IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第114話】
――レゾナンス二階女性用水着売り場――
さっきの悲鳴を聞き、店内には鈴音と合流した一夏と鈴音も入ってきた――そして現在、俺とシャルの状況はと言うと――。
「はあ、水着を買いにですか。でも、試着室に二人で入るのは感心しませんよ。教育的にもダメです」
そう、説教されているのだ。
そして、俺とシャルに説教をするのは我がクラスの副担任の山田先生。
咄嗟の事態に軽くパニックになって悲鳴をあげたのだが、今は落ち着いている。
「「す、すみません……」」
二人同時にハモりながら謝る俺とシャル。
……何だか最近よくシャルが謝ってるのは俺のせいだと思わずにはいられない――と。
「まあまあ、この子達も反省してますからこの辺りで許してあげてくださいな」
「はぁ……。所で…どなたでしょうか…?」
――突然母さんの横やりに曖昧な返事をし、思った疑問を素直に口にする山田先生。
そして、俺の隣に移動すると母さんが――。
「うふふ。先生方、挨拶が遅れて申し訳ありません。この子の母親の有坂真理亜です」
「え、えぇ!?有坂君のお母さんですか!?」
「ほぅ……貴女が有坂の。……お噂は予々聞いてます。私が有坂緋琉人の担任の織斑千冬、此方は副担任の山田真耶先生です」
「うふふ、ご丁寧にどうもありがとうございます」
そう折り目正しく挨拶をする母さんを見て、山田先生も織斑先生も同じように頭を下げた。
そして頭をあげるとそれを皮切りに一夏が話題を変えた。
「ところで山田先生と千冬ね――織斑先生はどうしてここに?」
――話題を逸らしたのには評価するが、水着売り場に来てるのに『どうしてここに』という内容は何でだろうと思ってしまう。
「私たちも水着を買いに来たんですよ。あ、それと今は職務中ではないですから、無理に先生って呼ばなくても大丈夫ですよ。有坂くんも、気軽に呼んでください」
そう小さくガッツポーズしながら言う山田先生だが、それは難しいかと思う。
山田先生は良いかもしれないが織斑先生は無理だろう、そもそも俺が『千冬』なり『千冬さん』なりと呼べば弟が前回の戦いよろしく、『あのやろうふざけやがって、ぶん殴ってやる!』というのが容易に予想が出来る。
後、やはり織斑先生はサマースーツを着こなしているのでそういうのもあって呼びにくい状況もあるが――。
それはそうと、さっきから柱の影からちらちらと流れるような金髪に縦ロールが見えるのが気になり、声をかけてみる。
「……なあセシリア、そんな所で何をしてるんだ?」
そういうや、ビクッと金髪が跳ね上がり、気まずそうに柱の影から顔を出すセシリア。
「そ、その、出るタイミングを計っていたのですわ」
「あんたねぇ、柱からその金髪が見えてたからバレバレだったわよ?」
――と言うのは鈴音だ。
その姿はラフで動きやすそうな服装で、彼女らしいと思わせる服装だ。
特にホットパンツが似合っていて、太ももが眩しい――。
一方のセシリアは、まさしくお嬢様という出で立ち、学園の制服に似たような感じの服装だ――女の子の服装に詳しくないからよくわからないが、とても似合ってる――と、母さんが。
「うふふ、ヒルト?あまり女の子をじろじろ見ちゃダメよ?」
「……わ、わかってるって、ただ二人とも、私服が似合ってるなって思っただけだよ」
そう言うと、左隣のシャルが少し表情が変わるが直ぐに元に戻った。
――そういや、親父が見えないな。
「母さん、親父はどこだ?」
「お父さん?何か教え子に挨拶するって言ってたわ――うん、外に居るあの子に」
言うや、指差す方向に居たのは親父とラウラだ――しかもラウラは敬礼している。
……何を話してるのかはわからないが久しぶりの再会だ、邪魔をするのは無粋というやつだろう。
――しかし、ラウラってあんな風に笑うことが出来るんだな……何だか、十代女子特有の笑顔――ってラウラは同い年だな、俺と。
――ラウラはいつも通りのIS学園の制服だ――まあ制服で出掛けても問題ないからいいのだがやはり私服というのも見てみたいと思うのが心情って訳で――と、織斑先生がため息混じりで呟く。
「さっさと買い物を済ませて退散するとしよう」
そう呟きながら手にしているのは水着だ、それもビキニ――色は白と赤のストライプ。
……うん、想像出来なかった。
何て事を思っていると山田先生が突然――。
「あ、あー。私ちょっと買い忘れがあったので行ってきます。えーと、場所がわからないので凰さんとオルコットさん、それにデュノアさんも着いてきてください、後有坂くんも」
言うや、手招きする山田先生――と、母さんが。
「山田先生、ヒルトは連れていかないでくださいな。久しぶりに親子水入らず――ってね♪」
そうウインクしながら言うと察した山田先生は頷き――。
「わかりました。では凰さん、オルコットさん、デュノアさんも行きましょう」
「ちょ、ちょっと!アタシは一夏と――」
「お、押さないでくださいな。山田先――」
「あ……ヒルト、また後でね?」
「あぁ、また後でな」
そう言い、俺は手を振ると一夏は――。
「……ヒルトの母親、俺初めて見たが若いんだな」
「ん?そりゃそうだ、まだ三十一だし――あたっ!?」
ぽかりと叩かれてしまった――母さんに。
「うふふ、お母さんの年をばらしちゃダメでしょ、ヒルト?――さて、水着を選びましょうかぁ。織斑君も、お姉さんの水着選んであげなさい」
「あ――は、はい」
そう返事をすると、一夏は織斑先生の元へと向かった。
それと同時に、親父も水着売り場に入って俺と母さんの元へとやって来る。
「ハッハッハッ、ラウラも成長したなぁ…何だか少し感慨深くなったぜ」
「ん?親父、ラウラは何処に行ったんだ?」
「あぁ、何かクラリッサに連絡するとか言ってたな――しかしクラリッサか……俺がやった漫画、まだ大事にしてるのかな」
そんな風に呟き、昔を思い出しているのかうんうんと頷いている。
「……てか親父、その漫画って確か美冬のやつじゃなかったか?何か美冬がおお泣きしてた気がするが――『パパ何か大嫌いッ!うわああぁぁん』――って、泣き止むまで大変だった記憶があるんだが」
「うぐっ!!……ふ、古傷を抉られた気持ちだぜ…。――仕方ねぇじゃねぇか、当時のクラリッサの誕生日にあげられるものがあれしかなかったんだし!」
……いや、だからって娘の少女漫画をプレゼントで渡すのはいかがなものかと――とは思ってもまあ過去の事だし、今更言っても仕方ないか。
何て思っていると母さんが選んだ水着を見せてきた。
「うふふ、二人ともお話し中悪いんだけどぉ……どっちが似合うかしら?」
そう言って見せてきた水着が片方は黒のシンプルなビキニで、もう片方はその……殆どが紐にしか見えない様な歩くけしからん水着というか……危ない水着というか……。
「……母さん、そっちの紐にしか見えない水着は流石に不味いだろ」
「むっ、ヒルト、母さんの紐水着を見たくないのか?俺は見たい!見たいぞ!!」
何故かテンションの上がった親父を呆れて見つつ、俺は――。
「……そんな水着を着たら、母さんまたナンパされるかもしれないぞ親父?」
そう言うやムンクの叫びよろしく、ショックを受けた親父が――。
「そ、それはダメだ!母さん、こっちのセパレートの水着にしなさい」
そう言い、手に取った真っ赤なセパレートタイプの水着を渡す。
「そぉねぇ……うん、じゃあこれ、一度試着しちゃおうかしらぁ――二人とも、待っててね?」
親父から渡された真っ赤なセパレートタイプの水着を持ち、試着室へと入っていった母さん――と、親父が突然。
「ヒルト、どうだ最近?」
「……?どういう意味だ親父?」
質問の意味がわからない俺は、聞き返すと親父が肩を組んで引き寄せられ、耳打ちで――。
「流石にそろそろお前にも彼女が出来ただろ?」
「……っ……居ないってば」
「な、なん……だと。そりゃいかん!ヒルト、青春をちゃんと謳歌しろよ、良い子居ないって事は無いだろ?」
……そりゃまあそうなんだが…。
「ほら、セシリアちゃんとかどうだ?彼女、お金持ちだから逆玉狙えるぞ?」
「……そんなつもりでセシリアと付き合うって事はないって、金があろうと無かろうとセシリアはセシリアだ」
事実、そんな内容で付き合うとか決めるつもりはない。
……そもそも金問題はシビアだ、だから俺は友達とか親しい人からお金を借りる気は全く無く、ずっと良い関係で居たい――恋愛とかとは関係無く。
「それもそうだな、金でセシリアちゃんに近づいたのだったら俺が勘当するしな、ワッハッハッ――ならシャルちゃんは?――てか母さんから聞いた時は吃驚しすぎて目玉が飛び出そうだったぜ、男の子だと思ってたからな!」
「シャルか……嫌いじゃないがまだ出会って一ヶ月ほどだからな…何とも言えないが……セシリア共々意識はしてるさ」
「おぉ!このモテ男が!ウリウリ――」
何て悪ふざけする親父――モテ男って古くないか?
てか、告白された訳じゃないからまだわからないんだよな…二人とも。
「――そういやさっきラウラから聞いたんだが、お前らキスしたんだってな」
「ぶはっ!?……ラウラ…余計な事を…」
「照れるなって!良いじゃねぇか、キスの一つや二つ。俺だって母さんとは何回もしてるんだし」
……いや、結婚してるんだから当たり前な気がするんだが。
「で、ラウラはどうだ?あいつ、案外尽くしてくれるタイプっぽいぞ?」
「……まあ、そうかもしれないが……てか、そういう所は可愛いと思う」
そう言うとニヤニヤしながら親父は――。
「ハハッ、ラウラが聞いたら喜ぶだろうな!――じゃあ最後に、未来ちゃんはどうだ?」
「未来…?でもあいつ、他に好きな奴居るって聞いたんだが…」
「む?それは本人が言ってたのか?」
「いや、たまたま聞こえただけだが……まああいつが幸せになるなら――」
そんな風に呟くと、試着室のドアが開く――。
「じゃーん。どうかしらぁ?」
そう言って着た水着を見せる母さん――とても俺や美冬を産んだようには見えないスタイルの良さだ。
「おぉぉ、母さん!スゴく良いぜ!」
「うふふ、じゃあこれに決めちゃおうかしら?――ヒルト、どうかな?」
「あぁ、悪くないよ?それなら問題ないさ、これが」
そう言うと、母さんが笑顔で頷き――。
「じゃあ、これにしようかしらぁ。ヒルト、あなた、ありがとねぇ」
そう言って試着室のドアを閉める母さん――。
何だか親父に色々聞かれて少し疲れたような――そんな気がする午前中の夏の日だった。
後書き
次はオリジナル書いてから臨海学校編いきます
村雲は書けたがまだ天照が途中という……
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