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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第309話】

「……どうかな、ヒルト?」


 燕尾服をびしっと着こなす成樹。

 ……正直、これだけ燕尾服を着こなすのだから、タキシードとか着ても似合うんだろうなと思う。


「あぁ、似合ってるぞ?」

「ありがとう。 ……でも、大丈夫かな? 部外者の僕が手伝って――」

「大丈夫大丈夫」


 仮に責任問題になったら、俺が反省文を提出すればいいし――それよりも、案外先生方も納得するかもだし。


「……なら良いんだけどね?」

「あぁ。 とりあえず成樹、かなり忙しくなるかもだが任せたぞ? 簡単なレクチャーしか出来なかったが、大丈夫か?」

「ん……。 いつもの接客の延長線だし、大丈夫だよ」

「OK、んじゃブローチ着けて……これでよし、後は軽く調理班の人に挨拶後、接客班の子達は殆ど知ってると思う――が、やっぱり挨拶は大事だし、一応しとこう」

「了解」


 簡易更衣室を出、そのまま調理班の方へと向かう――。

 成樹の姿を見たお客(女子生徒)が、小さく黄色い声をあげるのが聞こえる。


「忙しい所ごめん。 臨時助っ人の笹川成樹を紹介するよ。 俺の親友だ」


 そう声をかけると、調理していた手を止めて一同が俺を見る――。


「有坂くんの親友? ……何か期待できないなぁ」

「有坂くんの友達? ……何処にいるの?」

「おー? ヒルトー、どこだー?」

「ん? ……成樹、入っていいぞ?」

「う、うん」


 俺の親友だからか、あまり興味無い子が結構居るも、やはり多少興味がある子はワクワクした感じで待っていた――そして。


「は、初めまして。 今日一日臨時助っ人します、笹川成樹です。 皆さま、よろしくお願いします」

「「「…………」」」

「おー? ヒルトの親友ー? イケメンだー」


 玲がマイペースにそう言う中、信じられないといった表情の調理班一同。

 ……多分、俺の親友って事で色々低めに見ていたのだろうが――。


「キャアッ!? な、何で有坂くんにイケメンの友達が居るの!?」

「こ、これは想定外ね……。 ……うん、正直……有坂くんの友達だから、期待してなかったけどこれは……」

「あ、あの。 こ、これ、私の電話番号――」

「あーッ!? 抜け駆けはダメよーッ!!」


 ……何というか、予想通りの反応過ぎる。


「……とりあえず、臨時助っ人だから優しくな? それと、お客様が待ってるから早く調理に――」

「わ、わかってるわよ! ――じゃ、じゃなくて、わかってます。 皆、調理に戻りましょう」

「そ、そうだね。 ……笹川くん、後で色々聞かせてね?」

「だーかーらーッ! 抜け駆け禁止だってば!!」

「いいじゃんいいじゃん! ……はぁ、こんな事なら、もっと有坂くんと仲良くなっとけばよかった……」


 ……いや、仲良くなったからって特別良いことはないんだけどな。


「んじゃ成樹、次は接客班ね」

「了解。 ……皆、改めて今日はよろしくね?」

「「「はーい♪」」」


 ……この態度の差、凄まじいな――感心するよ、正直。

 呆れつつもその場を後にすると、ちょうど接客班が上手いこと全員揃っていた――なんというご都合主義。

 ……ではなく、調理班が成樹を見て騒ぎ、手が止まった影響だろう。

 俺と成樹の姿を見て、ハッとする表情になる一同――。


「んと、知ってる人も居るが改めて。 ……今日一日、臨時助っ人してくれる笹川成樹。 俺の親友だ。 接客経験は豊富だから多分教える事はないと思うがな」

「改めて初めまして――笹川成樹です。 至らない所もあるかもしれませんが、よろしくお願いします」


 頭を下げて一礼すると、未来と美冬が――。


「成樹君久しぶり♪ 今日はよろしくね?」

「成樹君なら織斑君の代わりになれるよね、お兄ちゃん♪」


 そう言う二人に、篠ノ之が――。


「……一夏の代わりになるものか……」


 ぼそりとそう呟く――聞こえたのはどうやら俺だけだから良かったが、他に聞かれてたら文句出てたな。

 ……いや、俺も正直イラッとしたが楽しい学園祭をいちいち篠ノ之の反応一つで台無しにしても仕方ないので敢えて無視する。


「笹川さん、よろしくお願いしますわね♪」

「軽くヒルトから色々教わったと思うけど、何かあれば僕達もフォローするから」

「うむ。 嫁の親友だ、夫として全力で援護射撃を行おう」


 ……何かがおかしいラウラの発言だが、成樹は笑顔を絶やさず、頷く――。


「初めまして笹川君、私は鷹月です。 もし何か問題があればいつでも近くの私達、またはヒルト君に言ってね?」

「わかりました。 では短い時間ですがよろしくお願いします」


 改めて一礼すると同時に、調理が完了した料理が出てきた。


「んじゃ、調理班も動いた事だし戻るか」

「だね。 ……じゃあお兄ちゃん、これとこれ、四番に運んでね? 成樹くんは織斑君の代わりに三番テーブルでゲームを――内容はじゃんけんだから気負わなくていいからね?」

「うん。 ありがとう美冬ちゃん。 ……じゃあ、行ってくるね」


 そう言って直ぐ様三番テーブルへと向かう――一夏じゃないから文句が出るかもと少し思ったが杞憂に過ぎず、それどころか新しい執事がイケメンだからか反応が上々に思えた。

 いつまでも見ていても仕方ないので、オーダーを四番テーブルに持っていく。


「お嬢様、大変お待たせいたしました」

「う、ううん。 ……と、所でさ、彼って有坂くんの友達?」

「あ、はい。 織斑執事がただいま休憩中につき、臨時で助っ人に入ってもらいました」

「そ、そうなんだ? じ、じゃあ追加オーダーで、執事がご褒美セット、私と真由の分追加でお願い出来る?」

「畏まりました。 追加オーダー、執事がご褒美セットをお二つでございますね? 少々お待ちくださいませ」


 そんな感じで応対を続け、俺は主にオーダーを運ぶのがメインになっていく。

 成樹を見ると、既に執事が様になっていて、正直一夏よりも手早く済ませ、直ぐにまた別のテーブルに向かう辺りは流石だろう。

 ちゃんと席を離れる際に、頭を下げて謝罪の言葉を言うのも好印象らしく、更に成樹人気が加速していき、教室内は更に賑やかになっていくのだった……。 
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