨らませる美冬――母さんはその様子を見て口元を手で覆いながら笑みを溢していた。
「……わかったからそんな顔するなよ。 ……正直、食べるのも食べさせるのも恥ずかしいんだからな……」
「えへへ。 家族だからいいじゃん♪ はい、口開けて、お兄ちゃん♪」
突き刺したたこ焼きを口元へと運ぶ美冬。
焼きたてのたこ焼きの上で軽く鰹節が舞っていて、美味しそうな香りが鼻孔を擽る。
「……あむっ」
いつまでも見ていたら美冬が不機嫌になるため、これも一口で口に入れ、咀嚼……。
「……うん、美味いな。 たこ大きいし、天かす入れてサクサク感出してるし」
「だよね♪ パクッ、モグモグ……」
幸せそうな笑顔で食べ続ける美冬――そして、いよいよ俺の分のたこ焼きが出来上がった。
「はい、十六個入りおまちどおさま!」
「ありがとう、はい、代金」
「毎度ありー! また来てね有坂くん、先生も!」
「えぇ♪ またこっそり脱け出して来るわねぇ♪」
……それはそれでまずい気がするのだが……。
まあいいか、教師もたまには羽目を外さないとやってられないだろうし、母さんも少しはストレス発散になるだろう。
とりあえず屋台から離れ、簡易ベンチに座って俺達はたこ焼きを食べてると――。
「そういえば……一度貴方達を見に行きたかったけど、なかなか休めなかったのよねぇ~。 ヒルト、美冬ちゃん、二人とも似合ってるわよぉ♪」
「ありがとうお母さん♪ ……ちょっとコスプレな気もしなくないけどね?」
「同じく。 ……てかだて眼鏡まで掛けたら誰ってならないか、俺?」
「あら? 凄く似合ってるわよぉ? ヒルトの事が好きな子は皆惚れ直したかも? 違う一面を見せることも大事よぉ♪」
……俺にはよくわからないが……。
……まあ、皆に好かれて嫌な気分ではないが。
たこ焼きを一気に食べ終え、指定されたゴミ箱へと捨てると時間を確認する。
「……もう十分たったのか、まだ食べ歩き出来てないんだが……」
「も、もう十分? うーん、やっぱり十分は短すぎるよぉ……」
「あらぁ? 十分って何かしらぁ?」
十分の意味が理解できない母さんは、首を傾げて訊いてきた。
「んと、休み時間が約一時間あるんだけど、大体一人十分程度で俺と回ることになってて、美冬が四人目なんだよ」
「そうなんだぁ……。 美冬ちゃん、時間なら仕方ないわよぉ。 また今度、ヒルトとデートしなさいな♪ お母さん、キスぐらいまでなら何にも思わないからねぇ~」
「!? ゴホッゴホッ! ……母さん、いきなり何言ってるんだよ!」
「…………」
突然の言葉に思わずむせかえり、美冬の方は軽く俯いてしまった。
「うふふ♪」
そんな俺達の様子を茶目っ気たっぷりな笑顔で見ながら母さんはたこ焼きを食べる。
「と、とにかく。 ……俺はもう行くからな?」
「えぇ。 じゃあヒルト、また後でねぇ~」
「……あっ、お兄ちゃん、また……ね?」
美冬の顔が赤いのが気になったものの、流石に未来を待たせるわけにはいかず、俺は手を振るとその場を後にした――。
「お、お母さん! あんなこといきなり言ったらお兄ちゃんびっくりしちゃうでしょ!?」
「あら? 美冬ちゃんはヒルトとキスしたくないのかしらぁ?」
「ふぇっ!? き、兄妹なのに出来るわけないじゃん!」
若干狼狽する美冬を、笑顔で見つめる真理亜は言葉を続けて――。
「うふふ。 ……確かに兄妹だけど、キスまでなら良いんじゃないかしらぁ? 流石にそれ以上は、お母さんも賛成は出来ないけどねぇ~」
「うぅ……。 ……お母さんのバカ……」
「うふふ♪」
娘にバカと呼ばれても、絶やさぬ笑顔のまま優しく髪を撫でる真理亜。
行き交う人波を眺めつつ、残ったたこ焼きを美冬は顔を赤くしながら食べていった……。
後書き
一応創作物ですからねぇ~
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