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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第257話】

 食事も進み、突如シャルがラウラのシュニッツェルを見ながら――。


「ラウラ、それ美味しい?」


 ラウラの顔を覗き込むように見るシャル。

 流れる様な金髪が太陽の光を浴びて更に輝きを増していた。


「ああ。 本国以外でここまで美味いシュニッツェルが食べられるとは思わなかった。 ……あむっ」


 切り分けたシュニッツェル――仔牛のカツレツを口に運び、それを食べるラウラは更に一切れ切り分けるとシャルの方に顔を向ける。


「食べるか、シャルロット? ……ヒルトも、後で等価交換だったな」

「わあ、いいの? ……って、先にヒルトと約束してるならヒルトに一切れだね」


 そう笑顔でシャルは言うと、肯定するようにラウラは頷き――。


「うむ。 ……どれ、私が食べさせてやろう」


 そう言って自身が使っていたフォークでカツレツを刺し、俺の口元に運ぶラウラ。


「い、いいって。 普通に食べれるから――」

「何、遠慮するな。 私たちは夫婦なのだ。 恥ずかしがる事はない」


 そう言って、カツレツを唇に押し当ててくるラウラは、さながら早く口を開けと無言の圧力を発していて――。


「は、恥ずかしいからいいって。 それに……」


 殺気に似た視線を複数感じて、冷や汗が出るのが――。


「ふっ。 我が嫁はこういう事には奥手だな……。 まあいいから遠慮せず口を開けろ」


 ……流石にこれ以上断る訳にもいかず、観念してフォークに刺さったカツレツを頬張り、咀嚼――。


「……どうだ? シュニッツェルの味は?」

「……う、美味いぞ? ……だが、この食べさせ方は勘弁してくれ……」


 そう吐く様に呟くと、ジト目で皆様が俺を見ながら――。


「ズルいですわ。 ……結局ヒルトさんは押しに弱いのですわね」


 ……ごもっともでございます、セシリア。


「あんたねぇ……。 周りの目も気にしなさいよッ!」


 目尻を吊り上げ、怒る鈴音だが――よくよく考えると何で鈴音に怒られるのかがわからん。


「もぅ……。 ヒルトってラウラに甘いよね? ……むぅっ」


 ジト目+頬を膨らませるシャル。

 何だか凄い顔になってる気がするが、気のせいという事にしておこう。


「……ヒルトってば」


 短く俺の名を呼び、ジト目の未来。

 ……うーん、好意を抱かれるのは悪くないが、こういうのは居心地悪く感じるな……。


「……ヒルトってモテモテだな。 なあ箒?」

「知らん。 私に聞くな。 興味すら無い」


 鯖の身を切り分け、食べる一夏に篠ノ之は知らん顔。

 ……モテてるのはお前だよ、俺は極一部だし――レベルの高い子ばかりだけど。


「……お兄ちゃんって押せ押せに弱いんだね? ……ふーん……」


 何でも無さそうな声で呟く美冬だが、何処か悪戯っぽく微笑むのは何かしら後でありそうな……。


「あ、あんまり見るなよ。 ……てかラウラも、今のでこういう事は最後な? 俺が恥ずいし、昼食は穏やかに食べたいから穏やかじゃない事は勘弁してくれ」

「……ふむ。 善処するよう心掛けよう。 ……ところで、炒飯を一口頂けるか?」


 そう指を指すラウラの先には、まだ手をつけてない炒飯がこんもりと盛られていた。


「あぁ。 レンゲで勝手に一口分食ってくれ」


 そう言い、豚骨ラーメンを食べながらラウラを見ると――。


「……ヒルトが食べさせてくれないのか?」

「む? ……さっき言ったの忘れたのか? こういう事は最後って言ったが?」


 そう言うとラウラは瞼を閉じながら口を開く。


「うむ。 善処した結果、本件は却下された。 故に嫁は私に食べさせなければならない」


 ……という謎の持論(?)で言い放つラウラの男前っぷりに唖然としていたら――。


「ラウラ、何なら俺が食べさせてやろうか? ほれ」


 そう言ったのが何と一夏で、レンゲを手に取り掬うとラウラの口元に運ぶ。

 そんな一夏の行動に、篠ノ之は眉を潜めて一夏を睨み、ラウラに至っては六月当初のラウラの冷たい眼差しに戻ったかの様に一夏を一瞥すると――。


「……貴様は馬鹿なのか? いくら教官の弟とはいえ、貴様に食べさせてもらうぐらいなら私は自決を選ぶ」

「……ひでぇ。 ……何で怒ってるんだよ……人がせっかく食べさせてやろうって言ってるのに……」


 不満そうな表情の一夏だが、普通はそうだぞ?

 てか死ねとかキモいとか言われないだけ有り難いと思えよな……、今の世の中だと女尊男卑だから普通にキモい言われるぞ。

 ……一夏には無縁の話かもだが。


「ラウラも落ち着けって……。 ――結局、これで最後って皆に言ったのに……はぁっ……」


 突き刺さる視線が痛く感じ、レンゲで一口分掬うとラウラは満足そうに頷いた。


「それでこそ我が嫁だ」

「それはどうも。 ……はぁっ……突き刺さる視線が痛い」


 そう呟くと、各々が口を開き――。


「それは仕方がない事ですわよ? ヒルトさんがラウラさんにばかり贔屓してらっしゃいますから……。 ――わたくしだって、食べさせてほしいですわ……」


 若干涙目のセシリア。

 ……贔屓になるよな、やっぱり。


「はぁっ……。 ――アタシも素直に言えたらなぁ……」


 小声で呟く鈴音は、ラウラを羨ましそうに見ていた。

 ……一夏に食べさせてもらいたいのなら、言えばやってくれそうな気がするが。


「……たまには僕にも贔屓してほしいよ。 ……ヒルトのバカ……」


 再度ジト目+怒り顔のシャル。

 ……すみません。

 そう心の中で謝りつつ、レンゲをラウラの口元に運ぶと――。


「あ……むぅ……」


 頬を蒸気させ、一口食べるラウラの姿は誰から見ても可愛いと思えただろう。


「……私も食べさせてほしいなぁ……」


 未来の呟きに、少し心が動くものの今ここで未来に食べさせたら皆からビンタされても文句は言えないので自重する。


「……お兄ちゃんのバカ。 あむっ」


 ジト目の美冬は、自分が頼んだオムライスをがつがつ食べ始める。


「……何でヒルトが良くて俺はダメなんだ? なあ箒?」

「知らん。 私に聞くな馬鹿者」

「……お前も何怒ってるんだよ……」


 ――といった感じの相変わらずの一夏に、ラウラの心境を理解することは多分永遠に来ないんだろうなと思った……。 
 

 
後書き
原作で数行のシャルとラウラの会話から話が膨らむという罠

膨らませ過ぎかな 
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