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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第415話】

 四時間目、現在昼の十二時を過ぎた辺り。

 三時間目からISの実践授業があるのだが今日は専用機組とそれを持たない訓練機組と授業内容が別れていて、此方専用機組は模擬戦を行っているのだが――。


「くっ……絢爛舞踏!!」


 空中で戦闘を繰り広げる篠ノ之――機体が金色に染まり、シールドエネルギーを回復させていく。

 この模擬戦が始まってから実に【五回目の絢爛舞踏】だ――対戦相手はというと……。


「もぅ……また絢爛舞踏……? いい加減此方が疲れちゃうよ……。 ……次は回復させないよ! お兄ちゃんも見てるんだもんッ!!」


 美冬だ、村雲を身に纏い、手には紫微垣が握られて接近戦を繰り返す。

 ちなみにだが、三時間目からずっと続く模擬戦に現在篠ノ之が連勝中――最初の相手は一夏で、これはいつも通り一夏の零落白夜の無駄遣いで十分も持たずに終了、因みに絢爛舞踏は一回だけ発動させた。

 次の相手がセシリア――フレキシブルとオールレンジ攻撃を多用し、【計四回、絢爛舞踏】を発動させてエネルギー切れで敗北。

 課題の接近戦で多少被弾があったが、それでも四回は倒した結果だ。

 次がシャル――距離を保ち、一定の距離から退き撃ちして【計七回、絢爛舞踏】を発動させたが此方もエネルギー切れで敗北――退き撃ちは卑怯だと言われてもシャルは気にすることなくそのスタイルを貫き続けた辺りは凄いと思う。

 そして三人目は鈴音、彼女は五回絢爛舞踏を篠ノ之に発動させた。

 やられたのは必然的に接近戦主体になる上に、展開装甲が攻撃モードで起動して粒子の刃の攻撃に晒されたからだろう……此方は篠ノ之の力押しでの勝利。

 そして三時間目最後の相手がラウラ――顔を見ると、自然と夜中の事を思い出すため、色々な意味でまずいのだが。

 それはさておき、ラウラに至っては【計九回絢爛舞踏】を発動させた。

 AICで機体を拘束後、プラズマ手刀での連続斬りからのワイヤーブレードでの地面叩きつけというコンボだが、それも卑怯だ卑怯だと言われ、それに怪訝な表情を浮かべたラウラはAICをそこから一切使わずに何度も絢爛舞踏を使わせたが力尽きて敗北――そして今に至る。

 三時間目だけで計二十六回やられてる計算になるのだが、篠ノ之はこれ全て自分の力だと言ってのけたのだからある意味感心する。

 午後のを合わせるとこれで三十一回目――ここまでくれば、勝利への執着が凄いというかなんというか――。

 ついでだが、負けて悔しがったのは現在一夏ただ一人だけであり、他は負けたことを気にしていない――というか、実質上何回も倒した結果になってる為、悔しいという感情は湧かないのだと思う。


「もらったぞ、有坂!」


 縦に振るう空裂を半身ずらして避け、横に凪ぎ払う様に光弾を放ちつつ、振るう一閃を屈んで避ける美冬。

 光弾は空に浮かぶ雲に無数の穴を空け、大気によって減衰させられて消えていった――。

 一方、模擬戦の方はというと屈んだ美冬はそのまま巧みに全身のスラスターを使って胴回し回転斬りによる連撃を浴びせる。

 シールドバリアー無効果攻撃によって、何度も絶対防御を発動させる篠ノ之――慌てて瞬時加速で距離をとると、またも絢爛舞踏による回復を行った。

 一瞬意識を集中させないといけないらしく、安全な距離をとってから回復――遠距離攻撃が届く頃にはエネルギーは全快になっている上に追い掛けて接近戦で削るにしても紅椿の機動モードが上乗せされた瞬時加速に追い付く程の加速力がなければ意味がないという。

 ……正直、絢爛舞踏を発動させる事が出来る以上はここから模擬戦の勝敗は劇的に変わるだろう――篠ノ之自身、機体の性能だと思ってないのが痛いが……指摘自体しても聞く耳持たないため、教師による注意が効果的なのだが、生憎と今は教師二人は訓練機組の面倒を見てるため、それも叶わないだろう。

 一人の生徒だけを見るという訳にはいかないからな……特に授業に至っては。

 なら放課後と言いたいのだが、放課後は教師も会議やら港に入港した貨物船からの物資の管理やらその他色々あるため、難しいらしい。

 IS学園教師もかなり大変だなと、聞けば聞くほど思う――と、ここで模擬戦終了のブザーが鳴り響いた。

 上空を見上げると、被弾はしてないもののISのエネルギーが切れて美冬の敗北した姿が見える。


「フッ……これで私の五連勝だな。 紅椿と私の力が合わされば、この程度雑作もないということだ。 有坂、何か言いたい事でもあるか?」

「……負けた相手に何を期待して言ってほしいの? 言い訳でもしてほしいって訳?」

「フッ……別に言い訳には期待して等いないが、どの様に言い繕うのか気になってな」

「……特に無いよ、負けたから悔しいって感情も、貴女相手には湧かないもん」


 そう告げる美冬に、腕組みしながら勝ち誇った顔で篠ノ之は――。


「成る程。 まあ再戦ならいつでも受けてたつぞ、私は逃げも隠れもしない真の侍だからな」


 ――そう言うが、実はエネルギー切れそうになると逃げて回復に専念するのは突っ込む所なのだろうか?

 正直、一夏に何かしら篠ノ之に苦言を言ってほしいのだが、一夏は基本的に篠ノ之に対して甘いので期待はするだけ無駄なのだろう。

 俺達の言葉を聞かない以上は一夏が伝えるしか無いのだが……と、模擬戦が終わって二人は降りてくる――と、篠ノ之が告げる。


「さあ、次の相手は誰だ? 連戦だが私はまだまだ余裕だぞ」

「……じゃあ、私が相手になろうかな?」


 そう言ったのは未来だ――髪をかき揚げると、艶やかな黒髪が風に乗って舞い上がる。


「良いだろう。 この間の再戦も果たしたいしな……」


 言ってからまた空へと急上昇する篠ノ之――未来は、全身が光の粒子に包まれ、天照を身に纏う。


「……じゃあ皆、行ってくるね?」


 軽く手を振る未来に、全員応えるように手を振り返した――と、ここで美春が俺に耳打ちしてくる。


「……篠ノ之箒、今回何回単一仕様使うかな?」


 そう言ってから側を離れ、僅かに舌を出して茶目っ気たっぷりに微笑む美春。

 それを見たラウラを除く女子一同は――。


「……やはり美春さんもライバルの一人にカウントしなければいけませんわね……」

「……耳打ち何てしちゃってさ……バカヒルト」

「……僕だってこっそり耳打ちして話したいのに……」

「……美春にもお兄ちゃん渡さないもん……」


 そんな呟きが風に乗って聞こえる中、ラウラはというと――。


「ふむ……。 この程度でヤキモチとは……皆もっと大人にならないといけないようだな」


 威風堂々(?)大人の風格を見せるラウラに、シャルが――。


「……何か、ラウラ余裕だね?」

「当たり前だ、夫婦の絆というのはこの程度で破綻するものではないからな」


 そう言いながらチラリと俺を見るラウラ――そんなラウラを見たシャルも――。


「ぼ、僕だって絆なら負けてないもん」

「む? ……成る程。 ならばシャルロットもこのぐらいでヤキモチは妬かないのだな」

「も、勿論だよ」


 そんな二人のやり取りに、俺はどうすればいいか分からず額を拭いながら空を眺める。

 模擬戦は既に始まっていて、早速篠ノ之は一回目の絢爛舞踏を発動していた――。


「ふっ! この程度で紅椿はやられぬ!!」


 雨月、空裂の二刀流から放たれるエネルギー粒子、上昇しながらそれらを避けていくと同時に左腕部に備わった勾玉が飛び出し、高速回転すると共にエネルギー粒子の刃が形成され、それが篠ノ之の紅椿に大きくダメージを与える。

 巧みに左腕を振るい、切り刻む粒子の刃――。


「クゥッ……! なすがままだと思うな、飯山ッ!!」


 流石に切り刻まれるだけの状態ではなく、切り払う様にチャクラムからの攻撃を受け流す――が、大きな隙が出来たその瞬間、フルオートのショットガンを構えて瞬時加速で迫ると同時に弾幕を張る。

 篠ノ之の下をとっていたため、外れた散弾は学園外の海に落ちるだろう――この時間帯の遊覧船にも被害は受けないはずだ、確かあまり学園のある島には近づけないはずだし。


「ッ……ま、まずい……ッ!」


 無理矢理散弾の弾幕から抜け出ると、各部展開装甲から粒子エネルギーが放出――爆発的な加速と共に未来から距離を離した篠ノ之は直ぐ様絢爛舞踏を発動させた。

 単調だが、展開装甲起動時の機動力と加速力は、現在どの機体よりも圧倒的に上回っているからこそ出来る戦法だろう。

 だが未来も、追撃の瞬時加速で迫るのだがもう少しという所でエネルギーの全回復を許してしまった。


「絢爛舞踏が有る限り、私は倒れないッ!」

「……ぅーん、やっぱり倒せないのかな……」


 篠ノ之の口上を他所に一人ごちる未来は、九式・禍乃白矛に命令を送ると全基一斉に篠ノ之へと強襲――全方位からの打突攻撃を行う。

 未来もその合間を狙い、アサルトライフルによる三点バースト射撃――また確実にエネルギーを削る。


「ッ……この程度の姑息な攻撃にやられる私では無いッ!」


 周囲全方位に対して空裂の帯状の粒子攻撃を行うも、禍乃白矛に備わったエネルギーシールドがそれを防ぐ――だが、流れ弾はグラウンドに着弾、激しく地面が爆ぜると石礫が全員に襲いかかる。

 ――が、ラウラの部分展開した腕部からAICが発動、一夏を除く全員が石礫に当たらずにすんだ。


「いててッ! ら、ラウラ! 何で俺の方にまでAIC拡げねぇんだよッ!」

「貴様が離れた位置に居るのが悪い。 礫に当たりたく無いのであれば皆の後ろにいればいいだけのことだ」

「そんなカッコ悪い事出来るかよ。 男はどんな時だって逃げないものさ」


 いつも通りそう言う一夏だが、皆の後ろに居たくないなら直ぐに白式を展開すれば良かった気がする。

 そうこうしている間に、篠ノ之はいつの間にか五回目の絢爛舞踏を発動させていた。

 ――前二回がかなり早い回復だったが――因みに、この石礫の最中にそれだけ未来の猛攻があったという訳だ。

 その後も未来は順調――と言えば良いのかわからないが、六回、七回、八回と篠ノ之に絢爛舞踏を発動させる。

 だが流石に未来も消耗してるらしく、既にショットガンとアサルトライフルの弾は撃ち尽くしていて、勾玉型チャクラムの使用も無くなり、九式・禍乃白矛も周囲に展開したまま待機させていた。

 エネルギー枯渇が近いのだろう――。


「飯山ッ! 今度こそ私は勝つッ! 応えろ、紅椿ッ!」


 言ってから九回目の絢爛舞踏――瞬時加速で接近と同時に何度も多角的に攻める篠ノ之、それを捌く未来だが絢爛舞踏中に攻撃を行っても結局エネルギーを削る事は出来ない為、防戦一方になる。

 そして――模擬戦終了のブザーが鳴る。

 天照のエネルギーが底を尽き、金色に輝いていた紅椿はいつもの赤い装甲に戻っていく。


「フッ……これが紅椿と私の真の実力だ。 飯山、何か言い訳でもあるか?」

「……篠ノ之さんって性格悪いよ? 負けた私に何を言ってほしいの? 参りましたって言ってほしいわけ?」


 そんな未来の指摘だが、篠ノ之は【性格悪いよ】の部分に――。


「わ、私の何処が性格悪いというのだ!! ……ふんッ、もういい……とにかく私の勝ちだ、悔しいのであれば腕を磨くのだな、はははははっ」

「……そういう所が性格悪いと思うけど……もういいや、いくら言っても聞く耳持たないだろうし……」


 半場諦めに近い表情の未来を他所に、全勝して気分が良いのか嬉々として一夏に報告をする篠ノ之――とりあえず四時間目の授業はこれで終わりを告げた。

 ――俺と美春は戦っていないが、まあ別に無理して戦いたいと思わないし、俺自身昨日の襲撃で上手く模擬戦を行えるかどうかの不安も残っていたから。

 その後、昼食も摂り終え、五時間目六時間目の授業が開始したのだがそこでは模擬戦は無く、授業内容がISを用いた特殊動作に重点を置いた内容だった――。 
 

 
後書き
模擬戦かなりはしょった

というのも、全員分書く内容が似る気がした為、未来と美冬に重点置いてみた

とりあえず次は原作戻ります 
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