IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第323話】
前書き
楯無さん対オータム戦
空中で静止した弾丸が床へと落ちていく。
落ちる度に金属音が辺りに響き渡り、楯無さんは笑みを溢しながら言葉を口にした。
「んふふ。 いつもなら少し遊んであげるところだけど……残念ながら、貴女には本気でいかせてもらおうかしら?」
横一回転、くるりと舞いながら身体が光に包まれ、軽くお辞儀をするとその身にISを纏っていた。
「ヘッ! 何が本気でいかせてもらおうかしらだよ!? 死ね!」
残った装甲脚四基による突き――笑みを絶やさず、それをじっと見ている楯無さん。
「楯無さん!?」
一夏がそう呼ぶも、楯無さんは動かない――装甲脚が迫る、だが――。
「無駄よ? 無駄無駄。 ――アラクネの攻撃力じゃ、この水を突破する事なんて出来ないわよ」
クリスタルから展開されている水のヴェールが装甲脚四基の攻撃を受け止めていた。
「ちっ……! うぜぇ水だぜ!」
「あら? 水は人が生きる為には必要な物よ? ……そして、時に水は人をも殺す。 ……そう、たった一杯のコップの水でね♪」
指を鳴らす楯無さん――次の瞬間、オータムの顔一帯を水が覆った。
「ガバッ!? ゴボゴボゴボッ!!」
何が起きたのか理解が出来ず、苦しそうに悶えるオータム。
「うふふ、苦しいでしょ? おねーさん、こうやって苦しそうにする貴女の姿を見るの、好きよ?」
「ゴボゴボゴボッ……!」
「うふふ」
再度指を鳴らすと、オータムの顔一帯を覆っていた水が弾けとぶ。
何度も何度も咳き込み、オータムは膝から崩れ落ち、睨み付けてきた。
「ゲホッゲホッ! ……てめぇ……!?」
「あら? まだ反省が足りないようね?」
パチンッ!――再度指を鳴らすと、弾けとんだ水がまたもオータムの顔一帯を覆った。
「ガバッ!? ゲボゴボゴボ……」
さっきので体力を奪われたのか、先程よりもがき苦しむ様子が見られない。
「アハッ♪ おねーさん、ゾクゾクするわぁ……♪ 敵が苦しむ姿って、好きよ?」
また指を鳴らすと、さっきと同じ様に水は弾けとぶ。
「ゲホッ! ……ゲホッゲホッ……。 ……てめぇ! 正々堂々とISで勝負しろよ!」
「あら? 敵である私にそんなお願い? ……うふふ、テロリストが正々堂々だなんて、お笑いよね♪」
「……ッ!? クソがぁッ!?」
オータムが叫ぶ――それと同時に跳躍すると、カタール二本を両手で構え、振り下ろした。
「うふふ。 ……まあ良いでしょう。 ISでお相手してあげるわ♪」
笑みを溢す楯無さん――だが、それを見たオータムは空中で急加速し、二刀のカタールによる一撃を楯無さんに加えた。
「楯無さん!? ……てめぇ、よくも楯無さんを!」
「一夏、落ち着け。 ……この程度でやられるような人じゃないよ、あの人は」
オータムの一撃が楯無さんの両肩に食い込んでいる。
その様子に、一夏は楯無さんがやられたと思ったのだろう。
冷静に見れば肩から血が出てないのは明白何だが。
「……!? 手応えがないだと!?」
「アハッ♪ そう簡単におねーさんに一撃が届くと思ったのかしら?」
楽しそうに笑うと、カタールが食い込んだ肩の部分からその姿が崩壊し、水が辺り一面に四散した。
「チッ! 水で作った偽物かよ!」
「そうよ? ……まあ、この程度で驚いてもらってちゃあ話にならないけどね?」
「くっ……後ろだと!?」
振り向いたオータムの視線の先に、楯無さんが笑顔を絶やさずにその場に立っていた。
表情が強ばり、間合いを離そうとしたオータム――だが。
「甘い!」
「グッ……!?」
離脱する一瞬――ランスによる突きの一撃が深々と突き刺さり、ロッカーに叩きつけられていた。
「ガハッ!? ……は、速い……!?」
「うふふ、言ったでしょ? 本気を出すって……。 それに、手負いの貴女じゃ私を捉える事なんて出来ないだろうしね♪」
縦から斜め下にランスを振るう――風を凪ぎ払い、ふわりと俺や一夏、ムラクモの髪が舞った。
「グッ……なんなんだよ、てめぇはよぉ!」
「あら? 何なんだと聞かれれば、答えてあげるが世の情けって事で――そうです、私がこの学園の長。 更識楯無よ!」
そう言うや、くるりと横に回ってポーズを決める楯無さん――何だが、このまま歌でも歌いそうな気がした。
「てめぇ! ふざけてるのかよッ!? お前も殺してやらぁ!!」
「あら? せっかくここから歌でも歌おうかなって思ったのに――良いでしょう。 そんな悪役発言を言った以上、私が勝つのは必然ってね♪ ……まあ、手負いのアラクネじゃ、勝つなんて不可能だけど♪」
「うるせぇ!!」
頭に血が上ったのか、大振りの攻撃を繰り出すオータム。
その軌跡は既に見切られていて、楯無さんは涼しい表情のまま避けていく。
「クソッ! ガキが、調子づくなぁ!」
距離を離し、装甲脚を射撃モードに切り替え、射撃戦に移行したオータムだが。
「あら? 射撃がお好み? ……なら、これはいかがかしら?」
「……!?」
手を正面に翳すと、オータムの周囲に小さな水の塊が無数に出来ていた。
「うふふ。 更衣室内の空気は乾燥していないからね。 ちょっとした水蒸気なり何なりってあれば――ご覧の通り♪」
またも指を鳴らす――それが合図となり、周囲を包囲していた無数の小さな水の塊がオータムに襲い掛かる。
その攻撃は凄まじく、アラクネ自身、装甲の表面温度が上がっているためダメージを与え終えた水の塊が水蒸気に変わる――だが、また直ぐに水滴が形成され、それが襲い掛かる。
まるで、無限ループ地獄――。
ダメージは小さくも、流石にこれを受け続ければオータムのアラクネはエネルギーが枯渇するだろう。
「ッ……! うぜぇんだよ! 何なんだよ、てめぇは!?」
「あら? また自己紹介しなきゃいけないかしら? 面倒だからもう名乗らないわ、お馬鹿さん?」
「うるせぇ!」
無理矢理包囲網を突破したオータムは、二刀流による斬撃を交互に繰り出す。
苛立ちを隠せないオータムに対し、楯無さんは余裕を持ちつつ、その攻撃をスウェイしながら避け、隙あらば背後から水の弾丸で攻撃を行うという容赦の無い攻撃を行った。
「アハッ♪ ところで知ってるかしら? この学園の生徒会長というのは、この学園において最強の称号だということを」
「知るかぁ! 殺す! ぜってぇ殺す!!」
またも距離を離すオータム――水の弾丸に当たることすら気にせず、カタールを投擲――だが。
「甘い甘い♪」
ランスの砲口を向け、二発三発と発砲――キンッキンッと音を立て、カタールが床に落ちる。
「あめぇのはてめぇだぁ!!」
「あら?」
一気に間合いをつめ、ランスを蹴りあげようとするオータムだが、その蹴りは空を斬るのみで、ランスは粒子となって四散していた――そして。
「あらあら、残念無念ってね♪」
「ガハッ!?」
直ぐ様粒子形成を終えたランスによる怒濤の突きにより、壁に叩きつけられたオータム。
「……うふふ、言ったでしょ? おねーさん、本気を出すってね♪」
「ちぃ……バカな……。 こいつといい有坂といい……化け物が……!」
「あら? か弱い乙女に対して何て言い種かしら?」
「……へへッ……」
オータムがちらりと横に顔を向ける。
つられてその視線の先を見ると、そこにはムラクモが居て――。
「へへッ!」
「あっ!?」
一気に跳躍し、ムラクモを人質にとるオータム。
「へへッ! 再度形勢逆転だな! 動けばこの女を殺すぜ。 大人しくてめぇらのISをよこしな!」
「…………」
ムラクモの首筋にカタールの刃を当てるオータム。
ムラクモは、目付き鋭く睨み付けていた。
「あら……これは困ったわねぇ……。 ……ところでヒルトくん、彼女、ヒルトくんの知り合い?」
「……そうですよ? ……でも、人質に取ったのはまずかったんじゃないのかな、おばさん?」
俺が再度そう言うや、目尻を吊り上げ、オータムは――。
「口の聞き方、気を付けろって言ってんだよ! クソガキがぁ!!」
オータムは叫び、カタールをムラクモの胸部へと突き刺そうとするその瞬間――。
「……展開!」
ムラクモの身体から光が放ち、それが収束するとその身には村雲・弐式【森羅】を纏ったムラクモの姿があった……。
後書き
ムラクモがΣ(゜∀゜ノ)ノ
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